第7話:アパレル店員の「マネキン・サイコパス」
アパレルショップで働くショップ店員のレイナ(23)は、店内のマネキンの着せ替え(ディスプレイ変更)を行っていた。
彼女のミッションは、今週の売れ残り商品である「絶妙に合わせづらい紫色のスカジャン」を売り切ることだ。
「よし、インナーは白のTシャツにして、ボトムスはデニム……」
レイナがコーディネートを考えていると、ギャル風の後輩店員が声をかけてきた。
「レイナさん、その合わせ方だと、マネキンが『ちょっと地方のヤンキー』っぽくないすか?」
「えっ、嘘、本当だ……。じゃあ、綺麗めのスラックスを合わせて……」
「あー、今度は『裏社会のインテリ』になりましたね。インテリヤンキーです」
マネキンの着せ替えは、一歩間違えると謎のキャラクターを生み出してしまう。
試行錯誤の末、レイナはスカジャンの下にフリフリのブラウスとロングスカートを合わせるという、高度な「甘辛ミックスコーデ」を完成させた。テーマは『パリの街角を歩く、ちょっと尖った文学少女』だ。
「よし、これでいこう!」
マネキンを店頭に飾った直後、一人の男性客がやってきて、そのマネキンを凝視した。
(キタ……! 刺さった!)
レイナはプロの笑顔で歩み寄る。「そちら、今季トレンドのスカジャンでして、あえて綺麗めのアイテムと合わせるのがオススメなんです!」
男性客はしばらくマネキンを見つめた後、真顔で言った。
「あの……これ、うちの姉の私服にそっくりなんですけど……姉をモデルにしました?」
「えっ!? あ、いえ、違います! パリの文学少女です!」
「姉はプロレスラーです」
レイナの脳内コーディネートは、期せずして実在のプロレスラーの私服を完全再現していた。男性客は「姉へのお土産にします」とスカジャンを勝っていった。




