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第2話:コールセンターの「クレーム・インポッシブル」
大手ECサイトのコールセンターで働くベテランオペレーター、美濃部(34)の耳には、毎日様々な声が届く。
ヘッドセットを装着した彼女の前に、本日最大の強敵が現れた。
『もしもし! お宅で買った「絶対に起きられる目覚まし時計」だけどね! 今朝まったく起きられなかったじゃないの! どうしてくれるのよ!』
スピーカーが割れんばかりの大音声。美濃部は1秒で「プロの顔」に切り替える。
「さようでございますか。お客様の大切なお朝のお時間を損ねてしまい、誠に申し訳ございません」
美濃部はキーボードを叩きながら、購入履歴を確認した。
「恐れ入ります、お客様。こちらの時計は、大音量のベル、激しい振動、そして光が明滅する機能がございますが、どれも作動いたしませんでしたでしょうか?」
『あ? ああ、それね。うるさくて眩しいから、寝る前に電池抜いといたのよ!』
「……」
美濃部は天を仰いだ。電池を抜いた時計は、ただのモダンな置き物である。
「お客様、誠に恐れ入りますが……当製品は、電気の力を借りて奇跡を起こす仕組みとなっておりまして……」
怒鳴っていたはずの顧客が、急に静かになった。美濃部の、怒らせずに相手のIQを下げる丁寧な戦いは、今日も続く。




