表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
隣のOLが、俺の部屋で宅飲みしている  作者: 白い彗星
第二章 甘い生活と、揺らぐ想い

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

13/18

第13話 白鳥が、初めて、かな



 ――――――



 さて、バイト初日がやってきた。

 第一希望は料理担当だったが、一番人手が欲しいのがホールということで、接客になった。接客もやってみたかったから、良いけどな。


「よろしく、築野さん」


「え、えぇ、よろしく白鳥」


 そして、俺の教育係が同じくホール担当の築野 浪さんだ。

 クラスメイトだし、喋りやすい人に教えてもらうのは、いくらか気が楽だ。


 築野さんは、高校入学と同時にこのバイトを始めたらしい。つまり、約三ヶ月先輩。

 そんな彼女が教育係を任せられたのは、ズバリ評価の良さゆえだ。


 店長曰く、すでにほぼ完璧な接客だと好評らしい。動き、笑顔、記憶力……様々な動きが洗練されていると。



『浪ちゃんは、ワタシのイチオシなのよ。彼女、教えるのもとっても上手なのよね。

 だから甲斐ちゃんも、イロイロ教わるといいわ、うふっ』



 ……筋肉ダルマ店長のウインクは、バイト前から精神力が削られてしまう破壊力があった。


 うん、忘れよう。忘れたい。


「それにしても、いきなり忙しい土曜からで災難だったわね」


「いや、そんなこと。どんと来いだよ」


 今日は週末……休日のファミレスともなれば、客の数も多いだろう。お昼時なら、なおさらだ。


 ちなみに、普段なら休みの詩乃さんは、今日は休日出勤である。そのため、俺の初バイトに行けないことを嘆いていた。

 昨夜の詩乃さんはいつも以上に飲み、俺の部屋で夜を過ごした。その結果……



『まことに……まことに、申し訳ありませんでしたぁあああ!!!』



 いつかの再現のように、朝一で詩乃さんの土下座が炸裂した。面白い光景ではあるが、あまり見たいものでもない。



『ううぐ……いっそ殺してぇ……』



 涙を流し、歯を食いしばる姿は鮮明に思い出せる。「くっ、殺せ!」と女騎士みたいだった。


「……白鳥、顔色悪くない? 大丈夫?」


「大丈夫、問題ないよ」


 寝落ちしてしまった詩乃さんをベッドまで運び、俺はいつかのようにソファーで眠った。

 初バイト前日なのでゆっくり体を休めたかったが、ああなっては仕方がない。


 俺よりも、翌日に仕事が控えている詩乃さんをソファーで寝させるわけにはいかなかったからな。


「ちょっと睡眠が浅かっただけだから。動く分には問題ないよ」


「そう? でも、体調が悪くなったら隠さず言うのよ」


 心配してくれる築野さんの優しさが染みる。

 酔っぱらいのお姉さんを介抱していて眠れませんでした、とは言えない。


 とはいえ、全く眠れなかったわけでもないし、今は元気だ。無理をするつもりはないが、それでも張り切ってやろう。


「……あ、早速お客様ね。いらっしゃいませ」


「はいっ。いらっしゃいませ!」


 こうして、初バイトが始まった。



 ――――――



「おぉおお、疲れたぁ……」


 バイト終わり、俺は情けなくも休憩室で机に突っ伏していた。

 途中休憩も挟んだとはいえ、約六時間ホールで動き回っていたのだ。それに、お客さんの多いこと多いこと。


「お疲れ、白鳥」


「お、お疲れぇ……」


 心身ともに疲れている俺とは違い、築野さんは全然元気に見える。俺以上に動いていたのにな。

 それに、いつもの作業に加えて、人に教えるのは余計に体力を使うだろう。


 なのに、疲れた様子はない。

 あれなら、店長から信頼されるのも頷ける。


「今日は忙しかったわねー、疲れたわ。

 お店としては嬉しい悲鳴なんだろうけど」


 こう見えても、疲れているようだが……そうは見えないな。

 しばらく休んでいきたいが、いつまでもここにいるわけにいかない。動けないほどではないし。


 後は着替えて、夕食の買い出しに繰り出そう……


「二人とも、お疲れ様〜」


「お疲れ様です」


「お疲れ様でーす」


 扉が開き、店長が部屋に入ってくる。ガタイがよく肩幅がとても広い。

 スキンヘッドに強面の顔とは裏腹に、心にはおそらく乙女を飼っていると思わせる口調と仕草だ。


「甲斐ちゃん、初日から頑張ってくれたわね。やる気があって結構なことだわぁ」


「いっぱいいっぱいでしたけどね。築野さんが上手に教えてくれたおかげで、なんとかやり切れました」


「そうなの、浪ちゃんが手取り足取りと……ね、んふっ」


「そこまで言ってないでしょ!」


 なぜか意味深にウインクする店長に、顔を赤くした築野さんが吠える。

 仲の良い二人だなぁ。


 それから築野さんは、チラチラと俺を見ていたかと思えば……こほんと咳払いをし、俺を見た。


「あー……白鳥、せっかくだしこの後、ちょっと遊んでいったりとか……しない? パーッと、さ」


 髪先を指でくるくるし、目を合わせてくれないがちゃんとしたお誘い。

 初バイト後の俺を気遣ってくれているのか、ありがたい誘いだ。


 けど……


「ごめん、この後は大切な用があるんだ」


「あ……そ、そう……」


 この後は、詩乃さんとの食事がある。詩乃さんに話したら、「私のことは気にせず遊んできなさい」とか言いそうだが。


 でも、俺が一緒に食事をしたいのだ。

 それに、本音を言えば疲れが溜まってて、遊びに行く元気がない。……情けなくて言えないけど。


「誘ってくれてありがとう。また誘ってくれると、嬉しいな」


「う、ううん。私こそごめんね。疲れてるのに誘っちゃって」


 とはいえ、せっかく誘ってくれた築野さんに悪いことしたよな……謝る必要もないのに。


 それに……二人での食事は俺にとって最優先事項だが、だからといって毎回友達の誘いを蔑ろにしていいわけではない。

 今日は無理だが……


「……今度、一緒に遊びに行こう。絶対」


「! う、うん!」


 次の約束をすれば、失礼には当たらない。……はず。

 俺だって、築野さんと遊びたくないわけじゃないし……


 ……そういえば。


「俺たち、連絡先交換してなかったよね。

 この日空いてるって日があったら、連絡するよ」


「……白鳥から? 連絡?」


 今更だけど、連絡先を交換していないことに気づいた。一緒にお昼を食べる仲なのに。

 いつも学校で話すから、必要性を感じなかったのか。


 最も、連絡先交換が嫌な場合もあるだろう。


「もし学校で直接言った方がいいなら、そうするけど……」


「しよ! 連絡先交換!」


 食い気味に、築野さんは言う。どこか嬉しそうだ。よかった、断られたらどうしようかと。

 遊びの約束以外も、今後バイトでわからないことがあったら聞くこともできる。


 お互いに携帯を出し、連絡先を交換。

 詩乃さんも予定が入る日はあるだろうし、その辺調整していこう。


「よし。女の子の連絡先なんて、身内以外で初めてだ」


「えっ……そ、そう、なんだ。

 ……う、嬉しい」


 連絡帳を見て、そもそも登録人数が少ないことに苦笑いを浮かべる。

 女性なんか、母さんと姉ちゃんを除けば他は詩乃さんだけだ。


 詩乃さんは身内みたいなものだしな。


「わ、私も、男の子は……白鳥が、初めて、かな」


「へえ? 空光とは交換してないの?」


「あいつは男としてカウントしてないから」


 当たりが冷たい……

 二人は幼なじみなんだし、連絡先くらい交換しているだろうが……空光、なんかどんまい。


「ともかく、大丈夫な日は連絡するから。

 もちろん、築野さんからも誘ってね。可能なら予定空けるし」


「うん!」


「じゃ、俺着替えるから。築野さんも着替えなね」


 連絡先も交換し、今後の予定は応相談……と。


 更衣室へと足を踏み入れる……が、扉が閉まる直前、築野さんがなにか呟いたような気がした。


「白鳥の、連絡先……やった、ふふっ」


 が、よく聞こえなかった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ