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隣のOLが、俺の部屋で宅飲みしている  作者: 白い彗星
第五章 文化祭と、告白の答え

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第38話 執事服だ。かっこいいー



 ――――――



「いよいよ文化祭よ。みんな、気合い入れて行くわよ!」


 教卓の前に立つ築野さんは、張り切った様子で士気を上げていた。

 文化祭実行委員かつ接客係のリーダー。そんな彼女と女子数人は、メイド服を着ている。


「ふんす!」


 黒を基調とした服に、白いエプロンやカチューシャ。ひらひらした膝下のスカート……野郎共のテンションが異様に高い理由が、これだ。


 女子は人前でメイド服を着ることに葛藤もあったようだが、いざこうして着てみると……楽しさのほうが上回るのだろう。


「な、俺結構イケてね?」


「どうよバッチシだろ」


 男子は、俺含め執事服だ。白いシャツに黒いジャケットを羽織り、首には蝶ネクタイ。

 一人だと恥ずかしいが、他にも居るおかげだろう。案外平気だ。


 ウチの文化祭は、週末二日にかけて行われる。

 そして、二日目……後夜祭のキャンプファイヤーが行われる時間帯に、俺は詩乃さんに告白するつもりだ。


 そして、その前に築野さんへの返事もする。

 自分で決めたことだが、緊張して仕方ない。


「ファイトー!」


「「「おー!」」」


 各々盛り上がる中、文化祭がスタートした。



 ――――――



「おかえりなさいませ、ご主人様」


「いってらっしゃいませ、お嬢様」


 さて、客足もちらほら。


 築野さんの提案で、男性客は「ご主人様」、女性客は「お嬢様」と呼ぶことに。

 来店時は「おかえりなさい」、帰宅時は「いってらっしゃいませ」とパターンも変えている。

 せっかくなら、とことんなりきろうというもの。


「いい感じじゃん」


 普段教室内は、机が列ごと並べられているが、配置を変えて二人用、四人用の席を作っている。


 料理も、高評価をいただいている。

 まあ、一番目を引くのは……


「お嬢様方、こちらへどうぞ」


 女性客二人を案内している、空光だ。

 接客スキル自体は、築野さんには遠く及ばない。だが、持ち前の明るさでカバーしている。

 客だって、学校の文化祭に完璧な接客なんて求めていない。


 特に女性客への接客がうまい空光を褒める声は、聞こえるのだ。

 ……恋愛アドバイスといい、女性への対応は思いのほか良い。なんで彼女いないんだろう。


「! おかえりなさいませ、お嬢さ……」


 負けてられない。

 気合いを入れ、来店したお客様に元気よく声をかける……


 が、その人物の顔を見て言葉が止まった。


「っ、ぷ、ふふ……は、はい。お嬢様が、帰りましたよ……」


「や、やっほー」


 口と腹に手を当て、笑いを堪えている姉ちゃんがそこにいた。

 ……いや耐えられてないなこれ。


 そして、後ろにいる詩乃さん。水色のスウェットトップスに、白のタイトスカートを着用。髪は結ばずストレートに下ろしている。

 いつもより大人っぽい雰囲気だ。


 それにもう一人、女性が。黒髪をセミロングにしていて、赤縁(あかぶち)のメガネをかけている。紺色のデニムワンピースを着用。

 詩乃さんの友達……かな?


「……お席の方、ご案内しますね」


「ぶっふ! ……は、はひ、お願いしま……ぐふふっ」


 執事状態がそんなに似合いませんかね。丁寧口調がそんなにおかしいですかね。

 落ち着け俺。役目を果たせ。


 席に案内し、メニューを渡す。


「ふぅん、なかなか様になってるじゃ……ぶふほ!」


「からかい目的なら帰ってくれませんかねぇ」


「いやそんなつもりないって。でもさ、おかしくって。

 甲斐だって、アタシがメイド服着て接客してたら爆笑するでしょ」


「……」


「なんでそんな渋い顔になるのよ」


 あぁー、最悪だ。姉のメイド服姿とか、嫌なもん想像した。

 詩乃さんなら大歓迎なのに。


 かといって、妄想するのはイケない気分が……


「! お姉ちゃん?」


「え?」


 そこに、副実行委員で接客もしている三田さんが、驚いたように近寄ってきた。お姉ちゃん?


「あ、陽ちゃん」


 赤縁メガネの女性は、三田さんを見て親しげに手を振る。

 この二人、姉妹なのか。


 以前詩乃さんに聞いたな。同僚に三田って人が居て、彼女には高校生の妹がいると。同じ名字だと盛り上がったものだが……

 世間は狭いな。


「似合ってるじゃない」


「は、恥ずかしいから」


 三田さんとは最近よく話すようになったが、実に新鮮な表情だ。


「甲斐くん執事服だ。かっこいいー」


「……ご注文は、なにになさいますか……お、お嬢様」


 恥ずかしさを押し殺せ。

 ……けど、他のお客さんと詩乃さん相手じゃ全然違う。


「このオムライスケチャップサービスつきって、まさか……」


「ケチャップをかけてあげるだけだが?」


 割り込んできた姉ちゃんが、なぜか期待の眼差しを向ける。

 だが残念、メイド喫茶みたいに「萌え萌えきゅん」はやらない。


「ちぇっ。甲斐にやってほしかったのに」


「なんでだよ!」


 結局三人は、それぞれデザート類を注文。

 注文を受けた俺は、調理担当のスペースへと歩いていく。

 三田さんも隣に並ぶ。


「ねえ、あの人白鳥のお姉さん? もう一人は……」


「……姉ちゃんの友達で、俺も仲良くさせてもらってる人だよ」


「そっか。不思議な偶然だね」


 話が弾む。

 身内の繋がりで、クラスメイトと不思議な縁ができるとはな。


 注文を伝え終えると、服の袖を引っ張られた。


「むー」


 そこにいた築野さんはなぜか頬を膨らませて、俺を睨みつけていた。


「三田ちゃんと、ずいぶん仲が良さそうだね」


 なぜだろう、少しだけ不機嫌に見える。

 もしや、変な誤解を?


「身内が知り合いだったのがわかったから、その関係で話してただけ。

 それより、明日時間を作って欲しいんだけど……後夜祭の前に、いいかな?」


「……わかった……空けておくね。

 白鳥。この後休憩だよね。本当なら文化祭、一緒に回りたいんだけど……」


「築野ちゃーん、悪いけどこっち手伝ってー!」


「……」


 忙しい築野さんは、とても悲しそうな顔をして行ってしまった。まさか誘ってくれるつもりだったのか。


 その後、休憩の時間になった俺は着替え、教室の外に出る。そして携帯を開く。


「休憩になりました、と」


 メッセージを送った相手は、詩乃さんだ。

 実は一緒に回ろうと、勇気を出して誘っていたのだ。


 それから、何度かやり取りをして……校門前にいる彼女を迎えに行く。

 ちなみに姉ちゃんは先に帰ったらしい。三田さんのお姉さんは、妹と一緒に回るようだ。


「……お、いた」


 駆け足で向かうと、風になびく茶髪が美しく映る女性が立っていた。

 賑やかな校内を眺めている姿は、一枚の絵画のように美しかった。


「お待たせしました」


「ううん、眺めてるの楽しかったから。

 ……着替えたんだ?」


「さすがにあれは恥ずいです」


 くすくす、と楽しそうに笑う姿に、胸の奥が温かくなる。

 ともあれ……こっから文化祭巡りスタートだ!

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