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隣のOLが、俺の部屋で宅飲みしている  作者: 白い彗星
第三章 夏の海と、海辺で揺らぐ距離

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第18話 水着選んでる時ね、こんなこと思ったんだ



 その後、椎名さんとは別れた。

 一緒に遊ばないか、と築野さんは誘ったが、断られた。向こうには向こうの用事があるのだ。


 大学のサークル仲間と一緒に来ているらしい。

 一人だけならともかく、知らない大学生複数と混ざって海を楽しむ勇気は、俺にはない。


「じゃあねーお姉ちゃん!」


「うん、ばいばい」


 わりと人懐っこい宇宙くんが、ぶんぶんと手を振る。

 手を振り返しながら去っていく椎名さんを見て、俺は思った。彼女のスクール水着姿、他の人はどう思ってるんだろうな……と。


「さっきの子、お知り合い?」


「築野さんに関しては、そうですね。俺に関しては、これから知り合うことになってた相手ですね」


「?」


 ずっと楓ちゃんの相手をしていた詩乃さんは、椎名さんと話すことはなかった。

 その手はしっかりと楓ちゃんと繋がれている。微笑ましい姿だが……


 ……羨ましい。


「甲斐くん?」


「な、なんでもないです! それより、遊びましょう!」


「うん!」


 それから、みんなで遊ぶことに。詩乃さんと二人でないのは残念だったが……これはこれで、楽しいな。

 それに二人きりだと、うまく遊べたかどうかわからない。主に俺が緊張して。


 だって好きな相手の水着姿に平常心を保つとか、無理だものー!


「えい!」


「ぶふっ」


 ……めちゃくちゃ水をかけられた。


「ふふっ、あはははっ。ぼーっとしてちゃダメだよ!」


「やりましたね……」


 油断してた……けど、もう容赦はしない!

 どうせ遊ぶなら、全力で遊んでやる!



 ――――――



「ふぅ、あ、遊んだー……」


「なによ甲斐、もうへばったの? 情けないわねー」


 海から上がり、荷物置き場に戻ったが……寝転がれるタイプのビーチチェアにて肌を焼いていた姉ちゃんが、ケラケラと笑う。

 サングラスまでして、本格的だな……


「う、うるさいな。小さい子の体力すごいんだって」


「あんたまだ高校生でしょうが、しっかりなさいよ」


 他人事だと思って……!

 俺だってはじめは、あの二人が疲れた後に詩乃さんと思い切り遊ぼうと思ってたけど……


 正直、舐めてた……


「築野ちゃんは、まだ元気みたいだけどー?」


「ぬぐぐ……」


 さすがは小さい子たちのお姉ちゃん。全然疲れた様子を見せていない。

 いつも遊んでいるから、体力もついているということかな。


 俺より築野さんの方が体力があるのかもしれないのは、素直に悔しい。


「そういえば今更だけど、築野ちゃんたちはあの三人だけで来たの?」


「いや、両親は近くで仕事があるから、その合間に遊んでるんだって」


「へぇー。なら、アタシらと合流できてよかったじゃない」


 確かに、築野さん一人で弟妹とずっと遊ぶのは大変だ。

 いくら慣れていても、海で遊ぶのは余計疲れるだろう。


「さて、アタシも行こうかしらねー」


「もう焼かなくていいのか?

 ……てか、日焼け止めしたのになんで焼いてるんだよ」


「バカねー、ほどよく焼けるためには、むしろ日焼け止め塗っといたほうがいいのよ」


 サングラスを俺に投げ渡し、そのまま海に走っていってしまった。


 そして入れ替わるように、詩乃さんが戻ってきて……パラソルの下、ブルーシートに寝転がった。


「はあ、小さい子の体力すごいねー。もう疲れちゃったよ、情けないな」


 どうやら、小さな元気塊たちに振り回されて体力を持っていかれたのは、俺だけではないらしい。


 人一人分の距離を開けて、隣に座る。

 ……仰向けの詩乃さん、なんか直視したらまずい気がする。


「甲斐くんも疲れちゃった?」


「不覚ながら」


 慣れない子供の相手、慣れない場所での遊び……それが、一気に体力を削っていったようだ。


 少し落ち着いたのか、詩乃さんは起き上がり……膝を抱え、海を眺めていた。

 その視線の先に居るのは、築野さんたち。それに混ざっている、姉ちゃんだろうか。


「ん、どうかした?」


「! い、いえなんでも」


 じっと見つめすぎてしまった。

 詩乃さんの横顔は、いつまでも見ていられる……なんて言ったら、引かれてしまう。


 俺の気持ちなど知るよしもなく、膝に頬を乗せて、こてんと首を傾げた。

 やめてくれその仕草! 萌え死んでしまう!


「ふふ、まさか築野ちゃんたちと会うなんてね。びっくり」


 驚きと、そして楽しさが混じった笑み。くすくすと笑っている。

 やっぱり、その笑顔が好きだ。そんな彼女に、まだ伝えていないことがある。


 勇気を出せ、俺!


「その……水着……似合ってます」


「……へ!?」


 きょとんとした顔は、俺からそんなことを言われるとは思っていなかったからだろうか。

 次第に理解が追いついたのか、顔が赤くなっていくのがわかった。


「あ、ありがとう……」


 照れたように、しっかりとお礼を返してくれる。かわいらしくてたまらない。


「水着選んでる時ね、こんなこと思ったんだ。……甲斐くんは、喜んでくれるかなって」


「へぇ、そうなん……!?」


 ……え? 今、なんて?

 俺のことを思いながら……俺が喜ぶと考えながら、水着を選んでくれたって!?


 動揺が止まらない。どういうつもりで、そんなこと言ったんだ……?

 顔を正面に向け、膝を抱えつつ口元を埋め……耳まで赤くなっている。自分でも恥ずかしいことを言ったと、わかっているのだ。


「それは、その……ありがとう、ございます?」


 この状況でお礼を言うのが正解なのか、わからないけども。


「……褒めてくれたってことは、喜んでくれた、と受け取っていいんだよね?」


「んぅ……」


 なんか今日の詩乃さん、大胆じゃない? 海だからか?

 そりゃ、少しは開放的になってほしいとは、思っていたけども!


 ただ、ここでなにも言わないのは、逆に失礼だ。


「は、はい」


 あぁ、声裏返ってないだろうか。ちゃんと返事できただろうか。


 その疑念は、こっちを見て微笑む詩乃さんの表情が、物語っていた。

 ドクンと、心臓が高鳴る。


「詩乃さ……」


「お兄ちゃん!」


「おわぁ!」


 自分でも、なにを言おうとしたのか。それすらもわからないまま、割り込んできた声があった。

 反射的に首を向けると、さっきまで遊んでいた宇宙くんがいた。


 続いて、姉ちゃんたちも戻ってくる。


「そろそろお腹減ってきたみたいだしさ。昼食にしない?」


「おなかへったー」


 時間を確認すると、お昼過ぎ……それもあれだけ遊んでいれば、腹も減るだろう。

 体力あるとはいえ、小さい子ならなら特に。


 立ち上がる詩乃さんも話し合いに混ざるが、俺はと言うと……胸のドキドキが、止まらない。

 あのまま横入がなければ、俺は……?


「甲斐、どうかしたのあんた」


「! な、なんでもない!」


 とにかく、今はお昼ご飯だ! うん、さっきのは一旦忘れよう!

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