表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
隣のOLが、俺の部屋で宅飲みしている  作者: 白い彗星
第三章 夏の海と、海辺で揺らぐ距離

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
22/56

第22話 変化していく、この気持ちはなんだろう



 ―――詩乃side



 海に来た……いつぶりの海だろうか。

 学生時代には、友達と来たこともあったけど……少なくとも、社会人になってからは来ていない。会社の人と海なんてイベントはないし、会社外で海に行くほど親しい友人とはなかなか時間が合わない。


 もちろん、同僚のなっちゃんやかなちゃんとなら、時間が合えば一緒に行ければ楽しいだろうなとは感じるけど。


「なら、一緒に行く? 海」


「行きましょう、海!」


 ……自分でも、なんとも大胆なことを言ってしまったな、という自覚はあった。

 たまたま甲斐くんとのデート中に、たまたま水着売り場を見つけて……多分、変なテンションになっていたんだろうなとは思う。

 甲斐くんも、まさか即オーケーしてくれるなんて。


 それから話はとんとん拍子に進んでいって、一緒に海に行って。

 二人きりではなく、楓ちゃんも。それにその先で、浪ちゃんたちにも出会って。


 あの頃の、楽しかった思い出がよみがえってきた気がした。

 ……した、んだけど……


「どうよ! アタシ厳選、オフショルダー風のフリルビキニ! かわいらしいのがピッタリだと思ったのよ!」


 楓ちゃんが選んでくれた、この水着。楓ちゃんに比べりゃそりゃ露出も少ない気がするけど……は、恥ずかしい。

 だってフリルがついてるんだよ! こんなかわいいの着て、変に思われないだろうか。


 ……変って、誰に?


「……」


 私はいつの間にか、彼を見ていた。それは、彼からの視線を感じたからだろうか……それとも、別の意味で?

 築野ちゃんは素敵だと言ってくれたし、似合うと選んでくれた楓ちゃんもまんざらではない。


 なら、彼……甲斐くんは、どう思っているんだろう?


「お姉ちゃーん、早く行こー!」


「わっ。そ、そんなに引っ張らないでー!」


 その答えを聞く前に、私は宇宙くんに引っ張られてしまった。


 結局、甲斐くんがこの水着をどう思っているのか、聞くことは出来なかった。

 ……聞きたいのは、水着の感想? それとも……水着を着ている私の、感想?


 どうしたんだろう私は。どうして、こんなにも甲斐くんからの反応が気になるんだろう?


「……」


 少し遅れて、甲斐くんは築野ちゃんと妹の楓ちゃんと、海に向かっていた。

 その光景を見て、少し、胸の奥が変だと感じる。


 築野ちゃんは、桃色のワンピースタイプの水着……とてもかわいらしい水着だと思う。

 彼女と比べて、私はどうだろうか。私は、甲斐くんにどう映っているだろうか。


 どうしてだろう? なんだか最近、私おかしいよ。甲斐くんに水着を見せるのは恥ずかしかったのに……見てほしい気持ちもある。

 矛盾している、この気持ちは?


「どうしちゃったんだろ、私」


 最近……自分で自分がわからない。

 胸の奥に感じる、未知の気持ち……でも、どこかあたたかくて、嫌ではない気持ち……


 そして、不安な気持ち……それらが混ざり合っている。甲斐くんのことを考えると、変になるのだ。

 私は彼に、なんて言って欲しいのだろう。


「その……水着……似合ってます」


 わからない。わからないけど……彼の言葉は、私の心をあたたかくした。

 嬉しくなった私は、ついこんなことを口走っていた。


「水着選んでる時ね、こんなこと思ったんだ。……甲斐くんは、喜んでくれるかなって」


 楓ちゃんに選んでもらって。その間も、考えるのは彼のこと。

 この水着を、喜んでくれるだろうか……ううん、かわいいと思ってもらえるだろうか。


 それはきっと、水着をじゃなくて……きっと、私自身を……



 ――――――



 ……そして、その日がやって来た。甲斐くんは夏休みに入り、海に行って……楽しい日常を過ごしていた。彼から、プレゼントをもらったのだ。

 彼がバイトを初めて……初給料で、買ってくれたのだ。しかも、私が欲しいと思っていた犬のぬいぐるみを。


 今まで、甲斐くんになにかあげたことはあっても、その逆はあまりなかった。当然だ、彼はまだ学生なんだから。

 小学生のときは、公園で摘んだ花をくれたなぁ。実はあれ、押し花にして取ってあるんだ。本人には言ってないけどね。


「……」


 初めてのお給料で、私の欲しかったものを選び、プレゼントしてくれた。

 それに……


「だからこそ、最初は詩乃さんになにかプレゼントしたいなって思ってたんですよ」


 それを聞いた瞬間……胸の奥が、熱くなる。

 まただ。……いや、この間のものとは違う。もっと……


 なんかきゅうっとなって、ちょっと苦しい。でも、決して嫌な気持ちじゃない。

 欲しかったものが手に入ったから嬉しい……なんて単純な理由じゃない。もっと、別のなにかだ。

 あぁ、なんだろう。なんか顔まで、熱くなってきたな。


「……ありがとう、ね」


 照れ隠しでお酒を飲んでしまったけど、ちゃんとお礼は言えた……よね? ちゃんと伝わったよね?


 両手で抱えるサイズのぬいぐるみ。とても大きい。

 甲斐くんがこれを選び、ラッピングを頼んでいる姿を思うと……なんだか、おかしくなる。


 おかしくなるけど……すっごく、嬉しい。


「……これ、どこに飾ろっかな」


 自室で、ぬいぐるみの置き場所に悩んでいた。

 けれど、その時の私はきっと……にんまりと、だらしない顔になっていたことだろう。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ