【前世】第8章2話 黄金 光の共鳴
数日後
エスターニャ・コモサス星の空が
――ビリ……ッ
と裂けた
空間の奥から
闇の層が覗く
ダーク星
裂け目の向こうは
黒ではなかった
もっと濁った
光を拒む色
そこから
濁流のように魔物が溢れ出す
城と
巫女地区へ
同時に押し寄せた
王城の上空では
空間が
ギ……と歪む
巫女地区の大地では
空気が
ズゥ……ンと沈み込む
ヴィヴィの喉が動く
巫女地区には
マリアがいる
その事実だけが
胸を強く打った
「ヴィヴィ!!」
アサド王の声が
雷みたいに空間を貫く
「行け!」
一拍
「蒼を守れ!」
迷いのない命令
その言葉が
まっすぐ胸へ落ちる
「それがお前の役目だ」
胸の奥で
何かが
ドクン……と強く鳴る
次の瞬間
ヴィヴィは
駆け出していた
視線は
もう前だけを見ている
アサド王も
ラブア王妃も
最初から知っていた
この来襲は
束になっても
勝てない
ここで抗う意味はない
未来を残す
それだけが
王に残された選択だった
――ヴィヴィは走った
思考より先に
身体が動く
息が焼ける
胸の黄金が
ギン……と鳴る
「ジン!
来い!
力を貸せ!!」
「シュー!!
前を頼む!!」
名を呼ぶたび
黄金が反応する
蒼紋の結界を越えた刹那
視界が切り替わる
巫女地区の空気が
肌に突き刺さる
湿度
匂い
場の重さ
全部が違う
三色が
一瞬で交錯した
前にシュー
右にジン
後方にマリア
黄金のヴィヴィは
仲間を見ていた
敵は
一体のダークトロール
岩と闇を
無理やり縫い合わせたような巨体
ズズ……と
大地を押し割って現れる
ただ大きいだけじゃない
圧が違う
止まらない
流れは
身体が知っている
「シュー!
突っ込むな!
合わせろ!」
ヴィヴィが
風を走らせる
シューが
前へひと歩出る
「ここは
オレが支える」
翠が立つ
ズン……!!
衝撃が
地を揺らす
シューの足が
わずかに滑る
地面が
ミシ……と割れた
「……ッ」
一歩
下がりかけた瞬間
「――シュー」
ヴィヴィの声が飛ぶ
迷いがない
その一言で
シューは踏みとどまる
ダークトロールの拳が
振り下ろされる
「……まだだ」
ヴィヴィは
前に出ない
視線だけが
銀へ走る
「ジン!
右だ!」
ジンの目が細まる
「……見えた」
一拍
「そこなら通る」
次の瞬間
銀の線が
空間を裂いた
ザシュ……ッ
巨体の右腕が
深く裂ける
マリアが
静かに目を閉じる
蒼紋が
幾重にも重なった
空気が
スゥ……と静まる
ダークトロールの動きが
わずかに止まる
その瞬間
「今だ!!」
シューが
地面を砕きながら踏み込む
翠の拳が
ドゴォンッ!!
巨体の胴へ
叩き込まれた
大地が揺れる
ジンが
銀の軌跡を重ねる
ザザシュッ!!
裂傷が
十字に走った
ダークトロールが
絶叫する
ヴィヴィの黄金が
ドクン……と脈打つ
三色が
ひとつに噛み合う
次の瞬間
巨体が
内側から
バキバキ……と崩れ始めた
黒い亀裂が走る
光に耐えきれないように
ダークトロールの身体が
――砕け散った
ドゴォォン……!!
爆風が
巫女地区を揺らす
土煙の中で
ヴィヴィは
静かに息を吐いた
黄金が
まだ胸の奥で
脈打っている
ドクン……
ひとりでは届かない
だが
繋がれば届く
その代わり
選べなかった場所が
必ず残る




