【前世】第12章3話 銀 変化
三人が
同時に踏み込む
ジャンが
初めて
一歩退く
「……何だ」
踏み込みが
半拍遅れる
力が削がれている
否――
縛られている
紫が
場の法則を書き換えていた
「今だ!!」
黄金が
――ドンッ!!
真正面から
打ち込まれる
今度は
押し返せない
銀が
――ギラァッ!!
走る
逃げ場を
先に断つ
翠が
――ズドンッ!!
防御ごと
叩き潰す
三つが
一直線に重なる
ズレはない
役割だけが
完璧に揃う
――ズドォォンッ!!!
爆ぜる衝撃
黒の鎧が
――バキィィィィンッ!!
砕け散る
闇が
空気へ溶ける
音もなく
裂けるように
消えていく
広場の空気が
わずかに軽くなる
だが
気配だけが
残った
シューが震える
(……消えている)
黒と銀の気配が
引き剥がされるように
薄れていく
ただ
消える
(……知っている)
あの空で感じた
異物
触れた瞬間に
消えた感覚
落ちたんじゃない
削られた
ワイバーンの事故
あの時と
同じだ
――ズ……
その時
ジンの内側へ
声が落ちた
『……聞こえているな』
思考が止まる
呼吸が
止まる
『お前は――』
長い沈黙
『私の
双子の兄だ』
世界が
止まる
鼓動だけが
遅れた
『いずれ』
一拍
『来る』
言葉だけが
内側へ沈む
消えない
刻まれるように
残る
気配だけが
完全に消えた
ジンは
動けない
呼吸だけが
遅れた
――勝ったはずだった
だが
誰ひとり
終わった顔をしていない
空気だけが
遅れて静まる
紫の魔女が
ふっと崩れる
「姉さん!!」
リンダが駆け寄る
支える
紫の袖が
石畳へ落ちる
魔女は
目を細めて笑った
「……美しく
勝てたかしら」
沈黙
誰も
すぐには答えない
ジンは
立ったまま
(私の記憶と
何がズレている……?)
答えだけが
見つからない
シューが
ニヤ……と笑う
「なのにまだ
終われる気がしねぇ」
迷いなく
ヴィヴィが答える
「……進むしかない」
マリアの蒼は
まだ小さく揺れていた
止まらない
それでも
立っている
鐘が鳴る
新王子任命式
その音が
現実を引き戻す
だが
誰も
もう朝の空を
昨日と同じ目では
見られなかった




