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【前世】第4章4話 翠 存在

治療室


薬品の匂い

沈んだ声


「再生不能」

「飛行不可」

「戦力外」


言葉が

冷たく落ちていく


一拍


「――処分対象です」


沈黙


その言葉だけが

やけに鮮明だった


視界の端で

誰かが動く


「待て」


――ヴィヴィの声


空気が止まる


「処分はしない」


断定だった


誰の許可も待たない


「オレが決める」


治療室の空気が張る


反論はある

規律もある


だが

黄金は退かない


ジンが

目を伏せたまま言う


「……守ったのか」


その声は

確認だった


シューは

答えない


答えられない


だが

胸の奥だけが

まだ熱かった


「……承知しました」


「配置から外します」


処分は消えた

規律が

初めて揺らぐ


――数日後


シューは

目を閉じる


腕の中に残る

温度

重さ

鼓動


まだ

消えていない


その奥に

黒と銀


あの空の歪みが

焼きついている


内側に

滲んでいる


消えない


匂いも

感触も


まだ

離れない


けれど――


(……守った)


違う

もっと深い


(……選んだ)

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