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隣のOLが、俺の部屋で宅飲みしている  作者: 白い彗星
第三章 夏の海と、海辺で揺らぐ距離

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第20話 心臓の音、聞こえる。波の音と、どっちが落ち着くかな



「海で飲むビール……最高だね」


「えぇ、期待はしてたけど、それを超えてきたわね。キンッキンに冷えてやがるわ」


 みんなで昼食中、缶ビールを飲む詩乃さんと姉ちゃんが満足そうに笑っていた。よかったね。


 俺たちは焼きそばをすすりつつ、その光景を見ていた。

 相変わらず、豪快な飲みっぷりである。


「わぁ、大人だ……」


 そんな二人を見て、築野さんは感銘を受けたように目を輝かせていた。

 感激する場面かこれ?


 宇宙くんと楓ちゃんはにこにこしながら、焼きそばを食べていた。こっちは和むなぁ。


「おいしいおいしいって、普通の缶ビールじゃないの?」


「わかってないわね、こういうところで飲むから格別なのよ。それに、冷蔵庫じゃなく氷水で冷やしてたのが、おいしく感じるのよ! 知らんけど」


 さいですか。楽しんでいるようならなによりだが。

 まあ、姉ちゃんは別にいいよ。……ビール片手に海を眺めている詩乃さんは、絵になるな。


 しっとり濡れた髪も、少し赤い頬も、細められた目も……俺の目を離さない。


「白鳥?」


「! なんでもないよ、あはは! おいしいなぁ!」


 とはいえ、ガン見しているわけにもいかない。

 焼きそばを食べ、お腹を潤して……みんなが食べ終われば、また遊びの時間だ。


 いつの間にか用意していたらしい、姉ちゃんが取り出したビーチボール。六人のため、度々メンバーを変えながら遊んだ。


「おっりゃー!」


 ボールをスマッシュする姉ちゃんは、いつの間にか周りにギャラリーを作っていた。

 動きもそうだが、布面積の狭い水着とそのスタイルが人の目を……主に男性の目を惹いたのだろう。


 姉ちゃんが目立ったおかげで、詩乃さんがあまり視線に晒されなかったのは良かった。……そうでもないかもしれないが。


「はぁー、遊んだ遊んだ!」


 ビーチバレー、砂遊び、スイカ……はなかったので、スイカに見立てた砂の山割り。思いつく限りのことを試し、全力で楽しんだ。


 空がオレンジ色になった頃、さすがに全員疲れが出たようで、海から上がった。

 宇宙くんと楓ちゃんはすでに眠たいのか、歩きながら船を漕いでいる。転ばないよう、手を繋いではいるが。


「お疲れみたいね」


「やだ、まだあそぶぅ」


 目を擦りながら頑張る楓ちゃんだが、もはや眠ってしまうのは時間の問題だ。

 近くの時計を見て、築野さんが頭を撫でた。


「そろそろお父さんとお母さんが戻ってくるから、今日はここまでだね」


「えー、やだぁ」


「なら、また今度遊ぼうね」


 築野さんの言葉に首を振る楓ちゃんだが、詩乃さんの言葉を受けしぶしぶながらも、小さく頷いた。


 それから築野さんは弟妹を引き連れ、待ち合わせをしているという場所に戻っていった。その背中が見えなくなるまで、立っていて。


「そんじゃ、アタシらもそろそろ帰る準備しますかね」


「だな」


「ちょっくらギブスに連絡してくるわー」


 ひらひらと手を振り、姉ちゃんはこの場を後にする。

 店長を謎のあだ名で呼び、電話番号まで交換しているのか。謎すぎるな。


 ……って、詩乃さんと二人きりになっちゃった!

 夕日の海で二人きりなんて、このシチュエーション……いい雰囲気じゃないか!


 詩乃さんもドキドキしていてくれないか。そう思い、隣を見ると……そこには、誰もいなかった。


「あれ、詩乃さん?」


「おーい、甲斐くーん」


 手を振る彼女は、いつの間にか波打ち際にいた。

 夕日の下、波と戯れている詩乃さん……やっべ、すげえ絵になる。


 今携帯やカメラがないのが、本当に悔やまれる。取りに戻る……時間もない。

 仕方ないので、心のメモリにしっかり焼き付けておこう!


「詩乃さん、もうすぐ帰りますよ」


「わかってるけど、もう少しね」


 久しぶりの海だからか、名残惜しそうだ。俺だって気持ちは同じだ。


 ゆっくりと足を進めつつ、迎えに行く……その時、大きな波が迫っているのが、見えた。

 走り出す俺に、詩乃さんははっとして後ろを見て……波に驚き、転びそうになった。


 俺は咄嗟に手を伸ばし……彼女の手首を掴み、転ばないように抱きとめた。


「ぁ……」


 小さな声が、漏れる。腕の中に、詩乃さんの存在があった。結局波は、徐々に小さくなり消えた。


 後ろから、お腹に腕を回してから引き寄せた状態だ。

 必死なことだったとは言え、この体勢は……かなり、大胆なことをしてしまっている!?


「あ、ありがとう甲斐くん」


「いえ……」


 どうしよう、直接肌に触れているから……体温と柔らかさを直に感じる。ヤバい。

 うまく言葉が出てこない。すぐに離れればいいのに、身体が固まったように……


「意外と力強いんだね」


 くすりと、嬉しそうに笑った。

 それだけではない……詩乃さんは少し顔を動かして、俺の胸板に耳を当てたのだ。


「はー……甲斐くんの心臓の音、聞こえる。波の音と、どっちが落ち着くかな」


「……!?」


 なになに……なんでこの人、こんなことしてんの!? 俺を殺す気なの!?

 心臓の音なんて、多分どんどん大きくなってる。打つ音が速くなってるんだもの。


 身体が熱くなる。せっかくの海だし、少しくらい進展したい……とは思っていた。

 だけど、まさかこんなシチュエーションが訪れるなんて!?


 波の音が静かに、聞こえる。海面は夕陽に輝き……足元を洗う冷たい波が、かろうじて身体の熱を冷ましてくれているようだった。

ここまでで読んでくれて、ありがとうございます!

ぜひ応援などくださると、とても嬉しいです!

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