【前世】第14章3話 紫 召喚
魔法陣の中央
ヴィヴィは
見様見真似の
呪文を刻む
右手のガントレットが
ジュワァ……
と焼けるように
反応する
(……来い)
その祈りとも
命令ともつかない衝動に
術式が応じる
空気が
バチ……!
と弾けた
ピシィ……
世界のどこかで
薄い膜が鳴る
次の瞬間――
夜空が
ズバァァァ……と裂けた
――ズオオオオオ……!!
龍神
確かに
呼んだ
呼んでしまった
だが――
「……くっ」
ヴィヴィの
喉が軋む
重い
デカすぎる
存在が
この場の理に
収まりきっていない
ヴィヴィの器が
その存在を
受け入れきっていない
龍神の輪郭が
歪む
空気が
押し潰される
――ゴゴゴ……
空間そのものが
悲鳴を上げる
「……ッ!!」
一拍
龍神が暴れた
叫びではない
意思でもない
ただ
存在そのものが
溢れた
――ギィィィィッ!!
空間が裂ける
押し広げられる
爪の力が空を
無理やり引き裂いた
傷が残る
閉じない
本来なら
すぐに塞がるはずの境界が
一瞬
耐えきれなかった
ヴィヴィの膝が崩れる
持っていかれる
体力が
魔力が
全部
ガントレットから
逆流する
奪われるのではない
吸われる
龍神が
こちらを見る
器を測る視線
だが――
ヴィヴィの器では
繋ぎ止められない
龍神の輪郭が
崩れ
光が
バラバラにほどける
霧散
消える
その瞬間――
ドクン……
心臓が
遅れる
呼吸が
噛み合わない
ピシィ……
ヴィヴィは
その場へ崩れ落ちた
意識が落ちる直前
見えたのは
閉じきらなかった
空の傷だった
細い
だが
確かに続いている




