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隣のOLが、俺の部屋で宅飲みしている  作者: 白い彗星
第五章 文化祭と、告白の答え

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第44話 俺には好きな人が居ます



 ……接客を続け、時間が過ぎるのも忘れて作業に没頭していった。

 気づいた時には、文化祭の終わりを告げる校内放送があった。


 その瞬間、教室内からはどっとため息が漏れ……次第に、歓声へと変わる。

 文化祭をやり切ったことへの達成感が、爆発したのだ。


「あぁー、終わっちまったー!」


「結構売上とか出たんじゃないか?」


 口々にそんなことを言いながら、まずは着替えに向かう。

 男子はそそくさと着替え、着替え用の空き教室に移動した女子が戻ってくるまでの間、簡単な片付けをする。


 本格的な片付けは、後日だ。この後は、後夜祭を楽しむ。


「……いよいよ、か」


 戻ってきた築野さんと、目が合った。なんとなく気恥ずかしくなる。


 それから、先生の話があり……解散となる。キャンプファイヤーは自由参加で、踊る人もいれば観察する人、帰る人もいる。

 俺は……


「……白鳥」


 約束していた空き教室に、呼び出した築野さんが訪れる。

 静かな教室に、二人だけの音があった。扉を閉めると、外の空間と隔たれたよう。


「それで……話が、あるって」


「あぁ」


 彼女を呼び出した理由……それは、告白の返事をすること。


「……あの……」


「楽しかったね、文化祭」


 話を切り出す……その前に。

 言葉が被った……と言うよりは、言葉を被せてきた……?


 築野さんは、俺を見ているようで……見ていない。多分見ているのは俺の背後……窓の外だ。


「……そうだね、楽しかった」


「大変だし、忙しかったけど。それ以上にみんなと……白鳥と一緒に、できてよかった」


「……俺もだよ」


「……ここに呼んだのは、告白の返事?」


 本題に入ったのも、築野さんからだった。

 やっぱり……気づいていたのか。


「うん」


「すぐに返事はいらないって、言ったのに」


「そういうわけにもいかないよ。わりと時間も経っちゃってるし。

 ……待たせちゃった気はする」


「……白鳥はそういうやつだよね」


 築野さんは俺に、好きだと伝えてくれた。

 きっと、すぐに返事が欲しかったはず。でも、彼女はそう言わなかった。


 ……それでも、結論を出さなくてはいけない。それが……築野さんに対する、俺の誠意だ。


「……築野さん、あの時告白してくれてありがとう。正直、誰かに告白されるなんて、考えたこともなかった。……すごく嬉しかったんだ」


「うん」


「……でも、ごめんなさい。俺には好きな人が居ます。だから、あなたの気持ちには答えられません」


「……うん」


 誠心誠意、告白してくれたことに対するお礼と謝罪を口にし、頭を下げる。

 ……俺の答えを受け、続けて「知ってた」と口にする彼女の顔を見上げると……


 ……その目に涙をためて、笑っていた。


「……」


 正直、築野さんからの告白はめちゃくちゃドキドキした。気持ちが揺らぐことだってあった。

 だが……最終的に出した結論。これが、そうだ。


「てか……告白したとき、白鳥が詩乃さんのことを好きだって知ってる、って言ったじゃん。なのに、好きな人がいる……なんて、改めて言われなくても、わかってるよ」


「……そう、なんだけど。……ケジメ的な? 俺から改めて、言っておこうと」


「……改めて、か」


 その瞳は潤んでいる。でも、その表情には笑顔が浮かんでいる。必死に、涙がこぼれないようにしているよう。

 強がっているようにも見える姿に、彼女の優しさを感じた。


 ……俺も、きちんと……伝えなければいけない。


「……うん。俺は……詩乃さんが好きだ」


「……知ってる」


 自分から、誰かに話すのは……初めてだ。


「ずっと前から、好きだった。気づいた時には、もう。

 ……この後、俺は詩乃さんに告白するつもりだ」


「……そっか。

 ……あーあ、それじゃあ私は、前座でフラれたってわけだ」


 築野さんは、天井を見上げて……壁際に、寄りかかる。


「! そ、それは違うよ! それは……」


「ふふっ……わかってる。ケジメ、なんでしょ?」


 からかうように、築野さんは笑う。


 とはいえ、言い方が違うだけで、似たような意味なのかもしれない。ケジメなんて、かっこいい言葉を使っているけど。

 それでも、半端な気持ちで答えを出したわけではない。


「うん。……築野さんは、勇気を持って告白してくれた。だから、俺も勇気を出さなきゃって……そう思った。そうしないと詩乃さんにも、築野さんにも失礼だから」


「……うん。……もし、詩乃さんにフラれても、付き合ってあげないからね。私、そこまで軽い女じゃないから。自分のことを好きな保険(ひと)がいる、なんて考えは持たないでね」


「も、持ってないよそんな考え! ……想いが届かなかったからって、築野さんの気持ちに甘えることはしないよ」


「……そうだね、そういうやつだよね」


 もしもこの後フラれて……築野さんから「じゃあ私と付き合おうよ」と言ってきたら……きっと、俺は応えない。

 応えてしまえば、それこそ築野さんに失礼だ。


 そして、築野さんはそんなことを言わないだろうことも、わかっている。


「じゃあ、さっさと愛しの詩乃さんの所に行っちゃいなー? 待たせたら悪いよ」


 築野さんは、俺に背を向ける。

 彼女がどんな顔をしているのか、わからない。見てやろうとも思わない。


 でも、声色はいつものままで。気丈な彼女らしいと、思えた。

 正直、時間までこの部屋に残ることはできる。


 ……残って、どうするんだ。自分がフッた相手を、慰めでもするつもりか?


「……そうする。俺は行くよ。築野さんは……」


「……もう少し、ここにいようかな」


「そっか。……じゃあ……」


 出口に向けて、足を進める。

 そして、扉に手をかけたところで……「白鳥」と声がかかった。


「頑張ってね」


「……ありがとう」


 彼女からの精一杯のエールを受けて……俺は、扉を開いた。

 いろんな意味のこもった「ありがとう」を伝えて、教室を出た。

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