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隣のOLが、俺の部屋で宅飲みしている  作者: 白い彗星
第五章 文化祭と、告白の答え

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第43話 私にできることなら、なんでもするから



 嘘みたいな、目の前の光景……しかしそれは、間違いなく現実だ。


「……詩乃、さん……?」


 教室で迎えてくれたのは……間違いなく、詩乃さんだ。

 本来なら、メイド服に身を包んだクラスメイトの女子のはずだ。なのに、なぜ?


 なぜ詩乃さんは……執事姿で、姿勢正しく立っているんだ?


(なにが起きているんだ……?)


 普段見ない姿。肩まで伸ばした茶髪を、いつもより低い位置で結んでいる。

 美人寄りな顔立ちの彼女は、ぱっと見、美青年に見えなくもない。


 背も高い方で、全体的にスラッとした佇まい。キリッとした表情はとても凛々しい。

 男装姿……正直、めちゃくちゃ、アリ……


「キャー、すごくかっこいい!」


「めちゃくちゃ似合ってます!」


「あぁん、私にもご奉仕してぇ!」


 クラスメイトの女子、女性のお客さんは詩乃さんに見惚れている。

 メイド服姿を見られなかったのは残念だが……他の奴らに見られることを思えば、逆に良かったのかも。

 

 ふと、詩乃さんは手を伸ばして……


「席にご案内しますね、ご主人様」


 俺の手を取る。


 ななな……なんだこれ!? 俺の心臓を破裂させるつもりか!?

 というか、馴染み過ぎじゃないか? 適応力すごい。


 そしてされるがまま、席へ案内される。

 さっきからずっと見惚れてしまってるな……


「なあ、花野咲さんだっけ。すげー美人じゃん」


「お、俺後で連絡先聞こうかな」


 周りの会話……なんか、もやもやする。俺ってこんな独占欲強かったか?


 ところで、どうしてこんなことに……


「ん?」


 その時、ポケットの中で携帯が震えた。

 届いたメッセージを確認、と。


『詩乃さんにお手伝い頼んじゃった、びっくりさせてごめんっ』


 それは、築野さんからのものだった。忙しいから呼び戻された彼女だったが……そこで、詩乃さんと会ったらしい。

 そこでのやり取りを、簡単に教えてくれる。



『私にできることなら、なんでもするから』


『ん、なんでも?』



 ……忙しさに目が回っている所に、詩乃さんを発見。そして、お願いがあると頭を下げた。

 対して「なんでもする」と詩乃さんが答えてしまったのが、あれよあれよとこうなった……と。


 詩乃さんは部外者だが、許可証が首にかけられている。

 学外の人でも、本人の許可も得ているなら手伝うのは構わない……その証明だ。


 ……本人たちが納得してるなら、俺から口を出すことではないな。


「それでは、失礼します」


 メニューを渡し、詩乃さんは行ってしまった。

 どうやら大人気の彼女は、右へ左へと接客に明け暮れていた。


 男女問わず人気で、しかもお客さんにまぶしい笑顔を向けてくれるもんだから、みんな夢中だ。


「すっかりなじんでるなぁ」


「……正直、人が足りないところを埋め合わせしてくれただけでも大助かりだったんだけど……予想以上の動きっぷりで、驚いてる」


 近くの築野さんが、反応する。

 以前接客のバイトをしていたと言っていた気もするが、その影響だろうか。


「あと多分だけど、クラスの中で一番人気が高いかも」


「ははは……」


 高校の文化祭で、助っ人社会人が一番人気取っちゃった件について。


 ただでさえ美青年風の執事なんだ。それだけでも女性客の人気は固いし、声の様子から女性だと判断できるから男性客にも注目されている。

 容姿が良く、動きもいい。笑顔も素敵となれば、そりゃ人気が出る。


「ああいうの、大人の余裕って言うのかな。私たちじゃ出せないもの、あの色気は」


 高校生は、バイトなどで経験があったとしてもまだまだ不慣れな部分は多い。

 だが詩乃さんは、俺たちより経験もあるからか、落ち着いた様子で対応にあたっている。


 余裕がある……どころか、大人の色気を醸し出している。


「かもね、みんな夢中で見てるし。ってのは言いすぎかな」


「白鳥も詩乃さんの色気にやられて、夢中になっちゃったわけね」


「……コメントに困る」


 なんかチクチクしたものを築野さんから感じる。え、なに!? 俺なにかした!?


 その後は結局、俺が詩乃さんに接客してもらうことはなかった。もう一度くらい話したかったのだが、大忙しでそれどころじゃなかったのだ。

 そして休憩が終わり、戻ったときには……詩乃さんはいなくなっていた。


 あくまで助っ人、人手が足りれば必要がなくなる。

 だけど……どうせなら、一緒に働いてみたかったな。


「さっきの助っ人美人、めちゃくちゃかっこよかったよな」


「あぁ。連絡先聞いとけばよかったよ」


「すごい仕事だったし、できる女って感じだったよね」


「もっといてほしかったー」


 男女共に、評判は上々だ。

 というか、執事風イケメンに心を奪われた女子も少なくないみたいだ。


 詩乃さんがみんなに褒められている。酒が入るとアレだが、普段の彼女はすごいのだ。


「ふふん」


「白鳥、ちょっと」


 ちょっと誇らしくなっていたところで、手招きする築野さんの下へ近寄っていく。


「どうかした?」


「詩乃さんから伝言。『頑張って』って」


「お、おぉ……」


 伝えられたのは、応援だった。それを聞いた瞬間、胸の奥が熱くなる。

 直接伝える時間もなかったし、携帯にメッセージ残しても見られない。だから、わざわざ伝言を頼んだ。


「……幸せそうな顔だね」


「えっ、そ、そう?」


 指摘され、思わず自分の顔を触る。俺そんなにわかりやすい?

 ジト目を向けられてしまう。呆れられてるかな。


 ……そうだ、改めて伝えておかないとな。


「築野さん。文化祭が終わったら、例の空き教室に……」


「……うん、忘れてないよ。さ、仕事仕事」


 意外にもあっさりした受け答えで、築野さんは背を向けて行ってしまう。

 なんだろうな、少しだけど……距離感が、あるような?


 まさか、俺がなにを言うつもりなのか気づいて……ないとは、言えないかもしれない。

 なんせ、文化祭後にわざわざ呼び出すんだから。


「……よしっ」


 いろいろ考えるのは後だ。今はとにかく、仕事に集中!

 休憩してきた分、張り切ってやろう。残りも少ない、せっかくの文化祭を最後まで楽しもう。


「おかえりなさいませ!」

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