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【前世】第16章3話 翠 覚醒 

その時――


シューの身体が

翠に染まった


ブワァァ……ッ


オーラが変質する


圧縮して

収束する


ラヴィは

歯の隙間からそれを見る


(……なに)


輪郭が揺れる


骨格が

ズリ……と組み替わる


皮膚が鱗へ変わり

腕が翼へ変わる


背中が

空を掴む形へ変わっていく


変形していく


翠のワイバーン


ラヴィの目が開かれる


(……覚醒)


シューは

カイザーを見る


言葉はない


だが伝わる


――来い


カイザーは知っていた


小さい


だが

折れない


守られる側にいてもいい者が

誰よりも前へ出ている


だからこそ

背中を預けている


カイザーは迷わない


走る

跳ぶ


翠の背へ乗る


ガシッ!!


その一手だけで

二人は空へ放たれた


バサァァッ!!


翠の翼が

風を裂く


上昇して

追撃する


距離が縮まる


――空は冷たい


高度と

圧力で

肺が軋む


ラヴィは

口の中で呼吸を整える


動くな


焦るな


撃つのは最後


戦闘派の癖が

身体を凍らせる


ワイバーンが暴れる


顎の締まり方で分かる


次に首を振る方向が

読める


ガァァッ!!


首が振られる


視界が揺れる


その瞬間――


翠の影が並んだ


シューが追いつく


翠のワイバーンが

翼を一瞬だけたたむ


――加速


ドンッ……!!


空気が爆ぜた


(速い……)


心臓が

ドクン……と跳ねる


カイザーが立ち上がった


空中


無茶だ


落ちれば

死ぬ


だが――


必要ならやる


それだけだった


カイザーが飛ぶ


ガシッ!!


ラヴィの腕を掴む


引き剥がす


引きずり出す


ラヴィは――落ちた


カイザーも一緒に


ヒュゥゥゥ……


風と

圧と

死


その瞬間――


(……ああ)


思考が逸れる


カイザーの腕は強い


だが

乱暴じゃない


落ちているはずなのに

怖くなかった


胸の奥が熱い


呼吸が近い


鼓動が聞こえる


「……手を離すなッ」


低い


地鳴りのような声


(落ちるな)


押し潰されそうな風の中で

その熱だけが

鼓膜を突き破った


この強さが

今はただ

信じられた

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