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【現世】第3章1話 蒼 再会

――ゴウッッ!!


(……戻ったのか……?)

(いや……落ち着け……)


耳の奥で

水の底から届くような

電子音が震える


……ピ……

……ピ……


<……生きて……ヴィヴィ……>


枕元のスマホが

かすかに光っていた


送信者の名前は

読み取れない


(……ヴィヴィ……)


喉の奥が

わずかに詰まる


(……なんでだ……)


聞いたことがない

はずなのに……


ドクン……


理由はわからない


身体のほうが

先に応えていた


――カタン


病室の扉が

小さく鳴った


白衣の女性が

控えめに顔を覗かせる


ここは病院か……


「……あの……

目を覚まされたのですね……?」


やわらかい声だった


押しつけない

静かな蒼


いつもの確認

いつもの動作


――のはずだった


視線が合う


その瞬間


――ドクン


同時だった


世界が

ズレる


音が消える


空気が

一拍

遅れる


茉莉奈の呼吸が

止まった


手にしていたカルテが

指先から滑る


――パサッ


紙が

床へ散った


胸の奥から

何かが押し上げてくる


痛い


だけど

それだけじゃない


知らないはずのものが

懐かしい


あり得ないはずの感情が

先に来る


茉莉奈の指先が

無意識に強く握られた


白くなる


戸惑う


本能が

そう告げている


なのに……

動けない


目が離れない


(……離れたら……)


その先だけが

言葉にならない


胸の奥が

静かに告げていた


――もう

見失いたくない


ピ――――ッ


モニター音が

わずかに跳ねる


ヴィオの心拍が

乱れていた


ドクン……

ドクン……


(……なんだよ……これ……)


頭はまだ

追いつかない


だが

身体が知っている


視線の重さ

空気の止まり方

胸の脈動


どこかで

知っている


(……違う)


(初めてじゃない)


否定した瞬間

余計に深く沈む


視線が外れない


捕まっている


――茉莉奈は

一歩だけ

引こうとして止まる


苦しい……


それでも

目を逸らせない


胸の奥が

静かに揺れる


理由は

わからない


それでも

離れてはいけない気がした


喉が震える

声が出ない


代わりに

胸の奥から

こぼれそうになる


――体が覚えている


必死に

押し込める


「……お目覚めになって

本当によかったです」


声が

少しだけ崩れた


整えきれない


しゃがみ込み

散らばった紙を拾おうとして

指先が止まる


名札が

かすかに揺れた


《蒼茉莉奈 看護実習生》


その名を見た瞬間

ヴィオの内側で

何かがほどける


ドクン……


(……なんだ……)


蒼茉莉奈(あおいまりな)(21)


その名前を認識した瞬間

胸を満たしていた重さが

少しだけ軽くなる


呼吸が戻る


(……安心……?)


意味がわからない……

だが

確かにそうだった


(……なんで……)


言葉にならない


だが

目だけが離せない


「蒼と申します……

……看護実習生です……」


いつも通りの挨拶

そのはずなのに


紙を拾う指先だけが

わずかに力んでいた


ヴィオは

その震えに

気づいてしまう


その瞬間

胸の奥を

何かが掠めた


(……守る)


言葉になる前に

熱だけが残る


(……違う)


否定する


だが

感覚だけは

消えなかった


視線を外したあとも

胸の奥だけが

妙に熱かった


茉莉奈もまた

同じだった

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