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隣のOLが、俺の部屋で宅飲みしている  作者: 白い彗星
第五章 文化祭と、告白の答え

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第45話 生まれて初めて恋をしたのが、白鳥でよかった



 ―――浪side



 ガララ……と扉が開いて、そして閉まる音が聞こえた。その際、「ありがとう」と声も聞こえた。

 白鳥が、行っちゃったってことか。白鳥の、好きな人のところに。


 窓の外を見る。空はオレンジがかっていて、若干暗くなりつつある。こういうの、芸術的な景色っていうのかな。

 きれいな景色だな。それにグラウンドでは、キャンプファイヤーの準備が始まっているみたいだ。


「……終わっちゃったなぁ」


 それが、文化祭のことを指しているのか……別のことを指しているのか、わからない。

 でも、終わったんだ……これで、私。



『想いが届かなかったからって、築野さんの気持ちに甘えるようなことはしないよ』



「別に……甘えてくれても、いいんだけどなぁ」


 白鳥は、私を勘違いしてる。多分、白鳥は……私がもっと、清い心の持ち主だって思ってる。

 でも、それは違うよ。この景色みたいに、きれいなんかじゃない。


 もしも白鳥が詩乃さんにフラれたとしたら、私は白鳥にアタックするだろう。もちろん、あからさまなことはしないけど、多分。

 きっと白鳥は、フラれたって私に振り向きはしない。白鳥は、フラれたからって私の気持ちに応える人じゃない。


 でも、傷心の白鳥に献身的に尽くすことで……なんて、打算的に考えている自分がいる。

 なんなら……詩乃さんにフラれてしまえ、と思っている自分もいる。私、こんな汚かったっけ。


 ……それとは別に、うまくいってほしい気持ちもある。なんだろうな、この複雑な気持ち。


「詩乃さんがもっとヤな人だったら、こんな気持ちにならずにすんだのかなぁ……」


 海で、お祭りで、文化祭で。詩乃さんと過ごして、遊んで、お互いの連絡先も交換して。

 すごくいい人だっていうのが、わかる。弟や妹も、すごく懐いてた。


 ……いい人、か。そりゃそうだ。私が好きになった男の子の、好きな人だもん。

 うん、そりゃ……いい女性だよね。


「……あれ」


 頬を、なにかが伝う。それを指ですくうと……指には、水滴が浮かんでいた。

 これって……もしかして、涙?


 それを認識した瞬間、水をせき止めていたダムが決壊するように……涙が、溢れてくる。

 おかしいな……拭っても拭っても、目から、ポロポロ涙が、止まらないよ……


 せっかく、さっきまで耐えてたのに……


「フラれたから、泣いてるの? ……バカだな、わかってたことじゃん」


 指では埒が明かない。手のひらで、涙を拭う。

 でも、止まらない。拭っても拭っても、次々と涙が流れてくる。


 私は白鳥に告白した。白鳥に好きな人がいると知って。私の気持ちには応えてくれない……わかりきった気持ちを抱いて、それでも。

 白鳥の好きな人も、知っていた。きっと詩乃さんも、白鳥のことを好ましく思っている。もしなにかあれば、二人は付き合ってしまう……そうも、思った。


「……白鳥が行った後で、よかったかな……」


 私の想いは、実らない。わかっていたことだ。わかって告白した。

 これは、ただ私が……私が言いたかったから。伝えたかったから、伝えただけのこと。これが、私なりの、気持ちの付け方ってやつだ。


 実らない恋心を抱き続けても、つらいだけだ。側で見ているのは、きっと苦しい。

 それをきっぱり諦めるために、私は勇気を出した。


「私……ぢ、ぢゃんど、できてだ……かなぁ……?」


 言葉に、ノイズが混じる。溢れる涙と嗚咽のせいで、うまく喋れない。

 白鳥とうまく話せたよね? ちゃんと、やり切れたよね?


 ……フラれちゃうなんて、知っていた、はずなのに……!

 だから、こんなの、なんともない、はずなのに……!


「……うぅ……ひっく……」


 どうして……止まってくれないの。

 わかりきってたことなのに……今日話があるって言われて、覚悟してたのに……なんで……!


「ぅあ……あぁ……!」


 ……実らないと知っていても。好きだったこの気持ちに、間違いはないから。

 溢れる涙は、私の気持ちが本物だったことの表れだ。だから……悲しいけど、誇らしく思う。


 誰かを好きになれて。涙を流すくらいに本気で好きになれて。生まれて初めて恋をしたのが、白鳥でよかった。

 そう思えて、嬉しくて……嬉しいと同じくらい、悲しくて。涙が、止まらなくて。もしかしたら、部屋に誰かが入ってくるかもしれないのに。


 そんな気持ちは、涙と一緒に流れていった。今はただ、この気持ちを吐きだしたくて。


「ぅえ……えぇえええ……ぁあああ……!」


 その場に立っていられなくて、私はしゃがみ込む。


 目からこぼれる涙を、拭って拭って……それでも、溢れる涙をひたすら拭って。

 こんなに泣いてしまったのは、いつ以来だろう。楓を助けてもらった……白鳥と初めて会った、あの日以来かもしれない。いや、あの日以上に泣いている。


 お祭りが終わった校内に、私の泣き声が響いてしまわないように。教室を出ていった白鳥に、届いてしまわないように。

 手のひらで口を押さえ、声を押し殺して、泣いた。



 ……私は人生で初めて、自分の恋が散ったことと、こんなにも涙が出るんだということを知った。

ここまで読んでくれて、ありがとうございます!

ぜひ応援などくださると、とても嬉しいです!

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