増す緊張感
一塁には嶋口。
二死一、二塁。
大京高校のエースは一度帽子のつばに手をやり、深く息を吐いた。
ここで一本出れば、均衡が破れる。
ベンチから古田監督が静かに腕を組んで見つめていた。
「八番、センター、米内くん」
米内が打席へ入る。
飯塚がベンチから叫ぶ。
「一本でいい!」
初球。
シュッ!
カキンッ!
鋭い打球は一、二塁間へ。
セカンドが飛びつく。
しかし、グラブを弾いた。
「抜けた!」
三塁ランナーがホームへ突っ込む。
嶋口も一気に二塁を蹴る。
センターが素早く前進し、本塁へ返球。
ホームは間に合わず、一点先制。
なおも嶋口は三塁へ滑り込む。
審判「セーフ!」
安条高校ベンチが沸き上がる。
三谷「よし!」
飯塚「いいぞ!」
スコアボードには
安条 1-0 大京
と表示された。
なおも二死一、三塁。
続く打者は最奥。
エースは冷静にバットを構える。
初球を打ち上げ、打球はセンターへ。
センターが落ち着いて捕球。
スリーアウト。
追加点こそ奪えなかったが、安条高校がついに試合を動かした。
ベンチへ戻る嶋口に、中尾が笑顔で迎える。
「ナイスラン!」
嶋口も笑い返す。
「一本じゃなくても、点は取れるな。」
古田監督は静かに頷いた。
「それでいい。」
「派手さはいらん。勝つ野球を続けろ。」
四回表。
マウンドには最奥。
一点を背負っても、その表情は変わらない。
グラブを胸の前で合わせると、静かに振りかぶった。
春の強豪対決は、一点を巡る緊張感をさらに増していった。




