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【現世】第9章1話 桃色 視線
一月中旬
球団主催のイベント
予定通り
滞りなく進んだ
歓声の質だけが
予定と違った
照明
進行
拍手
すべてが
設計通りだった
ステージ中央に立つのは
ヴィオと翔
ふたりとも
与えられた役割を
淀みなく演じている
表情も
立ち位置も
寸分違わない
その背後――
札幌出身のユニットアイドル
wMAGICが並ぶ
年下の鈴は前列
年上の夕羅は
その半歩後ろに立つ
配置も
照明の角度も
事前の打ち合わせ通り
歓声の質が
わずかに変わった
ドッ……と重くなるわけでもない
スゥ……と静まるわけでもない
ただ
感情の色だけが
すり替わったざわめき
視線の中心に立つ鈴は
何もしていない
前に出るでもなく
引くでもなく
誰かに合図を送ることもない
――そこにいる
――動かない
最初から
動かないと決めていたような立ち方
視線だけが
一度だけヴィオへ触れる
すぐに離れる
本当なら
ただのファンで
いたかった
だが
その想いだけは
離れなかった
カメラが
その存在を逃さない
フラッシュ
バァン……
空間が
一瞬
白く裂ける
距離はある
触れてもいない
肩も
視線も
交わっていない
それでも
ふたりが並んだ瞬間だけが
写真として切り取られた
あとから見れば
理由を説明できない構図
だが
その場にいた誰もが
ああ
撮られるな
と
どこかで思っていた




