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隣のOLが、俺の部屋で宅飲みしている  作者: 白い彗星
第六章 初恋と、これから

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第49話 私とじゃ、釣り合わないよ



 ―――詩乃side



『俺、ずっと前からあなたのことが……詩乃さんのことが、好きでした! よければ、付き合ってください!』



 ……文化祭で、甲斐くんから告白をされた。それも、異性として好きというもの。


 衝撃的だった。身近な人からの告白なんて、初めてだったから。

 そういえば、占いで『己の人生を左右する出来事に直面する』と言われたっけ。


 私は彼にとって……姉の友達でしかないと思っていたのに。


「このまま、戻れないのかな……」


 ……関係が切れちゃうのは、寂しいよなぁ。

 告白を断った分際でなにを言っているんだと、自分でも思う。


 はぁ、私ってこんな勝手な女だったんだ。


「……会社行かないと」


 憂鬱な気持ちだからって、会社は休めないよね。



 プルルル



 冷蔵庫のバナナを口に放り、下着姿のままクローゼットの中を漁っていたところで、着信が鳴った。


「……楓ちゃん?

 もしもし」


 画面には、友達の名前が表示されていた。

 こんな時間に、なんだろう。


『もしもーし、ごめんね朝早くから。仕事前だって言うのに』


 朝も昼も夜も関係なく、元気な声だなぁ。

 その元気さが、今は羨ましい。


「平気。まだ時間はあるから」


『ちょっと話があって。準備しながらでいいから、聞いてくれる?』


 電話をスピーカーにして、お言葉に甘え着替えを続けていく。


「話って?」


『……単刀直入に聞くね。甲斐に告白されたんだって?』


「!?」


 明るい声の中に、多少の真剣さがあった。

 心臓が大きく跳ねる。


『甲斐に聞いた。

 ちなみにカマかけただけで、あいつから話したわけじゃないからね』


「……うん」


『……弟と友達のことだからさ。事情知って無視はできないわけよ』


 ……楓ちゃんなら、そうするよね。

 私たちのことを、気遣ってくれている。


『誰にでも告白する自由、断る自由はある。結果がどうでも、それを責めるつもりはない。詩乃が本当に甲斐のことを恋愛対象として見れないなら、なにも言わない。

 ……けど、違うんじゃない?』


「……」


 きっとそれは、図星……胸の奥に、深く突き刺さる。


 男の人を好きになったことのない私には、確定だなんて言えない。

 でも、きっと……


「甲斐くんといる時間は、楽しかった。

 でも……私とじゃ、釣り合わないよ」


 お姉さんなのに料理は全然できない、たいした特技もない、とびきり美人でもない。

 性格だって、うじうじしてるし……なにより……


『……確かにあいつはバカだけど、年が一回り上なことを気にしないわよ』


「一回りじゃなくて九つね!?」


 ……私と甲斐くんには、埋めようのないものがある。

 好きなものや趣味を合わせることはできても。年の差だけは、どうにもならない。


 浪ちゃんみたいな、同い年の女の子とお付き合いしたほうが、彼にとって幸せなんじゃないか。


「社会人と、学生だよ? 時間だって、合わないし……」


『毎晩甲斐の部屋で楽しく飲んでて、説得力あると思う?』


「うぐっ」


 ……返す言葉もない。


『そんな体裁ばっか気にして断ったの? 年上ならドンと構えてなさいよ』


「……し、仕方ないでしょ。年上だから、いろいろ考えちゃうんだよ……」


『まー……確かに、社会人の女が高校生の男の子に手ぇ出したってなると、コンプラ的にやばくね? ってなるわよねぇ』


「……言い方」


 励ましているのか貶しているのかどっちだ。


『ごめんごめん。でもさ……いいじゃん、周りがどうとか。大切なのは、自分の気持ちじゃない』


 頭では、理解できる。だけど……


『とりあえずさ。これで二人の関係は終わり……になられたら、寂しいわけよ。

 あいつきっと、告白やら断られたやらで頭ぐちゃぐちゃだから……改めて理由をちゃんと伝えてあげるのも、年上の役目だと思うよ?』


「……ありがとう……」


 弟をフッた相手なのに、楓ちゃんは私を励ましてくれていた。

 半分くらいは怒られていたのかもしれないけど。


 その後、改めてお礼を告げる。

 本当ならもっと話してたい。でも、時間は待ってはくれない……通話を終了する。


「……ふぅ、行こう」


 家を出る。甲斐くんのお弁当なしなんて、いつぶりだろうな。


 昼食時、購買で三個ほどパンを買った。

 その時だ、ポケットの中で携帯が震えていた。


「! 浪ちゃん?」


 画面に表示されているのは、ひょんなことから一緒に遊ぶようになった現役女子高生の彼女。

 最近ではメッセージのやり取りも多い。


『こんにちは。お忙しい中申し訳ありません。

 二人で話がしたいと思って連絡しました。もし、都合がよろしければ……』


 そこに書いてあったのは、丁寧な文と、気遣いのある内容。

 ただ……


「……なんか、怖いな」


 いきなり話がしたいなんて、初めてのことだ。


 けど、断るなんて選択肢はない。内容はわからないけど……

 オーケーと返事を出して……とあるファミレスで落ち合うことになった。


 その後、終業になり目的の場所へ向かう。


「浪ちゃん、お待たせ」


「詩乃さん」


 店内に入ると、すでに浪ちゃんが待っていた。

 かわいらしい私服を着て、私に気づき手を振る。


 対面に座り、一息ついた。


「すみません、疲れているのに呼び出してしまって」


「ううん、気にしないで」


「……スーツ姿、かっこいい」


 とりあえず、ご飯を食べよう。

 私の奢りに遠慮していたけど、次第に折れて注文する。


 料理が来るまでの間、会話もなく黙り込む……


「……白鳥の告白、なんで断ったんですか?」


 わけもなく……直球の言葉をぶつけられた。


「知ってたの?」


「詩乃さんに告白するって理由で私の告白を断った白鳥が、様子がおかしかったので話を聞いたんです」


「そう、なんだ……え、甲斐くんに告白?」


「はい。後夜祭が始まる前に。……でも、好きな人がいるって断られたんです」


 なんということだろう……まさか知らないところで、そんなことが起こってたなんて。

 こんないい子の告白を……断ったのか。


 私が、好きだから……

 なんだか、もやっとする。浪ちゃんが告白したと聞いて。


「相手が誰かなんて、見てればわかります」


 水を一口飲み、浪ちゃんは私を見た。


「……別に、怒ってるとかじゃないんです。ただ、理由が知りたくて。

 だって、詩乃さんは白鳥のこと……」


 そんな彼女の視線に、私は……


「……私ね、怖かったんだ。……私じゃ、甲斐くんに似合わないって」


 楓ちゃんにも話したことを、彼女にも話す。

 情けない自分の気持ちを。けど、二人と話していて……気づけたこともある。


 その気持ちに、素直になっていいんだと。そう言ってくれている。


「なんだ、私が話すまでもなく、決めてたんですね」


「そんなことないよ。浪ちゃんのおかげで、決心が固まったから……ありがとうね」


「……恋敵にお礼言われるのも、変な感じです。

 ……まだもたもたしているようなら、私が白鳥、奪うつもりでしたから」


 べ、と舌を出し、浪ちゃんは笑う。

 こうやって、背中を押すようなことまで。私にも、優しいんだから。


「今日は私の奢りだから、好きなだけ食べて!」


「……なら、遠慮はしません」


 帰ったら……甲斐くんに、会いに行こう。

 会わない理由を探してたのに……今は、会いたくて仕方ない!

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