【前世】第2章1話 黄金 未来視
ドグォォォ……ッ!!!
車輪が光り
鉄の塊が迫ってくる
その前に立つのは――
自分だった
(……オレ……?)
背丈も
顔立ちも
全然違う
なのに
一目でわかる
あれは
オレだ
鉄の巨体が
突っ込む
右腕に
光が走る
砕け散る未来が
先に見えた
バチィィィン!!
世界が
白く弾ける
その最後に――
紅い風船が
ふわ……
と浮いた
ヴィヴィは飛び起きた
――夢
なのに
ただの夢じゃないと
体が知っている
――翌朝
まだ8歳のヴィヴィは
上着も整えないまま
城裏の訓練場へ走った
朝露を含んだ風が
頬を刺す
胸の鼓動だけが
急いでいる
そこには
同い年の幼馴染
銀の戦士
ジンがいた
朝の冷気の中でも
ジンは静かだった
先に気配に気づき
振り向く
「ジン!来い!」
息を切らしながら
ヴィヴィが詰め寄る
ジンの眉が
わずかに動いた
「……何があった」
ヴィヴィは
夢で見たものを
一気に話した
「鉄の塊が走ってきた!」
「右腕が砕けた!」
「紅い風船だけが浮いてた!」
言葉にするたび
胸の奥の黄金が
ざわついた
ジンは
遮らない
黙って
最後まで聞いた
その指先が
一瞬だけ止まる
視線が
ヴィヴィの胸元へ落ちる
「……夢じゃない」
ヴィヴィの動きが
ぴたりと止まった
ジンは
静かに視線を落とす
「未来だ」
断定だった
朝の空気が
ひとつ重くなる
「未来に
触れてる……」
ヴィヴィの喉が鳴る
自分の見たものが
現実だと認められた瞬間
怖さが
少しだけ形を持った
「……変えられるのか」
ジンは
すぐには答えなかった
まぶたが
わずかに伏せられる
「……変える」
静かな声
「だけど
何かは失う」
一拍
風だけが通る
それでも
ヴィヴィは笑った
強がりじゃない
腹を決めた時の
笑いだった
「上等だ」
「オレは
まだ終わらない」
ジンは
その顔を見て
小さく息を吐いた
「……わかった」
「ヴィヴィが選ぶなら
僕も行く」
石段の奥へ
ふたりは
迷わず
降りていった




