第40話 近いうちに己の人生を左右する出来事に直面するでしょう
「……あの、大丈夫ですか?」
「……うん、もう平気。ごめんね変なところ見せて」
お化け屋敷で腰が抜けてしまった詩乃さんをおぶり、出口へ。
クリアはしたが、しばらく動けそうになかったので近くのベンチに座ることに。
……背中越しに感じる温もりや柔らかさ、無茶苦茶良かった。
まあ詩乃さんは、俺に不甲斐ない姿を見せたと落ち込んでいるが。
「そんなに落ち込むことないですよ、誰にでも苦手なものはありますから」
「うん、ありがとう」
もう、取り繕えないくらいに弱っているな。
結構深刻だ。
とはいえ、このままだとお互い、一日目にして文化祭が不完全燃焼で終わってしまう。
なにか、面白そうなものはないか……
「占いの館、やってまーす」
「お」
そこに、宣伝をしている生徒が通る。
占い、か……面白そうだ。
詩乃さんの体力が戻るのを待ち、検討クラスへと向かう。
「占いの館へ、ようこそこそー」
上級生の教室、中には紫色のテント。四、五人は入れる程度のスペースの中心に、机が置いてある。
赤や青と言った、複数の蛍光ライトが立てられて……不思議な色を醸し出していた。
少し物怖じしている俺たちに、座る人物が手を振り口を開いた。
「今回は二人のお客さんだねだねー。しかも男女のカップル、いいねいいねー」
彼女(声から判断)は、黒いフードを被り顔半分を隠している。その上制服の上から白衣を羽織っているため、顔も体型もわからない。
白衣はぶかぶかで、袖から手が出ていない。
「あの、私たち、別にカップルでは……」
そんなことよりも、狼狽する詩乃さんがかわいい。
からかい混じりの言葉を、真面目に受け取ってしまうなんて。
「そうなの? でもでも、文化祭を二人で回ってるんでしょ?
それってデートやん? じゃあ付き合ってるやん?」
「ち、違いますっ」
……高校生にからかわれている詩乃さん。これはこれでありだ。
「ささ、座って座って。ばちばち占っちゃうよー」
少し不安な気持ちになるが、せっかく来たんだ。
俺たちは、机を挟んで彼女と対面するように座る。
彼女の手前には、野球ボールより大きめの透明な水晶が置いてある。
占いは、彼女が適当に占うか……こちらから要望も出せるらしい。
「……」
俺が占ってほしいこと……ズバリ、詩乃さんとの相性だ。
相性が悪かったら告白はしない、なんてことはないが。知りたい。
とはいえ、本人が隣に居るのに、聞けない。
「いざ占うとなると、悩むね」
そりゃ、お化け屋敷の空気を払しょくするために来たんだ。
占いたいことなんて、決めてないよな。
「なら、ウチが勝手に占っちゃうけど?」
「えぇ、お願い」
「ではではー、占っちゃいますよー」
彼女は両手を水晶にかざす。
もっとも、服の袖に隠れている手だけど。
そして、次には水晶が青白く光り出す。
「おぉ」
どんな仕掛けなんだろう。まるで水晶自体が光っているみたい。
「むむむ……見えます、見えます……」
まるでハンドなパワーのように、ぶつぶつ言っている。
それから数秒後、彼女は「見えました」と言う。
「あなたは、近いうちに己の人生を左右する出来事に直面するでしょう」
「じ、人生?」
そう話す彼女は、ちらっと俺を見た……ような気がする。
その視線に(見えないけど)ドキッとした。
おいおい、それってまさか……
「い、いつ頃かはわからないんですか?」
「うーん……明日の夕方から夜にかけて……だいたいそんな感じ」
「!?」
ほぼほぼ確定じゃねえか!
お、俺が後夜祭で詩乃さんに告白しようとしてること言ってるだろこれ!
「明日!? ち、近い……なにがあるの? 具体的にはわからないんですか?」
「そこまではさすがに、ウチ……いやわしの口からは言えぬ。ほほほ」
彼女の口調もちょっと変わってる! 占いのババアの設定!?
「なんだか占いって言うより、予知みたいな感じですね?」
「まあ、占いも予知も似たようなものだから」
違うと思う。
そして、彼女は次に俺を見た。
「さて、次はお主の番。占ってほしいことはあるかの?」
「……将来、お金持ちになれないか占ってほしいです」
本当なら詩乃さんとの相性を占ってもらいたい。
だが、それは無理。明日の告白に繋がりそうなことも。
とはいえ、なんだこの内容! もっとなんかあったろ!
「なるほど、わかります。最近は物価や食費や税の引き上げやらで、なにかにつけて金、金、金。将来も不安と」
「え? あぁ……まぁ」
なんか納得してくれた。ラッキー。
それから彼女は俺に手を差し出した。袖に隠れていた小さな手が、あらわになる。
「手相を見るから手を貸せ。貸すのじゃ」
口調が安定しないなぁ。
指示されるまま、右手を差し出した。
手のひらを広げ、彼女の両手が触れる。
「……今回は水晶使わないんですね?」
「え? あー……まあ、お金関係などは手相の方がいいんだ。別に、男の子の手をにぎにぎしたいとかではないからな」
そう言いながら、彼女の手は俺の手を撫でまわした。
……手相と関係あるのか。
しばらくして、俺の手は解放された。
「あの、結果は……」
「あぁ……そこまで心配せんでもいい。堅実に生きていれば、自然とお金も入ってくることでしょう」
なんか投げやりじゃない!? もしかして飽きた!?
「それよりも、私的には生命線のほうが……」
「え?」
「あ、ちょっと言ってみたかっただけ」
なんだこいつ!
その後、妙なもやもやを抱えたまま館を後にした。
外に出ると、結構な人が並んでいた。人気なのだろう。
俺の方は不完全燃焼だけど……ま、詩乃さんはお化け屋敷の出来事切り替えられたみたいだし、よかった。
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