【前世】第14章2話 紫 才能
修行は――
最初から
噛み合わなかった
魔力制御
呼吸
術式の拍
どれもが
ギチ……
ギチ……
と歯車を滑らせる
拳なら
身体が答えを出す
剣なら
軌道が教える
だが
魔法だけは違った
力を入れるほど
逃げる
掴もうとするほど
ほどける
紫光は
ピク……
と反応したかと思えば
フワァ……
と霧散する
ユジャが
容赦なく言う
「力任せは
やめなさい」
「力は
ただの暴走よ」
「……くっ」
ヴィヴィの歯が鳴る
ユジャは続ける
「暴れたいのね」
一拍
「だから掴めないのよ」
汗が額を伝う
石畳へ落ちる
ヴィヴィは
何度も試す
何度も失敗する
紫の光は
最後まで
形を持たない
ユジャは
怒らない
慰めもしない
ただ
黙って見ている
それが
かえって重かった
三十日目
紫光は
最後まで応えなかった
ユジャが
断定する
「――今日は終わり」
余地のない声
「才能の壁は
正直に残酷よ」
その言葉は
甘くない
だが
正しい
「それでも続けるなら」
視線が
ヴィヴィの胸の奥へ刺さる
「自分の弱さを
認めなさい」
喉が静かに鳴る
「全部抱え込むのは
王子の美徳じゃない」
ヴィヴィは
少しだけ息を置く
胸の奥で
黄金が静かに鳴った
ドクン……
「……そうだな」
その声は低い
「足りないなら
拾い集めるだけだ」
その言葉が落ちた瞬間
ユジャは
黙った
それから
口元をわずかに上げる
「その顔なら
少しは教える価値があるわ」
軽く肩を竦める
「契約延長ね」
ヴィヴィは
拳を
ギリ……と握る
「もう一つ
頼みがある」
ユジャの眉が
ピクリと動く
「召喚を
教えてくれ」
「却下」
即答だった
ヴィヴィは
引かない
「一度でいい」
一歩
踏み込む
「可能性を見たい」
ユジャの視線は
ヴィヴィではなく
その右手のガントレットへ
一瞬だけ落ちていた
継承された龍神の器
だが
今はまだ未完成
「今のあなたでは
器が足りない」
一拍
「制御も足りない」
さらに
静かに落とす
「世界への礼儀も
足りない」
容赦がない
ヴィヴィは
それでも逸らさない
ユジャは
フン……と鼻で笑った
「一度だけ」
「対価は倍」
ヴィヴィは即答する
「望むところだ」




