未知数
勝は蘭からの被弾によって数日間ストライクに入らない軽いイップスになっていた。
俺は無言でマウンドに立った。
秋の風が、少しだけ冷たい。
右手にボール。
左手にグローブ。
嶋口「……どっちから見る?」
中尾はニヤッと笑う。
中尾「両方だよ。全部見せろ」
その一言で、迷いが消えた。
まずは右。
振りかぶる。
踏み込む。
嶋口「おりゃっ!」
シュッ——ドンッ!!
中尾「……うん、これは知ってるお前だな」
ミットの音が、乾いて響く。
中尾「じゃあ次」
左。
グローブを付け替える音がやけに大きく感じる。
嶋口「……ふぅ」
一度、息を吐く。
足の出し方。
体の開き。
全部がまだ、ぎこちない。
それでも——
振りかぶる。
踏み込む。
腕を振る。
嶋口「……っ!!」
シュッ——
ドンッ!!
さっきより、強い音。
中尾のミットが、わずかに弾かれた。
中尾「……おい」
嶋口「どうだ」
中尾はゆっくり立ち上がる。
そして、笑った。
中尾「今の……普通に打てねえぞ」
嶋口「マジかよ」
中尾「マジだよ」
中尾はもう一度ミットを構える。
中尾「もう一球。今度はコース意識しろ」
何球も投げた。
右で。
左で。
最初はバラバラだった球が、
少しずつ“形”になっていく。
左はまだ荒い。
でも、その分だけクセがある。
中尾「これさ」
中尾「右は完成形、左は未知数って感じだな」
嶋口「未知数、ね」
中尾「だから強いんだよ」
沈黙。
風が通り抜ける。
中尾が、急に真面目な声で言った。
中尾「勝」
嶋口「ん?」
中尾「お前、それ武器にするならさ」
中尾「中途半端はやめろ」
嶋口「……」
中尾「どっちもエースになれ」
その言葉は、思ってたより重かった。
嶋口「……きついこと言うな」
中尾「当たり前だろ」
中尾「全国行くんだろ?」
心臓が、ドクンと鳴る。
あの日、143km/hを打たれた瞬間。
あの悔しさが、蘇る。
嶋口「……ああ」
嶋口「行くよ」
嶋口「右でも」
嶋口「左でも」
嶋口「全部でな」
中尾は満足そうに笑った。
中尾「よし、決まりだな」
中尾「じゃあ明日から地獄な」
嶋口「は?」
中尾「スイッチ育成プログラム、開始だ!」
嶋口「そんなのあんのかよ」
中尾「今作った」
プロフィール(2)
平 熱
年齢:14歳(中3)
誕生日:9/17
鷹浜中学校
左利き打ち
ポジション:ピッチャー(左)
変化球⑨
球威⑥
球速⑥
噂:東京の名門・月大山高校から推薦をもらったらしい
陽田 蘭
年齢14歳(中2)
誕生日:6/15
紙村学園中等部
左打ち
ポジション:ショート、ファースト、セカンド
パワー⑩
ミート⑦
走力⑧




