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隣のOLが、俺の部屋で宅飲みしている  作者: 白い彗星
第三章 夏の海と、海辺で揺らぐ距離

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第19話 人のために、一生懸命になれて……



 海の家で、お昼ご飯を食べることに。

 海の家と言えば、焼きそば! ……そんなイメージを持っていたのは、どうやら俺だけではないらしい。


 お店で食べるのもいいが、一人は荷物を見てないといけないのだ。なら商品を持ち帰り、みんなで食べた方がいい。

 そう思って、メンバーをじゃんけんで決める。


 その結果……


「まさか一発で決まるとは……」


「私たちじゃんけん弱いのかな」


「かもしれませんね」


 俺と詩乃さん、そして築野さんが買い出しに行くことに。

 しかも、六人でじゃんけんをしたというのに……一発で決まってしまった。


 きれいに三対三で。


「でも、お姉さんに二人のお世話任せちゃって大丈夫かな」


「姉ちゃんはあれで面倒見がいいから、問題ないよ」


 築野さんが不安であるなら、築野さん姉弟はお留守番……ということも考えたが。

 信頼してくれているのか、心配している様子はない。


 逆に俺が二人の相手をできるかは不安なので、お留守番でなくてよかったが。


「不安と言えば、あの純粋な二人が姉ちゃんに悪影響を受けないかどうか」


「はは。でも、楽しそうなお姉さんじゃない。私は弟妹はいるけど、お兄ちゃんやお姉ちゃんはいないから、ちょっと憧れるな」


 本当にいい子だな、この人。あんな姉でも、楽しそうだと言ってくれるとは。

 まあ詩乃さんに会わせてくれたって点では、姉ちゃんに感謝してるけど。


 ……初恋を現在まで拗らせてるって、我ながら女々しい気がするけどな。

 告白しようにも、弟としてしか見られていないのはわかってるから、踏み切れない。この関係を壊したくはない。


「それにしても、みんな焼きそばとは」


「せっかくだから、海を味わいたいのかもね」


 このままだと沼にハマりそうなので、話題を変える。

 今回、みんな焼きそばを頼んだのだ。


 ちなみに、詩乃さんと姉ちゃんは、焼きそばの他にビールも頼むつもりだ。

 海ビールを楽しみにしていた二人にしてみれば、それは当然の選択なのだろうが。


「お酒飲んで、大丈夫なんですか?」


「ちょっとだから大丈夫だよ。それに、飲んだ後は泳がないようにするから」


 不安げな築野さんに応える詩乃さんの言葉が、こんなに信用できないとは。

 まあ家とは違い、ストックがあるわけじゃない。買った分しか飲まないのだから、飲みすぎることもない。


 ……しかし、この二人に挟まれる形で歩くことになるとは。

 詩乃さんは言うまでもないが、築野さんもかわいいもんな……これが両手に花ってやつか。


「ねえねえ築野ちゃん、甲斐くんって学校ではどんな感じ?」


「浪でいいですよ。学校での白鳥ですか……」


 俺が居るのに、俺の話を始めた。しかも俺を挟んで。

 普段から学校での話はしているが、俺以外からの話を聞きたいってことか。


 築野さんは変なことを言わないだろうか。


「自分から目立つタイプではないですね。けど、存在感がないわけでもないです」


「それはやかましい空光が絡んでくるから、自動的に俺も注目を浴びてしまうだけなのでは?」


 俺は平和に過ごしたいのだが、ちょくちょくうるさい奴が絡んでくる。そのせいで、変に目立ってしまうことはある。

 まあ、それが悪いこととは言わないけど。


 空光のおかげでほどほどに騒がしい学生生活を送れているが、楽しい面もあるもんな。


「他には?」


「うーん……頭は平均、運動神経も飛び抜けているわけではないし……顔もそこそこ……」


 めちゃくちゃ正直に話すじゃん……いや、それは正論なんだけどさ。

 ただ、詩乃さんに話すにはかっこ悪い内容だよな……


「あとは……」


「あの、もうそれくらいに……」


 これ以上、恥を晒せない。そう思い、もうやめるように進言しようとしたが……


 それよりも、築野さんが口を開くほうが早い。


「人のために、一生懸命になれて……すっごく優しい。そんな男の子です」


 ……そう話す築野さんの頬は、少し赤らんでいて。

 どこか楽しそうに話す姿が、なんだかとても印象的で。


 そんな俺の視線に気づいたのか、彼女ははっとして。


「あっ、その……だから、これといっていいところはないけど、褒めるところはありますよ、ということで……」


「辛辣……」


 どんな人間にも褒めるところはある、と言いたいのか。

 考えてみれば、一生懸命な人や優しい人なんて、いくらでもいるもんな。ちょっとドキッとしちゃった。


 慌てる築野さんとは対称的に、詩乃さんはさっきから静かだ。


「……それは私も、知ってる」


 なにやら、複雑そうな顔をして、なにかを呟いていた。

 この距離にいても聞こえないほどに、小さな声で。


 ただ、なにを言ったのか聞くのは、野暮な気がした。


「あ、もう着きますよ」


 結局、築野さんも詩乃さんも変な感じになってしまっている。

 え、これもしかして俺のせい? んなまさか。


 タイミングよく海の家に着くので、二人に声をかける。


「! あ、ホントだ」


 今気づいたかのように、築野さんが声を漏らす。詩乃さんも同様だ。

 二人がなにを考えていたのかはわからないが……とりあえず、ここに来た目的を果たすとしよう。


 人数分の焼きそばと、飲み物。それらを注文して、俺たちは来た道を戻る。

 帰り道は、来るときと違ってどこか気まずい雰囲気が流れていた。

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