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隣のOLが、俺の部屋で宅飲みしている  作者: 白い彗星
第五章 文化祭と、告白の答え

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第37話 踏ん切りがついた



 次の登校日。俺と築野さんは教卓の前に立っていた。

 なぜと言われれば、それは文化祭実行委員だからだ。


 実行委員は、立候補か推薦で決まる。築野さんは自ら立候補した、すごいね。

 俺はと言うと……



『白鳥くんが良いと思います!』



 ……空光が推薦したのだ。あの野郎。


 実行委員は、男女一ずつ。早々に立候補者が出た女子はもう決まっていて……

 男子は奴のせいで、俺に決定した。もちろん立候補者がいれば話は変わっただろうが、異論が出ることもなく。


「よっ、白鳥実行委員! かっこいい!」


 やかましい空光を、せめてもの仕返しに副実行委員に推薦してやろうと思った。だが、クラスメイトが全力で止めた。

 曰く、こいつに権力を持たせてはたいけない。気持ちはわかる。


「……これからいろいろと決めていきます」


 ともかく、なってしまったものは仕方ない。


 俺と築野さん。そして副委員として、男子有沢 裕(ありざわ ゆう)と女子三田 陽(みた よう)

 築野さんがメイド喫茶で接客した話を元に、クラスでの形も決めていく。


 話し合いにもみんな乗り気で、築野さんがリーダーシップを発揮したおかげで、話はスムーズに決まる。


「ふぅー」


「お疲れ、白鳥」


「! 築野さんこそ、お疲れ様」


 肩を叩かれ、振り向いた先の築野さんはにこりと笑った。

 こうして、以前と変わらず話しかけてくれるのは……ありがたいよな。


 俺なんかに告白してくれて。返事はすぐにはいらないとまで言ってくれて。

 自分のことでいっぱいいっぱいなのに、俺のことまで気にしてくれて。


 ……けれど、このままというのは、築野さんに……そして詩乃さんにも、不誠実だ。


「おーい浪、有沢が呼んでんぞ」


「わかった。じゃ」


 こちらに来る空光と入れ替わるように、築野さんは向こうに行ってしまう。

 その姿を、自然と目で追う。


 ……詩乃さん一筋と言いながら、築野さんの告白には確かに揺れた。

 初めての感情に、戸惑っている。


「お疲れ、実行委員」


「殴るぞ」


「怒んなって。どうしても嫌ってわけでもないんだろ?

 ……それに、あいつのためにも良いと思ったんだよ」


「?」


 確かに、本気で嫌なら実行委員は断っただろう。

 推薦で決まるとはいえ、強制ではないんだし。なんだかんだ俺も、楽しんでいる。


 ただ、空光には他にも思惑がありそうで。


「なんだよ、言いたいことがあるのか?」


「いんや、なんでも。

 ……言いたいこと、か。そうだな……お前、なんか悩みがあるだろ」


 少なからず動揺してしまう。

 それを見逃さない空光は、一歩詰め寄る。


「そうだなぁ、当ててやろう。

 ……ズバリ! 女の子に告白されたが想い人がいる手前、受け入れられず……相手を傷つけない方法を模索している!」


「……!?」


 能天気だと思っていた男の鋭い指摘は、俺の心を充分に揺さぶった。


 なんでこいつ、こんなに的確なんだ!? まるで見てきたように!

 あの現場に、居なかったよな!?


「お前、なにを……」


「へへー、俺こう見えても恋愛マスターだからな。これまで、お悩み相談を星の数ほど受けてきたんだ。お前がなにに悩んでるかくらい、わかるさ」


 親指を立て、どや顔をする空光。

 信じられないが……これだけ的確に当てられれば、無視するわけにもいかない。


「俺、お前のこと誤解してたわ」


「なにを誤解してたのかは聞かずにおくが……お前に想い人がいるってのは、ぶっちゃけわかりやすいぜ」


 ……俺、やっぱりわかりやすいのか。


 そこまでバレてしまっているなら……情けない話だが、仕方ない。


「恋愛マスター、俺どうしたらいいかな」


「お、やけに素直じゃん」


 正直、こんなこと誰にも相談できない……でも、初めてのことすぎて一人じゃ混乱してしまう。

 無論、名前は出さないけど……今の状況、否定はできない。


「そうさなぁ。好意を向けられてるってのは、気分がいいもんさ。でもお前は、ちゃんと答えを出そうとしてる。そこは立派だと思う。

 けどな、告白を断るなら……どんだけ考えたって、相手を傷つけないなんてありえないぜ。そんで、断られて傷つくことだって、相手は承知の上だろ」


 これまで見たことがない真面目な表情の空光に、俺も真剣に話を聞く。


「ただ……断るにしてもだ。お前に好きな人がいたように、相手もお前のことが好きな子なんだ。

 その想いを断るなら……お前だって、行動を起こさないとな。告白は断ります、でも現状維持は続けます……じゃ、かっこ悪いだろ」


 ……築野さんは、今の関係性が壊れるとわかって告白してくれた。

 なのに詩乃さんが好きだから、という理由だけでフるのは……俺だって、納得しない。


 ……やるべきことが、わかった気がする。


「その顔は、なんか吹っ切れたみたいだな」


「あぁ。ありがとな」


「また悩みがあれば、いつでも相談に乗るぜ。

 ……まあ、相談に乗るばかりで彼女出来たことはないんだけどな……」


 ……そう語る顔は、とても悲しそうだった。



 ――――――



 決めた。俺は、この文化祭で詩乃さんに告白する。


 文化祭前は……その段階で断られたら、情けない話その後集中できる自信がない。

 だから、せめて一区切りついた頃合いに……と考えた。



『好き……白鳥のこと、好きって……さっき、そう言ったの』



 築野さんの気持ちに応えるために、俺もやるべきことをやる。

 ただ断るだけじゃだめだ、行動した彼女に誠意を持てるように……覚悟を示せ。


「……おかげで、踏ん切りがついた」


 もしも築野さんの告白がなければ、俺は答えを先延ばしにしていた。

 幼馴染で、姉ちゃんの友達で。今は部屋が隣で、一緒にご飯を食べて。この関係に、甘えてしまっていた。


 ケジメをつける。

 告白して詩乃さんにフラれたからといって、築野さんの告白を受け入れる最低なことはしない。


「ふぅ」


 まだ日はあると言うのに、考えただけで心臓が張り裂けそうになる。


 詩乃さんとの関係は、今まで通りではいられないかもしれない。それでも。

 なにかを変えようとする覚悟がないと、関係性はいつまで経っても変わらない、か。



 ……そして、ついに文化祭当日がやって来る。

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