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隣のOLが、俺の部屋で宅飲みしている  作者: 白い彗星
第四章 夏祭りと、秘めたる想い

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第26話 感謝と恋心を勘違いしていたのかもしれない



 ―――浪side



 ……夏祭り当日。私はバイト先で白鳥を夏祭りに誘ったけど、断られてしまった。


 まあ、それも当然だ。誘うにしたって、いつまでもうじうじして、当日までなにも言えなかった私が悪いんだしね。

 学校がなくても、バイト先で会える。だから誘うチャンスは、いくらでもあったのに……!


 すでに予定の入っていた白鳥は、お姉さん"たち"と一緒に行く……らしい。

 もしかしたら、「一緒に行く?」と誘ってもらえたのかもしれないのに。私はすぐに、自分から引いてしまった。


「はぁあ……」


 お姉さん"たち"ってことは、多分……海でも一緒だった、花野咲 詩乃(はなのさき しの)さんのことだろう。

 きれいな名前だったし、なにより白鳥と仲良さそうにしていたから覚えてる。


 社会人の、美人OLの、めっちゃえろ……スタイルのいい女性だ。

 あんな人と、一緒なんて。年頃の男子高校生を、年上お姉さんの近くに置いて大丈夫なの!?



 〜〜〜


『このリンゴ飴、おいしいですね詩乃さん』


『うふふ、そうね。でも甲斐くんのほうが、もっとおいしそう』


『詩乃さん……』


 〜〜〜


 ……なんてことになったり!?


「うわぁああ! ダメだよそんなの!」


「姉ちゃんどうした?」


「! あ、な、なんでもなぁい」


 はっとして、妄想を振り切る。


 帰宅した私は、チビたちの着付けをしていた。

 夏祭りだけど、元々宇宙と楓にせがまれて、一緒に行く予定だったのだ。



『いーきーたーいー! 夏祭りいーきーたーい!!』


『いくのー! 三人でいっしょにいくのー!』



 しかも、浴衣着たいとまで言い出して。

 ま、せっかく貰い物で浴衣があったし……せっかくのお祭りだし、おめかししてやろうという姉の心遣いもある。


 私自身は……


「おねえちゃんは、浴衣はきないの?」


「んー? 私はいいの」


 別に、特段着たいとも思わない。見せたい相手がいるならともかく。

 チビたちの面倒を見るだけだし……二人を監視するなら、浴衣だと動きにくいし。


 ……考えてみれば、チビたちも居る時点で白鳥と二人きり、っていうのは無理な話だった。

 ただ、一緒に行けなくても……会場が同じなら、どこかで会うなんてことも?


「……ないか」


 夏祭りには毎年行っているけど、結構な人が来る。たまたま知り合いに会う可能性は少ない。

 現に、クラスの友達と会ったこともない。


 だから、別におしゃれする必要はないか。外行きのノースリーブティシャツにデニムの短パン……

 外だし、一応それなり格好にはしておくけど。


「よし、完成」


 着付けが終わり、我ながら出来栄えに感心する。

 うん、かわいいかわいい。


 ……白鳥を誘えなかったのは残念だけど、同じ夏祭りという会場で楽しんでいる。同じ空間に居るってだけで、少しは嬉しくなっちゃう。

 って私、ずっと白鳥のこと考えてばかりだ。夏休みに誘おうとウロウロしていた時も、誘って断られてからも。


「……一人の男の子のことを、こんなに考えることがあるなんてね」


 そっと、呟く。


 私は白鳥のことが、好きだ。はじめは妹を助けてくれた感謝と、見ず知らずの人のために勇気を出せる彼の心に惹かれた。

 それはもしかしたら、感謝と恋心を勘違いしていたのかもしれない。


 でも、彼と再会してから……一緒に過ごした。一緒に話して、ご飯を食べて、笑い合って。

 あぁ、好きだなぁ……って、思い知ることができた。


 ……そう、白鳥のことを考えていた。そのせいだろうか。


「し、しし……白鳥……!?」


 弟妹にせがまれた金魚すくい……集中していたことに加え、この人混みの中。小さな声が聞こえるはずもなかった。

 だけど、確かに……聞こえたのだ。


 そして、振り返ったら……目が、合った。白鳥と。

 いつの間にかこんなにも野次馬が集まっていたことにも驚いたけど……白鳥が居ることにも。


 胸の奥が、熱くなる。それは、白鳥を見つけたからか……こんな場面を、見られてしまったからか。


「あー!」


「!」


 その時、隣から大きな声が聞こえた。

 とっさに首を動かすと、宇宙は私……ではなく、私の手元を見ていた。


 視線の先を追うと、さっきまで金魚をすくっていたやつ……確かポイって名前だ……が、破れてしまっていた。


「ぁ……」


 や、やっちゃった……白鳥の声が聞こえて、白鳥を見つけて……なんもかんも吹っ飛んで、その結果動揺して。

 もう片方の手には、すくった金魚を入れた器。結構な数の金魚が入っている。


 もう数としては充分だけど、どうせなら限界まで挑戦したかったな。


「ごめんね宇宙、失敗しちゃった」


 ふと屋台のおじさんを見ると、どこかほっとしたような表情をしていた。ていうかちょっと涙目だ。


 まあ、金魚すくいは終わってしまったけれど。私にとって、もはやどうでもいい。

 もっと気にかかることができてしまったのだから。


「お、お嬢ちゃん、残念だったね。でも、すごいすくったじゃないか」


 残念と言いながらも、ほっとした声色を隠せていない……そんなおじさんの言葉を右から左へ受け流す私の頭の中は、すでに別の感情で埋め尽くされていた。


 ……おしゃれもなんにもしてないこの服装で、白鳥に会ってしまうなんて……という、後悔で。

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