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スイッチ 〜前人未到の夢の道導〜  作者: はまちゃん


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16/26

均衡崩壊

中尾は静かにサインを出す。


中尾(まずは力勝負だ)


嶋口は小さく頷く。


第一球。


シュッ!!


ドンッ!!


審判「ストライク!」


141km/h。


神谷はバットを振らない。


ただボールを見送った。


神谷「……速いな」


二球目。


中尾は外角低めを要求する。


嶋口が腕を振る。


シュッ!!


カキン!!


鋭い打球。


一・二塁間へ。


だが——


波田が横っ飛び。


グラブに収める。


そのまま立ち上がり、一塁へ送球。


審判「アウト!」


スリーアウト!


一回裏終了。


嶋口は三者凡退の立ち上がり。


スタンドから拍手が起こる。


観客A「さすが嶋口だ!」


観客B「右だけでも十分すごい……」


ベンチへ戻ると、中尾が笑った。


中尾「上々の立ち上がりだな」


嶋口「ああ。でも、まだ右だけだ」


中尾「分かってる」


中尾はマスクを外し、ニヤリと笑う。


中尾「本番はここからだ」


二回、三回と両投手は一歩も譲らない。


互いに無失点のまま、試合は四回表へ。


アナウンス


「四番、ピッチャー、嶋口くん」


嶋口が打席へ向かう。


一塁、二塁にランナーを置くチャンス。


ベンチがざわつく。


中尾「ここで返せ!」


星谷は淡々と投球練習を終える。


初球。


シュッ!!


外角高め。


嶋口は見逃さない。


振り抜く。


カキーン!!


乾いた快音が球場に響く。


打球は高々と舞い上がり、左中間へ。


伸びる。


伸びる。


そして——


スタンドイン!!


審判「ホームラン!」


中尾「よしっ!」


一塁走者、二塁走者が生還。


嶋口の3ランで、均衡が破れた。


決勝戦はまだ始まったばかり。


東海地区最強右腕・星谷。


そして、右と左を操る嶋口。


二人のエースによる投げ合いは、さらに熱を帯びていく。


四回裏。


スコアは3-0。


鷹浜ベンチには笑顔が戻り始めていた。


中尾がマスクを被り直しながら、マウンドへ歩く。


嶋口へボールを返し、小さく笑った。


中尾「よし、余裕も出てきたところだし」


少し間を置く。


中尾「解禁するか」


嶋口もニヤリと笑う。


嶋口「ようやくか」


中尾「ここまでは右だけで十分だった。」


中尾「でも、相手も二巡目。」


中尾「そろそろ混乱してもらおうぜ。」


嶋口はゆっくりと右手のボールを持ち替える。


左手。


スタンドがざわつく。


観客A「持ち替えたぞ!」


観客B「まさか……」


観客C「本当に左で投げるのか!?」


いはきベンチにも緊張が走る。


相手監督「……来るぞ。」


星谷もベンチから静かに視線を送る。


星谷「これが噂の……」


球審も一度嶋口を見つめる。


中尾がミットを低めに構えた。


中尾「見せてやれ。」


嶋口「おう。」


振りかぶる。


踏み込む。


左腕が大きくしなる。


シュッ!!


ドンッ!!


審判「ストライク!」


モニター。


117km/h。


球速は右より遅い。


だが——


打者は完全にタイミングを外されていた。


観客「遅いのに打てない!」


観客「右とフォームが全然違う!」


中尾はマスクの奥で笑う。


中尾(これがスイッチピッチャーだ。)


嶋口は静かに次のボールを受け取る。


ここから、決勝戦の流れが大きく動き始めようとしていた。

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