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【前世】第2章3話 黄金 出会い

ヴィヴィが

回廊へ飛び込んだ瞬間――

空気が

ビリビリと裂けたッ!!


床に広がる影が

ドロ……

ドロロ……ッ

と

蠢いている


黒い粘影の魔性


壁の燭台の光を

吸い込むみたいに

輪郭が揺れていた


その前に

見知らぬ少女がいる


まだ幼い

細い肩が震えている


蒼い衣

胸元の蒼石


それだけが

闇の中で

祈るように光っていた


ヴィヴィの胸の黄金が

ざわりと揺れる


チリ……


胸元の蒼石が

ヴィヴィへ向けて

小さく光った


(……蒼の巫女……!?)


言葉にする前に

体が察した


その子は

ただの子どもじゃない


影が

怨嗟みたいに震える


グジュゥゥゥ……ッ!!


触手が

槍のように変形する


一直線に

少女へ突き出される――ッ!


ヴィヴィは跳んだ


「させるかッ!!」


黄金の拳が唸る


バギィィィィン!!


触手を砕く

黒い飛沫が散る


だが

終わらない


砕けた粘影の中から

新しい刃が生まれる


ズバシュゥゥ……ッ!!


反撃


刃が

右腕をかすめた


激痛

視界が

白く跳ねる


右腕の奥が

ギシ……

と軋んだ


ヴィヴィは

それを感じた


さっき

術式室で折れ残った

あの線だ


右腕の中に

何かが残っている


――それでも

止まらない


(……痛い……)


怖い

足が

止まりそうになる


右腕の奥が

悲鳴を上げている


でも

少女の震える背中が

見えた


小さな肩が

ひとりで

恐怖に耐えていた


胸の奥が

ぎゅっと痛む


それでも


(……助けなきゃ)


それだけだった


ヴィヴィは

少女を庇うように

前へ立つ


「平気だ!」


「オレがいる!」


蒼い瞳が揺れた


怯えの中に

かすかな安心が混ざる


そこへ

ジンが駆け込んだ


銀刃が閃く


ズバァァァァン!!


魔性を裂いた


ヒュゥゥ……ン……


黒が

霧のように薄れ

消滅した


回廊に

焼けた匂いだけが残る


ジンが

静かに口を開いた


「……途中で切れた」


ヴィヴィが振り向く


ジンは

静かに視線を落とす


消えかけた紋章を

思い出すように


細い線が

まだ残っていた


まるで

砕け損ねた未来みたいに


「死は逸れた」


静かな声


「でも――」


一拍


「砕けるはずだった痛みだけが

右腕に残った」


沈黙


ヴィヴィは

自分の右腕を見る


傷は浅い


だが

奥が

ズキ……

と疼いた


未来の欠片が

骨の中へ

埋まったみたいに


ズキ……

と疼く


少しだけ

眉をひそめる


それから


「大丈夫さ」


ぎゅっと拳を握る


痛みが走る

それでも

緩めない


「この腕くらい」


顔を上げる


視線の先には

助かった少女


「……あいつが助かった」


一拍


「それでいい」


ジンは

何も言えなかった


その答えが

あまりにも

ヴィヴィらしかった

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