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隣のOLが、俺の部屋で宅飲みしている  作者: 白い彗星
第六章 初恋と、これから

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第51話 とても特別なこと



 ―――詩乃side



「詩乃ちゃーん!」


「……あっ、ごめん、なに?」


「ぼーっとしてどうしたのー?」


 ……中学生の頃の私は、いい言い方をすればクール、悪い言い方をすれば無愛想な性格をしていたと思う。


 そんな私だけど、幸運にも友達に恵まれた。おかげで、中学でぼっちにならずに済んだ。

 小学生よりも前から一緒の楓ちゃんとは、三年間別のクラスだったのは残念だけど。


 気の許せる友達。私としても、居心地が良かった。

 けれど……ついていけない話もある。


「ご、ごめん。……それで、なんの話だっけ?」


「ずばり、彼氏にするならどんなタイプかって話!」


 ……色恋の話だ。


「まだ早くないかな」


「そんなことないわよ。最近じゃ小学生だってカレカノがいるのよ」


「最近の子はマセてるねぇ」


 私は、いつも適当に流すのだけど……この日ばかりは、彼氏談義に熱が入っていた。


「はー、彼氏欲しいわ。んで、付き合うならやっぱ年上っしょ!」


「うんうん、わかる!」


「やっぱ、大人の包容力で包みこんでほしいよね!」


 ……そっか……付き合うとなったら、年上が普通なのか。


「私には、よくわからないかな」


「詩乃は純粋だからねー、よしよしよし!」


 恋には無縁。……そんな私が上級生の男の人に告白されたのは、なんの運命だろうか。

 その先輩は、運動部の副キャプテンという立場で、そこそこ人気のある人だ。


 そんな人から好意を向けられ……どうするべきか迷った。でも……


「……はい」


 私は、付き合うことにした。


 縁のないことだと思っていたけど、男女の交際に興味がないわけじゃない。

 あとから考えれば、こんなお試しみたいな気持ちで付き合うなんて、相手に失礼だと思うけど。


 休日に一緒に出かけて、おしゃべりして……手を繋いで。


「……結構楽しい、かも」


 学生らしく勉強会もした。お互いの好きなものを話し合ったり、笑い合ったり。


 しばらくそんな日々が続いて……私は、先輩の部屋に呼ばれた。男の人の部屋に行くなんて、少しイケない気がして。

 落ち着きなく座っていると……隣に座った先輩が、私をじっと見ていた。そして突然、キスを迫られたのだ。


「詩乃……」


 一緒にいると心地良いと感じていた……

 でも、キスを迫られたその瞬間……先輩が、怖くなった。


 私の名前を呼ぶその声が、ひどくノイズになって。


「! いやっ、やめてください!」


「なんだよ……付き合ってるんだから、いいだろ?」


 なに? 付き合うって、そういうことなの?

 そりゃ、私だって……知識がないわけじゃない。ないけど……でも!


 ……怖くなって、私は逃げた。無我夢中になっていて、詳しくは覚えていない。

 その後、先輩は家の都合で転校したと聞いた。


「詩乃、彼女だったのに知らなかったん?」


「でもまあ、噂じゃ他にも女がいたらしいよ。別れて正解だよ」


 私と先輩が別れたという話は、先輩の女癖が原因……ということになっていた。

 私に彼氏ができたことを喜んでくれていた友達は、一転私のことを気にかけてくれた。


 でも……別れた本当の理由は、誰にも話せなかった。


「……っ」


 それからだ。私は恋愛というものに、興味を持てなくなった。

 別の男の人が告白してくることもあったけど、受けなかった。告白してくれた男の人には、悪いと思ったけど。


 次第に、告白されることはなくなった……

 私から、男の人を遠ざけていた。


「詩乃ったら、せっかくの学生生活……彼氏作って遊ばないともったいないよー?

 そりゃ、私には本当のこと話してくれたのは嬉しいし……でも、本当に男が苦手になったなら、女子校にでも行けばいいじゃん。克服したいと思ってんでしょ?」


 楓ちゃんの言葉は、心配しつつもいつも通りだった。

 それが、私にはありがたかった。


 交際経験は一度きり。あの先輩のことは……心地よかったけど、多分好きではなかった。

 だから、本気で男の人を好きになったこともない。


 こんな私を気にかけてくれる男の人なんて、もういない。そう、思っていた。


「あ、し、詩乃ねぇ……詩乃さんっ。こ、こんにちは……」


 ……そんな時だ。楓ちゃんの家で、中学生の甲斐くんと再会したのは。

 中学に上がるまでは、よく遊んでいた。でも、それからは甲斐くんの部活が忙しく、タイミングが合わなかった。


 彼の姿を見た瞬間、胸が高鳴った。

 今まで『詩乃姉ちゃん』と呼んでくれていた彼の、呼び方を変える恥じらいの姿がかわいくて? 思ったより身体つきがしっかりしていて?


 ……違う。


「……こんにちは、甲斐くん。大きくなったね」


「も、もう中学生ですよっ。もう大人ですっ。

 し、詩乃さんこそ……その、綺麗に……」


「なーに一丁前に色気づいてんのよ」


「! づ、づいてない!」


 この子は、私を見てくれている。小さい頃からずっと、私だけを見てくれている。

 お姉ちゃんの友達だからかもしれない。ただそれだけの関係でも。


 それでも……



『噂じゃあの先輩、他にも女がいたらしいよ』


『花野咲さん、俺と付き合ってくだ……え、どこがいいって? そりゃ……他の女子より、綺麗なところ、とか?』


『あの子、今度狙ってみようかな。あのグループの中じゃ一番落としやすそうだしさ』



 ……他の男の人のように、怖くない。

 年下の彼に、安心感を抱くなんて。いったいどうしてだろう。


 この子は……他の人と比べずに、私だけを見てくれている。

 彼にとってはなんでもないようなことが……私にとっては、とても特別なことのように思えた。


 多分この頃から、私は甲斐くんのことを……

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