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桃ちゃんと一緒 召喚され世界の壁となった俺は、搾り滓として転生す  作者: @aozora


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第35話 勇者誕生、何かいい物見た

「“今日ここに、我らの希望、リーデリア王国の光が誕生した。数多くの強者との戦いを制し、リーデリア王国の新たな勇者となった者、その名は!!”」


リーデリア王国王都リンデロン、歴史あるこの都市の象徴にしてリーデリア王国の中枢リーデリア王国王宮。その由緒正しき神聖なる場所で、勇者選定会に勝ち抜き見事勇者の称号を手にした英雄を称える祝賀パーティーが開催された。

参加者の顔ぶれは豪華そのもの、貴族社会、軍の上層部、経済界、芸能界と様々な分野から錚々たる人物たちがリーデリア王国に誕生した新たなる希望を称えるために参加していた。


「いや~、素晴らしい戦いだったよ。私は絶対に君が勇者に選ばれると思っていたんだが、本当に残念だったね。だが君がこれまでもこれからもリーデリア王国を支える重要な戦力であるという事は変わらない、これからも共にリーデリア王国のために力を合わせようじゃないか」

軍服に身を包んだ壮年の男性が、筋骨隆々の偉丈夫の二の腕をバンと叩きながら声を掛ける。


「ハッハッハッハッ、私も歳ですかな、若さと勢いに押し切られてしまいました。ですが私は悲観などしていませんよ、むしろ誇らしい。

私の全力を仲間との協力で打ち破る者が現れたという事は、少なくとも私が倒れた程度ではこのリーデリア王国は揺るがないという事。これまで冒険者業界の最前線で他者を牽引し続けてきましたが、これからは彼らがいる。ならば気兼ねなく死力を尽くす事が出来る。

な~に、面倒な対外との折衝は新たなるリーデリア王国の希望にお任せして、私はこれまで以上に思いっきり暴れることに専念しましょう。将軍もさっさと面倒事は若手に押し付けて現場復帰なさってはいかがですか? 近頃は魔物が活発化していますし、楽しい遊び場には困らないでしょう」

「クックックックッ、アッハッハッハッハッ、流石は“金剛無双のジーク”、やはり最後に頼りになるのは君のような男だよ。勇者様はリーデリア王国ばかりでなく様々な国に赴かなければならないだろうが、その間リーデリア王国を守るのは我々だ。これからもよろしく頼むよ?」


会話は進む、皆が自国の新たな象徴の誕生に心躍らせ目を輝かせていた。


「“ご静粛に願います。リーデリア王国国王ヘンドリック・マサキ陛下、ご入場”」

“““““ザッ”””””

会場から言葉が消え、人々は一斉に頭を垂れる。ある者は胸に拳を当て騎士の礼を、ある者はドレススカートの裾を掴みカーテシーを、ある者は姿勢を正し腰から上体を曲げて。この場に集まったあらゆる階級の者たちがそれぞれの作法でリーデリア王国の最上位者に対し敬意を示す。


「“皆の者、頭を上げよ。今宵は我がリーデリア王国の歴史に残る記念すべき祝賀会、皆も気を楽にして話を聞いて欲しい”」

マイクを通し伝えられるヘンドリック国王の言葉に顔を上げる人々、ヘンドリック国王はそんな人々の様子を満足げに眺めてから話を続ける。


「“皆も承知のように近年多くの国々で魔物が活性化し様々な魔物災害を引き起こしている。スタンピードの頻発、魔物由来の疫病、世界が再び神代に戻ってしまったのではないのかという言葉を囁く者たちがいることも事実だ。

これはなにも一部の国々ばかりではなく全世界的にみられる現象であり、我がリーデリア王国も決して例外ではない。

幸い我が国の軍隊は精強であり力ある冒険者たちの多くが命を懸け国民を守ってくれているお陰で他国ほどの被害を出さずに済んではいるが、決して手をこまねいていてよい状況ではなかった。

此度の勇者選定会はこの国に広がりつつある国民の不安を払拭し、人々を導く新たなる光の誕生を願うものであった。

我々の願いは叶えられた。多くの国民が見守る中、我々は新たなるリーデリア王国の光、新たなる勇者の誕生を目撃したのだ。

皆に紹介しよう、彼らこそが我らの希望、勇者レインと勇者パーティーの者たちである!!”」


“ガチャッ”

会場前方ヘンドリック国王が立つ舞台の右手、両開きの扉が大きく開かれ、凛とした表情の若者が舞台上へと上がっていく。若者の後ろからは彼のパーティーメンバーが続き、会場の人々から大きな拍手を以って迎え入れられる。

彼らはヘンドリック国王の脇まで進むと大きく礼をし、身体の向きを会場の人々へと向けるのであった。


「“彼らは此度の勇者選定会において激戦を制し見事我がリーデリア王国の希望となった者たち。彼ら勇者パーティーの健闘を称え、今一度盛大な拍手を”」

“パチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチ”


会場を包み込む割れんばかりの拍手、舞台の上に立つ勇者レインは思う、自分はついにここまで来たのだと。

レインが生まれた場所は山間の寂れた集落、村と言っても住民のほとんどが高齢者であり、子供のいる世帯はレインの家族と幼馴染たちの家族の三軒だけであった。そのような生活の中でレインは思った、いつか必ずこの国一番の冒険者になってみせると。


自分には才能がある、力がある、自分はこのような山奥で終わるような人間ではない。元冒険者の父、同じく冒険者で魔術師の母、村の大人たちに教えを受け着実に才能を開花させていく自身。

幼馴染のライオスは脳筋で馬鹿なところもあるが、まっすぐで扱い易い男であった。

同じく幼馴染のミリアは美しく心許せる女性であった。

レインは共に修行し切磋琢磨する中で、この二人と共に冒険者として大きく成長することを夢見るようになっていった。


旅立ちの儀で領都テルミンの街に行き、三人で冒険者登録をして冒険者活動を始めた。冒険者に必要な装備はあらかじめ両親が用意してくれたので、レインたちのパーティーは順調に実績を重ねすぐに一人前とされる銀級冒険者になる事が出来た。

そこで新たなるパーティーメンバーであるアマンダが加わりパーティー名を“自由の翼”として本格的に冒険者として各地に赴いて。

数々の功績を打ち立て白銀級冒険者と呼ばれるようになった時には、このままずっとこの四人でやっていくものと思っていた。


だが変化は必ず訪れる、アマンダの妊娠を機に冒険者を辞めより安定した職業である領兵になると言い出したライオス、アイツらしい選択だと思った。ライオスは脳筋だが粗暴な者ではない。名声や成功よりも家庭を選ぶ、冒険者をしていたのも一番適した職業が冒険者だったからというだけで、夢や目標があったから続けていた訳じゃない。

ライオスは一番欲していた家庭を手に入れた、レインはそんな幼馴染の選択を心から祝福した。


レインは最も信頼できる女性であるミリアと共に王都リンデロンに拠点を移し冒険者活動を再開、仲間を集め、実績を積み上げ、ついにリーデリア王国の冒険者の頂点である勇者に上り詰めたのであった。


「“只今ヘンドリック・マサキ国王陛下からご紹介いただきました白金級冒険者パーティー“自由の翼”のリーダーレインです。

まずはヘンドリック国王陛下並びに王宮関係者の皆様、この会場にお越しの皆々様に感謝申し上げます。私たち“自由の翼”がこれまで白金級冒険者パーティーとして活動し続けてこれたのも、この度の勇者選定会においてこのような栄光を掴む事が出来たのも全ては皆さまの応援と支えがあったればこそ。これまで本当にありがとうございました。

そして私を支え続けてくれたパーティーメンバーのミリア、エメラリア、リリー、“自由の翼”のメンバーとスタッフたち。今の俺があるのは全てみんなのお陰だ、本当にありがとう。

私は皆さんから頂いた“勇者”の名に恥じぬよう、これからもリーデリア王国の勇者として精一杯務めてまいります。

最後に私の事を産み育ててくれたマルコお父さん、リンダお母さんに心からの感謝を。俺の事を産んでくれてありがとう、俺の事を鍛えてくれてありがとう、剣と魔法を教えてくれて、一人前の冒険者になれるようにこの世界で強く生きていけるように力を与えてくれて本当にありがとう。

俺はマルコお父さんとリンダお母さんの名を汚さぬようこの力を正しきことに使い、リーデリア王国の勇者として生涯を捧げることを誓います!!”」


“パチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチ”

会場中に響く割れんばかりの拍手、勇者レインは大きく深々と礼をすると、勇者就任の挨拶とするのであった。


――――――――――――――――


レインがついに勇者に選ばれた。勇者選定会の激戦を勝ち抜いたレイン、でも決勝戦の相手“金色の斧”のジークは本当に強かった。

まさに紙一重、正直私たち“自由の翼”が勝利を掴む事が出来たのは、運が良かったからに過ぎないと今でも思う。

決勝戦が終わった後、救護班に支えられながら自分の足で闘技舞台を下がっていくジークが私を見て「強くなったな」と一言残していったのは、私の出生の秘密を知っていたという事なのだろうか。

全力で戦い敗れていったジーク、その大きな背中を私は生涯忘れる事がないだろう。


目の前ではレインが多くの人々に囲まれて笑顔を振りまいている。山間の寒村であったクルド村、その狭い世界で出会った運命の人。

レインとライオス、そして私の三人。ずっと一緒だと思っていた、共に戦い背中を預け、いつか世界を股に掛ける冒険者に。


「夢が叶った、そういう事なのかしら」

「そうですよね、勇者レイン、魔法使いミリア、剣士ライオス。“自由の翼”の主要メンバーの再結成は大きいですよね~。でもライオスお兄ちゃん、新婚さんな上に子供が生まれたばかりで単身赴任、せっかく領兵長って言う安定職に就いたのにかわいそうに」


「そうよね~、私もまさか王国側から勇者パーティーに派遣される人物がライオスになるとは思わなかったわ。でもあのバカが頼りになるのも事実なのよね、レインの独りよがりもライオスがうやむやにしてくれるしって、えっ!?」

私の独り言に合の手を入れる誰か、思わず声のした方を向けばよく知る小憎らしい顔が。


「アッ、バッ、(小声で)アンタ一体何やってるのよ!! 流石にここはまずいってもんじゃないわよ、見つかったらよくて投獄、下手すれば極刑よ!! 私だって庇えないわよ、直ぐに帰りなさい!!」

ノッペリーノのバカ!! 本当に何考えてるのよこの阿呆は、要人暗殺の容疑を掛けられたら否定のしようがないじゃない!!

クルド村の子供は私たち三人の他にもう一人、魔力も闘気もないのに周囲から妙に頼られるライオスの弟、ノッペリーノ。いつの間にかそこにいていつの間にか消えてしまう変な奴、今も誰にも気付かれずに王宮の祝賀会に顔を出して。


「あ、ご心配なく。ミリアお姉ちゃん、俺が勝手に祝賀パーティーに紛れ込んだって思ってません? いくらなんでも俺だってそんなことしませんよ?

ちゃんと許可を得てここにいますんで、許可証だって持ってますし」

そう言い上着のポケットから会場の出入りの際に提示するカードを取り出すノッペリーノ、よく見ればいつの間に手に入れたのか立派なスーツを着込んでるし。


「ん、ノッペリーノ、勝手にどこかに行かない、お父様が心配する。というか勇者パーティーのミリアさんに迷惑を掛けてはいけない」

「ローレシアお嬢様、何度も言いましたけど本当に俺はミリアお姉ちゃんの知り合いですから、その生暖かい視線はやめてくれません?」


「えっとノッペリーノ、アンタついに・・・。ごめんなさい、流石にこれは庇えないわ、まさかノッペリーノが未成年に手を出すだなんて。衛兵を呼んで「違うから~、俺、少女に手を出すなんてマネしないから~!! って言うかローレシアお嬢様に手を出したら物理的に首が飛ぶから、シャレにならないからおふざけはやめて?」・・・本当、みたいね」

あのいつも飄々としたノッペリーノが思いっきり顔を引き攣らせてるって、このローレシアって子は一体どこのお嬢様なのかしら?


「あぁ、ノッペリーノ君、ミリアさんには会えたようだね。白金級冒険者パーティー“自由の翼”のミリアさんだね、勇者パーティー就任おめでとう。ノッペリーノ君がミリアさんに祝福の言葉を贈りたいというのでね、特別に同行を許したのだよ。

それでは私は他に挨拶をしないといけない人がいるから失礼するよ、ローレシア、ノッペリーノ君の事をよろしく頼んだよ?」

「ん、お父様、確かに引き受けました」


そう言いその場を離れていく紳士、あのお方は確か。


「ノッペリーノ~~~~、なんでアンタがアレンジール公爵閣下と親しげにしてるのよ~~~~!!」

やっぱりノッペリーノは意味が分からない。

頭を掻きながら「いや~、何でですかね~」とへらへら答えるノッペリーノ。私がその胸ぐらを掴み上げ、ガクガク揺すったのは致し方のない事なのでした。


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