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隣のOLが、俺の部屋で宅飲みしている  作者: 白い彗星
第五章 文化祭と、告白の答え

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第35話 お料理がおいしくなるための魔法をかけていきますね!



 ……結局、昨夜は二人とも泊まった。というか酔いつぶれた。

 そしてベッドを占領したため、俺はソファーで寝た。


 三人が起きて数十分後。


「今日はアタシに付き合いなさい!」


 ……藪から棒になにを言い出すんだこの姉は。


 なぜかテンションが高い。昨夜あんなに飲んでおいて、朝からなぜこんなに騒がしいんだ。


「なんで休日にまで、姉ちゃんに付き合わないといけないんだよ」


「ご、ごめんね甲斐くん。朝ご飯までごちそうになっちゃって」


 図々しい姉ちゃんに比べて、詩乃さんはなんと慎み深いのだろうか。


 ……目玉焼きにインスタントの味噌汁、それにご飯を食べながら、話は進む。


「いいんですよ。気にしないでください」


「ちょっと、詩乃に甘くない? アタシも甘やかせよー」


「そんなつもりはないし、甘やかしてほしいならそれなりの対応をしろ」


「うーっ、ハラスメントだー。あねハラだー!」


 わけのわからないことを叫びながらも、味噌汁を飲んでいく。

 まったく……朝くらい落ち着いてほしいもんだ。ハラスメントと言うなら、俺こそ姉ちゃんにハラスメント受けてるよ。


「だいたい、付き合えってなにに?」


 もしも買い物なら、断る。どうせ荷物持ちがオチだからな。


「せっかくあんたのためにアタシの貴重な休日を使ってやろうってのに、もっと感謝の意を示しなさいよ」


「はぁ?」


 俺のため? どういうことだ。

 意図が分からず、言葉を待つ。


「あんたのクラスの喫茶店……それを成功させるために、調査しに行くのよ!」


「……調査?」


 姉ちゃんはにっしししと笑う。

 その様子を傍目に、詩乃さんはご飯の上に目玉焼きを乗せ、卵を割って目を輝かせていた。



 ――――――



「お帰りなさいませ、ご主人様! お嬢様!」


「……」


 姉ちゃんの言葉に乗せられ、メイド喫茶にやって来た。


「こちらへどうぞ」


 ……いや、おかしいだろ! 確かに出し物を考えれば、メイド喫茶はわからんでもない。

 だが、喫茶店の内容を姉ちゃんには話していない。パンフレットにも書いてなかったはずだ。


 ただ『精一杯おもてなしします』と、サプライズを含んだ一文は付け加えられていたけど。


「やー、かわいい子がいっぱいだわぁ」


 勘が鋭いにも程がないか?

 今俺は非情に困惑している……とりあえず、案内された席に座る。


 猫耳を付けたメイドさんが近づいてくる。


「お嬢様、今日もお帰りくださったのですね。嬉しいにゃん!」


「うへへ。ネネちゃんに会いたくてまた帰ってきちゃったよー」


「もう、お嬢様ったらー。今日もいっぱいサービスするにゃん!」


 ……なんだこのやり取り。俺のためとか言っといて、自分の趣味が多分に入ってるだろ!

 しかも……この姉、何回も通ってやがるな!


 猫耳メイドさんは、手をひらひらと振り去っていく。

 姉がメイド喫茶通いをしてだらしない表情を浮かべている現実に、俺の心は早くも砕けそうだ。


「あはは……でも、接客という点では学べることがあるかも」


 詩乃さんのフォローがまぶしい。

 いや、着いてきてくれてよかった……姉と二人でメイド喫茶とか、なんの罰ゲームだ。


 ……ここが喫茶店であることには変わりない。そして働いているのは、接客のプロだ。

 ある意味、普通の喫茶店よりも勉強になるかも。


「あ、すいまっせーん!」


「はい、お嬢様!」


 熊耳メイドさんがやってくる。

 ……慣れているだけあって、全く気後れしていない。


「ほらほら、二人も選びな!」


「……この、『萌え萌えオムライス』って言うのは?」


「はい! こちら、愛情を込めて作ったオムライスにぃー、魔法をかけてさらに美味しくしたものですべあぁー」


 ……くっ、帰りてぇ……!

 いや、メイドさんはかわいいんだよ。制服も、ひらひらのスカートやカチューシャが、男心をくすぐる。


 でも……デレデレの姉ちゃんがいる事実に、耐えられそうにない! 泣きたい!


「甲斐は初めてなんだし、これオススメだよ。アタシも初めてのときは、メイドさんに魔法をかけてもらってでゅふふふ」


「はい、それでいいです」


 ヤバいな、着てまだ数分なのに心の疲弊が半端ない。詩乃さん助けて!


 その後、注文を受けたメイドさんは「それでは少々お待ち下さいべあっ」と厨房へ戻る。

 慣れた仕草、明るい笑顔……これこそ接客に求められるものなんだろう。


 それに、猫耳さんは「にゃん」、熊耳さんは「べあ」を語尾に付けるなど、徹底している。


「そんな顔してどうした、トイレでも我慢してんのか?

 男子高校生……いや男なら誰でも、メイドが好きでしょ? テンション上がんない?」


 メイド好きかどうかはさておき、俺がテンションはあんたのせいだ。

 あと詩乃さんの前で変なこと言うな!


「そうなんだ……」


「い、今のは戯言と言うか、一般的な意見であって……」


「いやー、間違いないと思うよ。以前彼氏の頼みでメイドコスしたんだけどさー、これが盛り上がるのなんのって」


「ちょっと黙って!?」


 くっそ、余計なこと言うなよ!

 男がメイド好きなのは否定しないにしても、憧れの人の前で言われるのは話が変わってくる。あと姉の『そういう話』聞きたくないわ!


 どうしよう……『女の子にご奉仕されたいとか思ってるんだ、へぇ……なんか、きっしょいね』とか思われたら!

 ※精神がゴリゴリやられてるので思考が短絡的になっています。


「じゃあ嫌い? 想像して……詩乃が、メイド服着て出迎えてくれるところ」


「!」


 つぶやく姉ちゃんの言葉に、俺は顔が一気に熱くなるのを感じた。

 耳に吐息がかかるくすぐったさとか、そんなのはどうでもよくて。


 ……詩乃さんが、メイドに……俺の、メイドに……



 ~~~


『おかえりなさいませ、ご主人様♪』


 ~~~



「げはっ」


「!?」


 やばい……衝撃が強すぎる。

 ぼ、煩悩退散……!


 ……そのうちに、注文した料理が運ばれてくる。

 ふわふわの卵に包まれた、オムライス。今からケチャップをかけるようだ。


 そこに、メイドさんの明るい声が届く。


「ご注文ありがとうね、ご主人様にお嬢様! これからナミが、お料理がおいしくなるための魔法をかけていきますね!」


「あ、お願いし……」


 その言葉に、顔を上げる。……瞬間、時が止まったような気がした。


 もちろん、実際に時間が止まってはいない。俺がそう感じてしまった、比喩だ。

 だがそれは、きっと彼女も同じだろう。


「……築野、さん?」


 そこに居た、メイド服に身を包んだナミさん……いや築野 浪さんは、笑顔のまま固まっていた。

ここまで読んでくれて、ありがとうございます!

ぜひ応援などくださると、とても嬉しいです!

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