【前世】第8章1話 黄金 役割
ヴィヴィは
12歳になっていた
黄金を宿す王族に
祝福はない
与えられるのは
試練だけだ
幼さは
すでに許されない
回廊を先に行くのは
アサド王
その隣に並ぶのは
ラブア王妃
ふたりは
同時に足を止めた
回廊の空気が
ピタリ……と張る
ヴィヴィへ
ゆっくりと
振り返る
「……覚悟はできてるな」
アサド王の声は
低い
静かなのに
逃げ場がない
「背負うものを選べ」
その言葉に
飾りはない
ヴィヴィは
黙って見返す
アサド王が
続ける
「すべては
救えない」
視線が
わずかに沈む
「だが
忘れるな」
一拍
「背負って
前へ進め」
胸の奥へ
ズン……と沈み込む
ラブア王妃は
静かにヴィヴィを見る
その眼差しには
不安も悲しみもある
それでも
揺れない
「すべては守れないわ」
静かな声だった
「だから選ぶの」
一拍
「失うことを知っても……
人は前へ進むの」
ヴィヴィは
呼吸をひとつ置き
真っ直ぐに頷く
「……わかってる」
喉の奥が
少し熱い
それでも
逸らさない
「……逃げない」
胸の奥で
黄金が
ドクン……と静かに脈打った
――場所を移し
教育の間
床一面に刻まれた七つの光
スターライトの紋が
淡く
規則正しく脈打っている
石の床なのに
生きているみたいだった
アサド王は
中央の紋――黄金に
ゆっくり指を置く
「お前は
スターライトのひとりだ」
一拍
「力ではない」
アサド王は
黄金の紋様へ
指を置く
七つの紋様が
静かに脈打った
「役割だ」
黄金の光が
波紋のように広がる
「黄金は」
王の目が
ゆっくり細まる
「ひとりで輝くのではない」
静かな声だった
「すべてを
束ねる色だ」
その言葉は
命令ではなかった
もっと深く
胸の奥へ
刻み込まれるものだった
ヴィヴィの脳裏へ
色が浮かび上がった
蒼のマリア
銀のジン
翠のシュー
名前と色が
重なり合う
ただの仲間じゃない
ただの近しい存在でもない
役割として
並び立つ光
誰も
断言はしない
だが
否定の余地もなかった
ヴィヴィは
無意識に拳を握る
(……ひとりじゃねぇ)
その意味だけが
強く残った




