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スイッチ 〜前人未到の夢の道導〜  作者: つば


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3/13

約束

勝が銀と左でピッチングした時の球速は103kmだったみたいだ。


数日後。


久々のオフ。


両利き用のグローブを求めて、俺は店を回っていた。


スポーツ用品店を三軒。


大型店も回った。


だが——


店員「すみません、そういうのは取り扱いがなくて……」


どこも同じ返答だった。


嶋口 (そりゃそうか……)


普通はいらない。


右も左も投げるやつなんて、いない。


嶋口 (ここが最後か)


古びた個人店。


看板も少し色あせている。


それでも、なぜか足が止まった。


カラン


扉を開ける。


静かな店内。


革の匂いが、ふわっと広がった。


数十秒。


誰も出てこない。


嶋口 (留守か……?)


そう思った、その瞬間。


少女「あ!!キミは!」


嶋口「……え?」


奥から顔を出したのは、同い年くらいの少女だった。


少女「鷹浜中の2年の剛腕、嶋口 勝くんだよね!」


嶋口「……ああ、まあ」


少女は一気に距離を詰めてくる。


目が、やけにキラキラしていた。


少女「あ、私の名前は悪石 凛!」


少女「今はこの店のお留守番してるんだ!」


嶋口「留守番って……店員なのか?」


悪石は少し胸を張る。


悪石「一応、ここの娘!」


悪石「お父さん、仕入れ行っててさ」


嶋口「へぇ……」


店内を見渡す。


並んでいるグローブは、どれも使い込まれているような雰囲気だった。


新品なのに、馴染んでる感じ。


悪石「この前の決勝見たよ、惜しかったね」


嶋口「……まあな」


短く返す。


それ以上は言わない。


でも、あの一球は頭から離れない。



悪石「最後、まっすぐだったでしょ」


嶋口「……」


悪石「逃げなかったんだね」


嶋口「逃げる理由がなかっただけだ」


悪石は少しだけ笑った。


悪石「いいね、そういうの」


悪石「でも、だからこそ、次が必要なんだよ」


嶋口「次?」


悪石はカウンターに肘をつき、じっとこっちを見る。


悪石「同じ真っすぐでもさ」


悪石「右の真っすぐと左の真っすぐじゃ、全然違うでしょ?」


嶋口「……!」


悪石「見たんだよ」


悪石「試合のあと、キミが左で投げるの」


嶋口「……どこで」


悪石「学校の裏の壁」


悪石「全然入ってなかったけどね」


嶋口「うるせえな」


悪石はクスッと笑う。


悪石「でもさ」


悪石「あれ、ただの遊びじゃなかったでしょ?」


言葉に詰まる。


図星だった。


悪石「悔しかったんでしょ」


悪石「だからもう一個の答え探してた」


嶋口「……」


凛はカウンターから離れ、ゆっくりと奥へ歩いていく。


悪石「こっち」


俺は黙ってついていく。


店の奥。


表には並んでいない棚。


少し埃をかぶったスペース。


悪石は一つの箱を取り出した。


悪石「普通はね」


悪石「両利き用のグローブなんて、存在しないの」


箱を開ける。


中には


少し変わった形のグローブ。


左右対称に近い構造。


ポケットも、どちら側でも使えるように深く作られている。


嶋口「……これ」


悪石「試作品」


悪石「この前、ウチで作ったやつ」


嶋口「売り物か?」


悪石は首を横に振る。


悪石「違う」


悪石「挑戦者用」


嶋口「なんだそれ」


悪石は少しだけ間を置いた。


悪石「キミが投げてるの見て、ここに来るんじゃないかって思ってお父さんにお願いしたんだよ」


嶋口「……は?」


悪石は肩をすくめる。


悪石「だってさ」


悪石「そういう顔してたもん」


嶋口「どういう顔だよ」


悪石「諦めてない顔」


言い返せなかった。


悪石「で、このグローブ」


悪石「ただの両利き用じゃない」


嶋口「……?」


悪石「ちゃんと使えないと、逆に邪魔になる」


悪石「中途半端なやつには、絶対扱えない」


嶋口はグローブを手に取る。


思ったより軽い。


でも、芯はしっかりしている。


悪石「だから条件」


嶋口「条件?」


悪石はボールを一つ、軽く放ってよこした。


パシッ。


自然と右手で受ける。


悪石「ここで投げて」


悪石「右と左、両方」


嶋口「……店の中だぞ」


悪石「奥なら大丈夫」


悪石「一応、壁当てできるようにしてある」


見ると、奥の壁は分厚いゴムで覆われていた。


なるほど、ただの店じゃない。


悪石「逃げたら、貸さない」


嶋口「誰が逃げるかよ」


ボールを握る。


まずは右。


嶋口「いくぞ」


振りかぶる。


踏み込む。


腕を振る。


シュッ、ドンッ!!


いい音。


しっかり芯を食った感触。


悪石「うん、それは知ってる」


悪石「じゃあ次」


俺は無言でグローブを持ち替える。


左。


さっきまでの感覚が、少しだけ残っている。


でも、まだ不安定だ。


嶋口(関係ねえ)


振りかぶる。


踏み込む。


腕を振る。


嶋口「……っ!!」


シュッ——


ドンッ!!


さっきより強い音。


でも、わずかに高い。


悪石「……惜しい」


嶋口「分かってる」


もう一球。


今度は低く。


コースを意識して


シュッ、ドンッ!!


今度は、狙ったところに決まった。


悪石の表情が変わる。


悪石「……へぇ」


ゆっくり近づいてくる。


悪石「思ったより早いね」


悪石「形になるの」


嶋口「どの目線で言ってんだ」


悪石はグローブを指差す。


悪石「それ、使いこなせるかもね」


嶋口「貸してくれるのか」


凛は少しだけ考えて


ニヤッと笑った。


凛「まだ」


嶋口「は?」


悪石「もう一個、条件」


嶋口「めんどくせえな」


悪石「私を甲子園に連れてって」


嶋口「……は?」


思わず間の抜けた声が出た。


嶋口「いや、急にスケールでかすぎだろ」


悪石は真顔だった。


さっきまでの軽さが消えている。


悪石「冗談じゃないよ」


店の奥が、急に静かになる。


悪石「じゃあ約束ね!」


プロフィール

悪石(あくせき) (しげる)

年齢:81歳

誕生日:1/28

経歴:安条高校(愛知)、プロ(中部)

ポジション:キャッチャー

左打ち

身長:189cm

体重:不明

パワー⑩

ミート⑨

走力⑩

噂:史上最高の捕手と呼ばれているみたいだ。

 43-41も記録したとかなんとか。

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