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隣のOLが、俺の部屋で宅飲みしている  作者: 白い彗星
第六章 初恋と、これから

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第47話 姉なめんなっての



『遅いぞ甲斐ー! 男の子なんだから、もっと体力つけないと!』


『無茶言わないの楓ちゃん。甲斐くんまだ四歳なんだからっ』


『ま、まってよーねえちゃー、しのねえちゃー!』


『そんな泣きべそかいてたら強くなれないわよー。強くなって、私と詩乃を守ってくれるんでしょー?』


『う、うん、まもゆ……』


『ふふ、ありがとねー甲斐くん。よしよし』


『詩乃は甲斐を甘やかし過ぎなのよ!』


『楓ちゃんは甲斐くんに厳しすぎだよ!』


『ふ、ふたりともひっぱらないでー! びぇえええええ!』






「……変な夢見た」


 目を覚まし、起き上がる。

 あたりを見回す。俺の部屋だ。


「……詩乃姉ちゃんか、懐かしいな」


 夢の中で泣いていたガキが呼んでいた『しのねーちゃ』。

 昔は、詩乃さんをそう呼んでたっけ。さすがに舌っ足らずだけど。


 次第に、詩乃さん呼びに。……多分、恋心を自覚した時からだろうな。



『ごめんなさい。甲斐くんの気持ちは、嬉しいんだけど……私は、キミとは付き合えません』



 ……フラれたんだよなぁ、俺。


「はぁ……」


 また布団に沈む。


 フラれた瞬間、頭が真っ白になって。気づいたら、部屋にいた。

 記憶が飛ぶって、こういうことか。


「……バイトあるんだよな。行きたくねぇ……」


 片想いを続けた相手にフラれた翌日にバイト……か。精神状態イカれそう。

 いや、告白日時を決めたのは俺だし、翌日バイトがあるって知ってたんだから……完全に自業自得なんだけどさ。


 もしかしたら……告白は成功すると、思い込んでいたのかもしれない。

 詩乃さんとの関係は、良好だと思っていた。


「はぁ、だっせ……」


 結局、うぬぼれてたんだな。

 毎日料理を作って、食べてもらって……部屋で酒盛りして、楽しく話して。それももう、終わりかな。


 だって……詩乃さんは昨夜、俺の部屋には来なかったから。


「ま、フッた直後にフッた相手の部屋に飯食いに行く神経してたら、そっちのがやばいか」


 逆に、俺から詩乃さんを誘えるはずもない。

 自分をフッた相手をその日の晩飯に招待できるメンタルがあるなら、俺はすでに詩乃さんに十回は告白してる。


 告白の後、別れて……詩乃さんとは、会っていない。声も聞いていないし、メッセージのやり取りだって。


「……とりあえず、シャワーでも浴びよ」


 いろいろ考えてしまう。が、寝起きでこんがらがっている頭を冷やすことに。

 朝ご飯は……適当でいいか。確か、惣菜のパンがあったな。


「……うまくないな」


 いつも自分で作ったご飯を食べているからか、味気なく感じる。それとも、別の理由か。


 時間を確認する。……準備すっか。

 さすがに失恋のショックでバイト休みます、なんて言えないし。もしかしたら、動いている間は忘れられるかもしれないし。


 ……そういや確か、シフトが築野さんと被ってたな。忘れられないなこれ。


「……えっ、姉ちゃん?」


 携帯を探し、画面を開く。

 すると表示されたのは……『不在着信』を知らせるポップだった。それも、いくつもの。

 鬼のような不在着信嵐だ。


 昨夜から。つまり意識ぶっ飛んでる間気付かなかったのか。

 ……とりあえず、かけ直すか。


「……あ、もしもし姉ちゃ……」


『ちょっと! 昨日から何度電話しても出ないの、どういうことよ!?』


 ……電話に出た瞬間、大声が鼓膜に響く。

 朝からマジで勘弁してほしい。


「っ……い、いろいろあったんだよ。出られなかったのは、ごめんだけど」


『いろいろねぇ……詩乃に告った、とか?』


「!?」


 思わず、携帯を落としそうになった……それほどに衝撃的な言葉だった。


「な……なんで、そんな……」


『何年あんたの姉やってると思ってんの。見てりゃわかるわよ……あんたが私の友達に恋してることも、一大決心みたいな顔してたことも。それが多分、告白だろうってことも』


「……そう、なんだ」


『そうそう。姉なめんなっての』


 電話の向こう側で、くくっと笑っている顔が見えた気がした。


 気持ちがバレていたこっちとしては、のんきに笑っていられないんだよな。

 思っていた以上に恥ずかしい。


「……姉ちゃんは、どう思ったんだよ。俺が……詩乃さんを好きだって、知って」


 こんなこと聞いて、どうするんだろ。


『どうって……まー、弟と友達が付き合うかもって考えたら、なにも思わないでもないけどさ。

 ……何事も、本人たちの気持ちが一番大切でしょ』


 ……姉ちゃんのことだから、俺の気持ちをからかうんじゃないかと思っていが……意外に、ちゃんと考えてくれてる。


『それで……結局、告ったわけ?』


「!

 ……うん。告白した。で、フラれちゃった」


『……そう』


 できる限り明るく話せた……と思う。心配をかけないように。

 けれど、そんな俺の気持ちも筒抜けなんだろうな。


『……でも、意外ね』


「え、なに?」


『いんや、なんでもない』


 そんな言い方されたら気になるんだけど……ま、無理に聞き出すもんでもないか。


『で、あんた今日は予定あんの?』


「まあ、バイトだよ」


『ふぅん。直接会って慰めてあげようと思ったのに残念。

 あ、バイトと言えば……もしかして浪ちゃんとも、なんかあった?』


 いきなり築野さんの名前が出て、動揺してしまう。

 どこまで知ってるんだこの姉は。ちょっと怖いぞ。


「それは……」


『あー、いいって。あんたと詩乃のことは、姉兼友達として聞いたけどさ。浪ちゃんのことにまで首突っ込むつもりはない。

 ……それに、そっちも決着つけたんでしょ?』


「……うん」


 それから一言二言を交わし、電話を切る。最後に『一度フラれたくらいで、折れんなよ』と激励をもらって。

 話していると、少し楽になった。


 ……よし、引きずるのは終わり。バイト先では、築野さんもいる……気まずくならないよう、俺は普通に接しよう。

 そうと決まれば、気合いを入れ直すか。顔洗ってこよう。


「よしっ……!」


 頬を叩く。落ち込んでる場合じゃない。

 今日はバイトが、明日は学校がある。俺にとって人生の一大事であっても、世界はなんの変化もなく回っていく。


 帰ったら……詩乃さんに、連絡しよう。付き合えなかったのは残念だけど、このまま疎遠になってしまうのは……もっと嫌だ。

 せめて、以前のような関係に戻れればいいな……

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