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隣のOLが、俺の部屋で宅飲みしている  作者: 白い彗星
第六章 初恋と、これから

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第48話 それで、白鳥は諦めるの?



 ――――――



「いらっしゃいませ、何名様のお越しですか?」


 入店の音楽が店内に響き、隣にいた築野さんは駆けていく。

 先ほどまで会話がなかったのに、すぐに笑顔を浮かべて行った。さすがだ。


 さて、バイト先にて彼女と顔を合わせたわけだが……



『あ……えっと、こんにちは……』


『……こんにちは』



 素っ気ない挨拶をしたのみ。それから、仕事中の声掛けを除けば会話はない。

 気まずくならないよう、努めるつもりが……


 なんだか、重い。


「はぁ……バカだなぁ俺」


 やはり、自分がフッた相手との気まずい関係に加えて想い人にフラれたダメージはでかい。

 しかも、俺の気持ちの問題なので……ダサい。


「甲斐ちゃん、今日はどうしたのかしら?」


「! 店長」


 振り返ると、そこには筋肉ダルマ……じゃなくて、店長が立っていた。


「だめじゃない、集中しないと。忙しい中ぼーっとしてたら、怪我をしちゃうわよ?」


「すみません……」


「まあ、怪我をしたらねっとりと舐めてあげるから安心して」


 唾つけときゃ治る……てか。絶対怪我しないようにしよう。


 第一印象はいろんな意味で怖い人だったけど、その人柄はとても優しい。

 きっと、俺が相談しようとすれば乗ってくれるだろう。


「悩み事があるなら、なんでも聞くからね。一人でタメこんじゃだめよ?」


「はい、ありがとうございます」


 ウインクをして、店長は去っていく。言い方が怖い……いつも通りだが。


 それから、意識を仕事に集中。接客へと勤しんだ。

 その後、休憩時間になり……


「二人、なにかあったんでしょう?

 このままギクシャクされても困るし、ちゃんと話しておきなさい」


 休憩室に行った俺は、なぜか待ち構えていた店長に捕まり……

 同じく連れてこられたのは、築野さんだった。


 どうやら、俺たちの間になにかあると悟り……二人きりになれる機会を作ったようだ。


「こういうのは、多少無理やりでも話したほうがいいのよ。

 ……どうしても気まずいなら……ワタシが付き添うのも、やぶさかでないけど?」


「……遠慮します」


 俺と築野さんの間に店長が座り、昨日の告白についての話をして、時折相槌を打ってくる。

 その光景を想像したら、悪寒が走った。


 去っていく店長と入れ替わるように、築野さんが休憩室に。

 少し距離を開けて座り、沈黙の時間が流れる……


「……ねえ、白鳥。

 あのあと、ちゃんと詩乃さんに、告白はした?」


「……うん」


 沈黙が破られる。話を出されて、肩が震える。

 だけど築野さんが話題に出したのは、自分のことではなく……詩乃さんとのことだった。


 彼女には、話しておく義務がある。そんな気がして……


「そっか……それは、おめでとう」


「え?」


「え?」


 続く言葉に、間の抜けた声が出た。


「なんで、おめでとう?」


「だって……オーケーもらったんでしょ? だから、お祝い的な……」


「いや……その、断られてしまい……」


「……は?」


 ……気のせいだろうか。室内が少し寒くなったような気がした。


 その後、彼女に告白の流れを話す。

 記憶がないことは話せないから、ショックで忘れていることを除いて。


「……そう……フラれたんだ」


 ポツリとつぶやいた築野さんの雰囲気は、気のせいか先ほどから変わっている。

 ような気がする。


「……かっこ悪いよな」


 詩乃さんに告白するために、築野さんの告白を断ったのに……結果がこれだ。

 いったいどんな顔をしたらいいのか、わからない。


「そんなことないよ」


 だけど築野さんは、力強く首を振った。


「……好きな人に告白するのが、どれだけ勇気のいることか。よくわかる。

 それに白鳥は、私の気持ちにも決着をつけてくれた。立派だよ」


 そう話す築野さんは、俯いているので表情が見えない。

 ……あんなことがあって、俺を慰めてくれてる? 優し過ぎるよ。


「それで、なにか理由とか……好きな人がいるとか」


「そ、そういうのは……ない、かなぁ?」


 なぜだろう、チクチク刺さる。


「……それで、白鳥は諦めるの?」


「え」


「一度フラれたからって、諦めるの?」


 築野さんの目が、しっかりと俺をとらえていた。

 一度告白して、ごめんなさいで終わり……そんなの誰が決めたのか。


 わかっているが……


「……もちろん、完全に諦めたわけでは……」


「……告白しても、百パーセント成功するわけじゃない。白鳥は、それも込みで告白に踏み切ったんじゃないの?

 私は、そのつもりであんたに告白したのよ」


「……そう、だね」


 築野さんの言う通りだ。俺はいろんな可能性を考えた上で、告白した。

 告白が必ず成功するなんて、うぬぼれていた部分はある。だけど、現実に失敗だと思っていた以上にショックで。


 でも……これで諦められるほど、俺の気持ちは小さくない。


「ありがとう、築野さん。なんか、ちょっと元気出たかも」


「うん。ちなみに……なんでもない」


「?」


 俺ってば、だめだな。自分に告白してくれて……その想いを断った相手に励ましてもらうなんて。

 でも、おかげですっきりした。


「よしっ、俺また頑張るよ!」


「そう、その意気だよ。それでこそ白鳥だ」


 気持ちも、落ち着いてきた。

 ……姉ちゃんや築野さんと話すことで、心が楽になった。


「築野さんに相談してよかったよ」


「なら、この場を設けてくれた店長のおかげだね」


 くすくすと、築野さんは笑う。


 いろいろ話して、整理して、落ち着いたおかげかな、考えに余裕が出来た。

 ……告白は一回限りじゃない。


 まただめだったとしても……その理由くらいは、聞きたい。

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