【現世】第21章4話 五色 巡り
披露宴会場の喧騒が戻っても
五人の内側だけは
まだ
王城の空気を引きずっていた
それでも
誰一人
取り乱してはいない
理由はある
ヴィオは
胸の奥の黄金へ触れる
(……あの時と同じだ)
去年
事故で意識を失った夜
巨大な城の廊下
高い天井
黄金の紋章
奥から響いた声
言葉は交わさなかった
だが
確かに
呼ばれていた
あれは夢じゃない
記憶の断片だった
「……だからか」
ヴィオは
今さらみたいに理解する
戻ったんじゃない
思い出しただけだ
翔も同じだった
デッドボールで倒れ
病院のベッドへ横たわった夜
意識の奥で見た光景
ヴィヴィ
マリア
ジン
戦場の匂い
盾の重み
守るべき背中
(……あの夢)
ただの幻覚だと
思っていた
だが
今日の王城で確信した
「……俺は
あの頃から準備してたんだな」
翔の拳が
無意識に握られる
守るための形を
身体へ刻まれていた
オーガも
静かに目を閉じる
日本行きを決めた夜に見た夢
夕焼けの谷
乾いた風
届きかけて
届かなかった手
白い誰かの泣き声
生きてくれと願った声
守れなかった温度
(……妙にリアルだった)
あれは空想じゃない
魂が思い出そうとする
途中の記憶だった
だから今日――
ウサギ姿の女性を見た瞬間
胸が先に反応した
「……あの熱は
ここへ繋がってたんだな」
赤の決意は
すでに灯っていた
夕羅は
蒼の巫女の映像を思い出す
REC
祈る少女
揺れない手
あれは記録じゃない
干渉だった
そして今日
それは
映像の外へ出てきた
茉莉奈は
胸の奥の静けさを確かめる
魂は巡る
再会は起きる
その意味も
今ならわかる
五人は
もう一度だけ視線を交わす
誰も説明しない
誰も疑わない
なぜなら――
それぞれが
もう
見てきた側だからだ
披露宴の祝福は終わった
だが――
巡りは
すでに静かに
動き始めていた
夕羅は
白い羽へ
そっと触れた
指先へ残る
微かな温度
これは――
もう
誰の夢でも
なかった




