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【現世】第23章4話 黄金 決意

店内のツリーが

ゆっくり色を変える


金の灯りが揺れる


蒼が

静かに混じる


白い光だけが

少し遅れて残った


その三色が重なった瞬間――


空気が変わる


ゴゴゴゴ……


店の奥が沈む


息が

少し吸いづらい


美沙稀が

思わず目を見開く


「……なに

これ……」


誰も

答えない


答えられない


一花だけが

静かに言った


「……始まります」


――ピシ


どこかで

何かがほどける音がした


「皆さんの記憶は

これから少しずつ戻ります」


全員の呼吸が止まる


その瞬間


ヴィオの右手が

ズキ……と疼いた


黄金が

骨の奥で脈打つ


茉莉奈の肌を

白い気配が撫でる


薬草の匂いが

喉の奥へ蘇る


翔の身体が

わずかに熱くなる


守るべき仲間の顔が

急にはっきりする


夕羅の唇へ

知らない魔法の言葉が浮かぶ


オーガは

骨の奥で熱が走った


「……全部

思い出すのか?」


一花が頷く


「はい」


少しだけ間を置いて

続ける


「……ただし

例外があります」


夕羅が

すぐ身を乗り出した


「例外?」


紫らしい反応だった


一花は

ゆっくり目を伏せる


「三つの光が世界を渡り」


静かに息を整える


「均衡が崩れた

あの日――」


空気が冷える


「星が滅びた

最後の一日だけは」


低く落とす


「誰の記憶にも残っていません」


……静寂


翔が

わずかに目を見開く


「……一日で

終わったのか」


その瞬間


ヴィオの黄金が

ドクン……と鳴った


一花は

静かに続ける


「話しましょう」


声が深くなる


「“あの一日”を」


店内の空気が

わずかに沈んだ


誰も

瞬きをしない


そして――


光が割れた


煙が満ちる


崩れたのは

地面じゃない


世界の境目だった


祈りも


叫びも


届く前に

何かへ弾かれる


空間は

静かに止まった


語りが終わる


誰も

すぐには動けない


沈黙だけが

店内へ沈んでいく


その時


ヴィオが

ふっと笑った


ごまかしじゃない


納得した者の笑みだった


「……なるほどな」


グラスを持ち上げる


「じゃあ

白の光ってやつは――」


黄金の瞳が細まる


「未来だな――」


「家族ってやつの

顔をしてた」


一瞬

空気が止まる


茉莉奈の顔が赤くなる


「ヴィ……ヴィオ……!」


耳まで赤い


夕羅が

肩を揺らした


「本当に真っ直ぐね」


笑う


「嫌いじゃないわ」


翔の肩が

小さく揺れる


守るべき場所の感覚


オーガの胸にも

赤い熱が灯る


ヴィオは

ゆっくり一花を見る


「……なら聞く」


黄金の圧が落ちる


「最後のピースは

どこにいる?」


一花は

静かに答えた


「銀は

すでに動いています」


その瞬間


空気が

一段深く沈んだ


カラン……


美沙稀の手が

わずかに止まる


ヴィオは立ち上がる


椅子が

わずかに鳴る


全員を見回した


黄金が

自然に中心へ立つ


「なら話は簡単だ」


金の灯りが揺れる


蒼が

その熱を包む


白だけが

静かに残っていた


魂の再集合は

もう止まらない


ヴィオは

テーブルに置かれた

白い羽を見たまま笑う


「待たせすぎたな――」


一拍


「迎えに行く」


誰も否定しなかった


翔が

静かに頷く


夕羅が笑う


オーガの赤も

もう迷っていない


美沙稀だけが

まだ何も知らないまま

場の熱へ呑まれていた


一花は

店の扉へ視線を向ける


(今度こそ――)


小さな祈り


(銀を見失わないでください)


外の雪は

もう止んでいた


欠けた光は

互いを呼び合うように


静かに

動き始めていた

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