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スイッチ 〜前人未到の夢の道導〜  作者: はまちゃん


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23/26

二枚看板

三日後。


安条高校・グラウンド。


春季大会三回戦前日。


空気は一回戦とは違っていた。


「勝ち残ったチーム」の重さが、全員の肩に乗っている。



古田監督が、スタメン表を手にする。


一人ずつ、淡々と読み上げていく。



「一番、ショート 三谷碧(三年)」


「二番、レフト 柳田隼人(二年)」


「三番、セカンド 馬能龍太(三年)」


「四番、キャッチャー 飯塚義信(三年)」


「五番、ファースト 成宮要(三年)」



ここまでは変わらない。


だが次で、空気がわずかに動く。



「六番、サード 中尾銀(一年)」



中尾銀は一歩だけ前に出る。


表情は変えない。


でも、目の奥が少しだけ鋭くなる。



(下位じゃない)


(“中軸に近づいてきてる”)



「七番、ライト 矢部愛斗(二年)」


「八番、センター 米内舞(三年)」



そして——



監督は一瞬だけ間を置く。


視線が、少しだけベンチの奥へ向く。



「九番、DH 嶋口勝」



一瞬の静寂。



観客がいるわけではない。


それでも、空気が変わるのが分かる。


中尾銀の視線も、わずかに動く。



(来たか)



さらに続く言葉。



古田監督「そして」



「ピッチャー 最奥海斗」



ざわつきは起きない。


代わりに、納得の沈黙。



古田監督「連戦にはなるが頼んだぞ、エース」



最奥「……はい」


短く、低く。



ベンチの空気が締まる。


三谷が腕を組む。


三谷「DHか、嶋口」


米内「打撃だけで使うってことだな」


飯塚「試されてるな」



その少し離れた場所。


嶋口勝は、バットを握っていた。


何も言わない。


だが、内側でははっきりしている。



(打てるかどうかじゃない)


(使われるかどうかでもない)



(結果を出す場所が、変わっただけだ)



中尾銀が横目で見る。


中尾「おい」


嶋口「んだよ」


中尾「やっと“仕事”来たな」



嶋口は軽く笑う。


嶋口「ああ」


嶋口「待ってただけだ」



そのやり取りを見て、飯塚が小さく息を吐く。


飯塚「いいバッテリーじゃなくて」


飯塚「いい“二枚看板”だな、あいつら」



ベンチの外では風が吹く。


まだ春なのに、少しだけ熱い。



嶋口(DH)


嶋口(打つだけなら、シンプルだ)



嶋口(なら——)



嶋口(見せるだけだ)



試合前夜。


チームは静かに、次の一戦へと準備を進めていた。

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