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【現世】第11章3話 銀 計算

仁は

自分の店へ入る


店内を一度

見渡す


照明


音


客の流れ


全部を一瞬で読み切り


そのまま

奥のVIPルームへ向かった


店員が

声を落として告げる


「……お待ちです」


仁は

返事をしない


ドアを開ける


女が腰かけていた


照明の下で足を組み


余裕のある笑み


「遅かったじゃない

……仁」


唇だけが笑う


「待たせるのは

好きじゃないのよ……」


トロ……と

耳の奥へ落ちる声


仁は

ほんの一瞬だけ

口元を緩めた


「街が騒がしい時は――」


コートを脱ぐ


「計算より先に

人間が動く」


グラスに手を伸ばしながら


「……やっかいだね」


女は

肩をすくめる


グラスの縁をなぞり


黙る


長い

呼吸の沈黙


それから


静かに口を開いた


「……あの子


自分で火をつけたんじゃない」


「立っただけ――」


ネオンが

瞬間

揺れる


ピシィ……


光の輪郭が

一瞬だけ滲む


女は

それを見ていないふりをする


「でもね」


指先が

グラスを回す


「純粋なのよ」


一拍


「だから


みんな勝手に

意味を足したくなる」


仁は

何も言わない


女が続ける


「……だから


あの子


――全部

受けるつもりよ」


鈴自身は

気づいていないかもしれない


だが


立った時点で


受けるしかない場所へ

もう入っている


仁は

わずかに目を細める


否定もしない


肯定もしない


ただ

計算している


仁は

崩れる光を見逃さない


純粋な光ほど


街は騒ぐ


それだけは

昔から変わらない


外では

ネオンが瞬いている


偽物の昼みたいな光


だが


その下に集まるのは

いつも本音だ


夜は

何事もなかった顔で

次の影を待っていた


光は知らない


だが


銀は

もう計算を終えていた

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