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破滅した世界にて~銃とゾンビと邪神 ~  作者: ルルエル=テン
第一章
3/21

説明

 水滴の音が響く中、壁に取り付けられた魔法ランプによる僅かな光量を頼りに下水道を進んでいくレイ達。


「よし。ここら辺りまでくれば大丈夫だろう」

「ようやく休めるのかぁ」


 新人プレイヤー達はレイの言葉を聞き、糸の切れた人形のようにその場に座りこむ。


 ゾンビに喰われたのが1人。阿修羅によって死んだのは2人。助かったのはレイを含めて8人。助けられなかった人がいるのは悔やまれたが、あの状況で良く新人プレイヤーを抱えて逃げれたものだと、一息着くレイ。


 下水道へと歩く傍ら、軽くではあるが全員の自己紹介は済ませてあった。

 

「レイさん。ひとまず安全を確保したのはわかるんだけど、このあとはどうするの?」


 レイが阿修羅から助けたボーイッシュな黒髪少女アヤメがへたりこみながらも、レイにこれからの動きについて聞く。

 他の新人プレイヤーも頼れる人がレイしかいないのを自覚しているのだろう。疲れから顔を下げてはいるものの、視線だけはレイへと向けていた。


「そうだな。ひとまずはここで半日、いや1日は過ごす。そうすれば領主館までの道のり自体は難しくないはずだ」

「こんな暗い所で1日も!? ゾンビが来ても気付けないよ。危なくないの?」

「あぁ~その辺りの説明もいるのかぁ・・・じゃあとりあえず飯でも食いながら話をするか」


 軽い感じで答えたレイは、インベントリから携帯食と水筒を人数分取り出すと、全員に配っていく。


「みんなを余裕で賄える程度には食料は持ってるから、心配せず食べてくれ」


 レイに促されて携帯食と水筒に入った水を口にするアヤメ達。

 携帯食は棒状の機能栄養食品のような物であり、口の水分を持っていく。

 アヤメ達は喉が乾いていたこともあり、水で流し込むよう携帯食を食べた。


「さて。みんなひとまずは落ち着いたかな。じゃあ話をさせてもらうけど、まず下水道にいる限りはゾンビは入ってこないから安心してほしい。理由はゲーム時にも大抵のゾンビは水辺に近寄ってくることは無かったからでね。ゲームとは違ってゾンビが下水道に入ってくる可能性もあるけど、港にゾンビが一体もいなかったことや、あれだけのゾンビが街中にいるにも関わらず、未だに下水道内でゾンビの姿が見えないことから、まず間違いなく下水道にゾンビは来ない。ここまでは大丈夫?」


 全員が真剣な顔で、首を縦に振りながら、続きを促す。


「そして脱出方法なんだけど。もしゲームと同じ方法でいけるなら、俺達が目指すのは南西にある領主館になる。実は領主館の地下には有事の際の脱出路が作ってあってね。そこを抜けることで外に出ることが出来るんだ」

「じゃあ体力が回復したら、その領主館に向かえばいいんじゃないの?」


 アヤメが手を上げながら、発言する。


「問題はそこなんだよなぁ。みんなは知らないと思うけど、領主館にはある仕掛けがあってね。阿修羅がいなければ行っても良かったんだけど・・・」


 (いやはや懐かしいねぇ)


 レイは懐かしそうにその仕掛けについて説明を始めた。


 ZWの最初のステージである貿易都市ソーラ。

 ZWリリース当時、数多のFPSプレイヤー達がこぞって挑戦した結果。

 大半のプレイヤーはこのステージで挫折し、断念していた。

 それは何故か。

 

 まずは飢餓ゲージの存在。 

 サバイバルゲームではお馴染みの空腹ゲージと水分ゲージがZWでも実装されている。

 しかし舞台は人類のほとんどが滅びたとされる世界であり、プレイヤー達は300年前に破滅した貿易都市に閉じ込められている状態でのスタートとなる。

 そんな場所で食べ物や水分を手に入れることはもはや不可能に近く、ゾンビにやられるというよりも、飢餓や渇きによって死亡するケースが多発。

 プレイスキルとは全く関係ないところで、何度も死を経験したプレイヤー達は心を折られていった。

 今のレイ達にはそんなゲージは存在していないが、空腹や渇きはあるため、食糧や水分を取らなくてはいけないのには変わりない。


 次にチュートリアルも無く、攻略のヒントすらない中で、世界観からの自身の発想のみで脱出を目指す必要があること。

 普通のゲームではあれば、説明書や開始時に簡単なレクチャーがあり、攻略に詰まれば、NPCやアイテム等から何かしらのヒントが与えられる。

 謎解き要素があれば尚更のこと、様々なところにヒントが散りばめられているのが基本のはず。

 しかし、貿易都市には生きた人間はゼロ。攻略ヒントがかかれた書き置き等も無く。そもそも謎解きが成立してない。

 ゲームでありながら、あまりにリアル過ぎる設定に多くのプレイヤーが苦しめられていた。


 そんな貿易都市ソーラであるが、蓋を開けてみれば攻略そのものは簡単であった。

 領主館に入れない原因は結界によるもので、ただそれを破壊すれば良いだけだったのだ。

 屋敷の入り口へとただひたすら銃弾を打ち込めば良いだけの簡単な攻略法。

 

 しかしZWはそう簡単には攻略を許してくれなかった。

 「結界に攻撃を加えて破壊する」言葉にすれば簡単に見えそうな条件だが、これが実はかなり悪質で、いかんせん結界が硬く、始めたばかりのプレイヤーのステータスではとても破壊出来るものではない。

 しかも結界の破壊を試みて、もし破壊することが出来なければ、それまで撃ち込んだ銃弾や、投擲した手榴弾分のダメージが全て自分に返ってくる鬼畜仕様。

 手掛かりのない中、領主館が怪しいと気付いたプレイヤー達も、あまり硬い結界、返ってくる銃弾を見て、結界は破壊不能なのだと勘違いするようになる。

 そして本来はありもしない仮説を立て始める。

 

 結界を抜けるためには何かしらのキーアイテムが必要なのだと。

 

 領主館に入れるのは領主一族や使用人、または領主と会談出来るような地位のある者達。

 プレイヤー達はこぞって身なりの良いゾンビや、メイドの姿をしたゾンビを討伐していく。

 実際に使用人達は結界を抜けて通るのに護符と呼ばれるアイテムを持っていた為、あながちプレイヤー達の行動は間違いではない。

 しかしこれはひっかけであり、護符を手に入れたからといって領主館に入ることは出来ない。

 何故なら、護符は本人以外が使用出来ないよう細工されており、本人以外がそれを使おうものなら、護符に込められた魔力が暴走の後に爆破。あっという間にゲームオーバーになるのだ。

 よくよく考えれば、結界は防犯上の措置であり、護符を何者かに奪われた時の対処をしていない方がおかしい。

 これまで何度も死を繰り返しながら、文字通り必死になってやっていたプレイヤー達も、ここで次々とリタイヤしていった。

 

 減っていく飢餓ゲージ。

 固すぎる結界。

 意味のないドロップアイテムである護符。


 様々な要因がプレイヤー達の冷静な思考を奪い。ただ単純にレベルを上げて火力を高めれば良いという単純な攻略法を思い付かせなかった結果。

 

 半年間、ある二人のプレイヤーが攻略するまで、ZWは鬼畜バグゲーと呼ばれ、攻略不可能なゲームだとされていた。




「つまり。新人プレイヤーである君達が今出来ることは無いんだよ。多分だけど君達をそそのかした奴らはゲームでソーラを攻略している。

 ゲームでならプレイヤーごとに結界を破壊する必要があるけどここは既にゲームじゃない。多分だけど一度結界を破壊してしまえば誰でも通れるようになるはずだよ。今頃奴らはせっせと結界を壊しに行ってるはず。仮にもし結界が復活しているようなら俺が破壊するしね。

 それより問題は阿修羅なんだよなぁ。昔の記憶の名残なのかは知らないけど、あれは一度復活してしまえば半日は街を巡回するから。その間は少なくとも下水道内にいた方が良い。

 それにみんなはこの世界について何も知らないだろ? 全てがゲームの通りって訳ではないけど、共通している部分も多いと思うから、結界の破壊を待つ間に、俺の知ってることを教えるってことでどうかな?」

「そっそうね。確かに私はまずこのゲームについて知ることが大切な気がしてきたわ」


 レイの話を聞いて全員の頭によぎったのは「レイがいなければ阿修羅うんぬんは関係無くどっちにしろ全員死んでいた」という思いだった。

 ゲームを始める際、誰がここまで底意地の悪いものだと想像するだろうか。

 

「という訳で、このゲームについての基本から話そうかな」


 そういってレイがまず話したのは兵種について。

 ZWにはキャラを作成する時に、兵種を選択する必要がある。

 

 兵種には狙撃兵、爆撃兵、突撃兵、援護兵、機械兵、工作兵、偵察兵、守備兵、輸送兵の9種類から選ぶことになる。

 

 狙撃兵は射程距離、命中補正が最も高く、シールド強度、連射性能、フィジカルスキルが低い兵種。

 遠距離による射撃を得意とした兵種であり、唯一対人戦ではシールド貫通性能を持つ為、ヘッドショットを決めれば一撃必殺の威力を持つ。

しかし逆に近中距離の戦闘は苦手としている為、接近されると弱い。


 爆撃兵は手榴弾等の爆破武器を得意とした兵種であり、攻撃有効範囲が広く、逆に速射性能が最も低い兵種。

 単純火力なら随一であり、シールド強度も高い。

 しかし投擲武器ゆえに射程も短く、機動力もお世辞にも高いとは言えない為、小回りの効くプレイが苦手。

 他の職種が投擲兵器を1つずつしか使えないのに対して、爆撃兵は最大値4つまで同時に使える。

 また他の兵種には使えないグレネードランチャー、ロケットランチャーなどの兵器が使える。

 

 突撃兵は火力、シールド性能、機動力といった基本性能のバランスが良く、対応能力の高い兵種。

 ライトマシンガンを唯一使える兵種で、どの場面でも安定して戦えることから一番プレイヤー人数の多い人気兵種。


 援護兵は火力、シールド性能が劣る代わりに回復弾や付与弾等の支援に特化している兵種。

 味方に当てることにより、シールドの回復や各種ステータスアップを行える。

 パーティーに必ず一人は欲しい兵種。

 戦闘能力は低いため、あくまで味方を支援するような立ち回りを求められる。


 機械兵は全てのステータスが低く、個人としての戦力で見るなら最弱。

 その分強力な自律型の兵器や、移動兵器、ポータルといったワープ装置等を使える。

 それらを自身の周囲に設置し、自身を守りながら、敵倒すといった、音楽でいうならば演奏者ではなく、指揮者のような立ち位置でのプレイが基本となる特殊な兵種。


 工作兵はステータス自体に特質すべき部分はないが、地雷、ワイヤートラップ等、トラップ兵器を得意とする兵種。

 しかし銃はハンドガンしか使用出来ない為、銃撃戦には向いていない。

 積極的に攻めるプレイではなく、相手の行動を予測し、そこに罠を張って敵を倒すといった、玄人向けの兵種。


 偵察兵は機動力が最も高く、その分、火力やシールド性能が低い。

 素早い動きに加え、偵察用兵器である遠隔操縦型のラジコンカーFCRやラジコンヘリFFRを扱える。

 これらの偵察用兵器はトラップや自律型兵器、一部を覗いたゾンビには検知されない特徴を持ち、前もって敵位置の確認が出来ることから、攻略を効率良く進めたいプレイヤーに人気が高い。


 守備兵はシールド性能が最も高く、機動力が最も低い。

 シールド性能が群を抜いて高く、専用兵器であるガトリングガンは連射中においては無類の強さを誇る。

 しかし機動力が低い為、敵からの攻撃を受けやすく、立ち回りに頭を使う兵種。


 そして最後の輸送兵はインベントリの容量が2倍であるということ以外は大した特徴のない兵種。

 良く言えば万能。悪く言えば器用貧乏。

 専用兵器や表立った兵種固有の強みがないことから、不遇職と呼ばれ、もし出会えればラッキーだと言われる程、プレイヤー数が少ない。

 


 ZWではこれらの兵種の特性を踏まえ、各スキルレベルを上げることでプレイの幅を広げていく。

 

 スキルはレベルを上げることで手に入るスキルポイントを使って上げる。

 レベル上限100までとなっている為、限られたスキルポイントをどの項目に振り分けていくかが重要になる。

 スキルは大きく分けて、ガンスキル、フィジカルスキル、サブスキルの3つがあり、ガンスキルには火力、マガジン数、連射能力、速射能力、射撃距離、リロード、MP消費率といったマジックガンの能力に関するもの。

 フィジカルスキルは脚力、シールド強度、腕力、視力、体力といった、身体動作や守りに関するもの。

 サブスキルには投擲兵器、罠、爆薬兵器、自律兵器、遠隔操作兵器、付与、回復、といったものがある。

 兵種によってスキルレベルの上限やレベル上昇によるステータスの上がり幅、使用可能になる兵器の種類が変わる。

 その為、工作兵ではなくても罠を設置したり、援護兵ではなくても回復、付与も行えるが、その威力、使える兵器の種類はそれを得意とする兵種には遠く及ばない。

 

 ちなみにヒットポイントは無く、シールドを破壊され、ゾンビに噛まれたり、ボスキャラ等が放つ、ゾンビ化する魔法受けると5分後に死亡。

 対人戦では心臓、又は頭部に弾丸または爆薬をくらう、心臓以外の胴体部分に弾丸なら3発、で死亡となる。

 四肢に関しては打たれると使用不可になるが、四肢へのダメージでは死亡しない。

 またどの職種も最初から調合スキルを持っており、アイテムを調合することでシールドを回復させるポーションや、ゾンビ化を防ぐ血清、バフ効果のあるドーピング等を作れる。


 これに加え、属性値というものも存在し、火、風、雷、氷、闇、光といった属性値を上げること属性に応じた加護がもらえる。

 属性値はレベル50から属性ポイントを取得できる。その後10レベル毎に1ポイントずつ、計6ポイントを好きな属性に振り分けることができ、振り分けたポイント数に応じた特殊技能を得る。


 火属性は火力に補正がつき、焼夷手榴弾や焼夷トラップ等、サブスキルとの組み合わせで、火力の高いサブ武器が使えるようになる。


 風属性は機動力に補正がつき、ガンスキルやフィジカルスキルとの組み合わせで銃弾を曲げたり、空中で数回ステップを踏めるようになる。

 レイが阿修羅から逃げる時に使った空中ステップはこの属性によるものである。


 雷属性はシールドへの破壊性能、貫通力に補正がつき、またサブスキルと組み合わせることで、罠や遠隔型兵器を破壊出来る、ジャミング兵器が使える。主に対人向け。


 氷属性はシールド性能に補正が付き、サブスキルやガンスキルと組み合わせることで、弾丸をシールドへと変換させる、ショットシールドや、手榴弾や地雷等のサブ兵器をシールドへと変換させる、インパクトシールドが使えるようになる。


 闇属性はガンスキルとサブスキルとの組み合わせで、マジックガンやサブ兵器に相手に対するデバフ効果を付与出来るようになる。

 レベルを上げるごとに微毒(シールドへの継続ダメージ少)→視界不良→毒→火力減→機動力減少→麻痺と効果の種類があがる。

 この効果はシールド着弾した場合でも3分の1程度の効果を発揮する。


 光属性は付与や回復の効果に補正があり、またシールド回復率、時間経過によるMP回復率も高くなる。サブスキルとの組み合わせで暗い場所で使うトーチボムや相手の視界を防ぐフラッシュボムが使えるようになる。


 ZWはこの兵種、スキル、属性値の組み合わせにより、様々プレイスタイルが可能になるゲームであった。

 

 またレベルを上げるためにはソウルというものが必要であり、ゾンビやプレイヤーを倒すことで手に入る。

 またこのソウルはレベル上げ以外にも用途があり、シールドの回復、強化薬の作成等、お金に近い意味合いも持つ。




 これらの基本説明を終えたレイは、長い時間話したことによる喉の渇きを潤すべく、水筒の水を一気に飲み干す。


「んぐんぐ・・・ふぅ。基本的なところはそんなところかな。ここまでで質問ある人いる?」

「あっはい。レイさんの兵種は何なんですか?」


 レイが口から垂れた水滴を拭っていると、一際気弱そうな少年キータが手を上げる。


「俺は輸送兵だよ」

「えっ! あの誰も選ばない、パーティーにもいらない、もはや必要性がないとも言われてる輸送兵!?」


 レイが輸送兵であることに驚いたのはアヤメ。


「酷い言われようだな・・・まぁその必要性がないと言われてる不遇職。輸送兵が俺の兵種だよ。俺は結構気に入ってるんだけどな・・・アヤメちゃんは多少は知識があるみたいだね」

「うちの兄貴が結構な古参プレイヤーだからね。時折話をしていたのを聞いてたのよ。でもまさか輸送兵のベテランプレイヤーがいるなんて。兄貴は輸送兵は絶滅危惧種だって言ってたわよ」

「あはは! なら俺はその絶滅危惧種なんだろうな。よしっと。質問はそれ以外ないみたいだから、次は地理も踏まえて、これからの動きを説明するぞ」


 レイは乾いた笑い声をあげながら、領主館への順路について話をする。


「ーーこれで領主館には着ける。ゲームでは領主館にはゾンビはいなかったけど、領主館に入っても気を緩めないでほしい。ここからが本題なんだけど、この貿易都市ソーラを脱出した後は北にある農村部を目指そうと思う」

「拠点を目指す訳ね」

「アヤメちゃん正解。ソーラは既に崩壊していたけど、ゲームでは少ないながら人が暮らしている場所があるんだ。最も近いのが農村部にあるコロン村。そこを経由して最終的には王都の西にある大都市マリアを目指そうと思っている」

「でもそこに行ってもソーラと同じ状況になるんじゃないですか?」


 レイの説明にキータが不安そうに目を泳がせながら質問をする。


「その可能性もあるけど、ソーラと違ってマリアやコロン村はベース化が出来てた場所だから、もしかしたらこの世界でもガードクリスタルが置いてあるかもしれないんだ」

「確かにもしクリスタルがあれば安全は確保出来るわね」

「ちょちょちょっと待って下さい! 二人だけで進めないで下さい!」


 知らない単語を使い、話を進める二人に思わず、悲鳴のような声を出すキータ。

 周囲にいるアヤメ以外のプレイヤーも頭にハテナを乗せたまま、ポカンとした顔をしている。


「あっ・・・ごめんごめん説明が足りてなかったね。ガードクリスタルってのはゾンビが入ってこないように結界を張る装置のことで、拠点はこのガードクリスタルが置いてある場所のことなんだよ。そこに行けば多分一時ではあるかもしれないけど、安全は確保出来ると思う」

「そんな場所があるんですね。でも本当にそのコロン村とマリア? は安全なんでしょうか? 外にもゾンビはいるんですよね? もしまたあんなのが出てきたら・・・」


 目の前でゾンビに喰われていく人や阿修羅を思い出したのだろう。キータは顔を青くしていた。


「うーん。絶対とは言えない。けどここより安全である可能性は高いと思うよ。みんなはここに飛ばされてきた時の事は覚えてる?」


 レイの言葉に全員が港に転移された時のことを思い出す。


「プレイヤーが転移されたにしては人数が少なすぎなかった? そして結構な数のプレイヤーが初期アバターである黒い軍服じゃなかったかな?」

「あっ! 確かに」


 レイの言うとおり港に転移していたのはざっと見て200名程度であり、半分のプレイヤーは黒い軍服を着ていた。


「でもそれがどう関係あるんですか!?」


 意図がわからず、続きを急かすキータ。


「これはあくまでも仮説なんだけど、他のプレイヤーは拠点に転移したんじゃないかなって。

 ZWはレギオンと呼ばれるチームを組むことが出来るんだけど、レギオンはガードクリスタルにソウルを流すことで、その拠点を自分達の専用拠点に出来るんだよ。

 でも俺はレギオンに所属はしていないし、今日始めたばかりのみんなは言わずもなが。

 ソーラに飛ばされたプレイヤーは全員、レギオンに所属していない、又はレギオンに所属しているがそのレギオンが拠点を持っていないプレイヤーで、拠点を持っているプレイヤーはそれぞれの拠点に飛ばされたんじゃないのかって思ったんだ。

 つまりコロン村はわからないけどマリアには多数のベテランプレイヤーが飛ばされた可能性が高い。

 ZWは初心者には難しすぎるゲームだけど、それなりにプレイヤーはいたはずだからね。少なくとも港に転移した人数が全員だとは考えにくい。

 そう考えたら俺の案の信憑性も高くならないかな」

「はぁ~こんな状況でよくそこまで頭が回るものだわ。レイさん実は名の知れたプレイヤー? もしかして王の名を冠するプレイヤーだったりして」

「いやいや。俺はただの輸送兵だよ。兵種のせいでソロプレイを余儀なくされて、死なないために知恵だけは浮かぶようになったに過ぎないよ」


 アヤメは若干呆れた顔を見せるが、キータを含む他の新人プレイヤーは、自信ありげなレイを見て安堵した様子でレイの方針を受け入れる。


「汚いところで悪いけど、時間になるまでは身体を休めるなり、射撃練習するなり自由に過ごそう。見張りは俺がするけど、あまり離れないように注意して」


 レイ達は阿修羅が巡回をやめるまでの時間、思い思いの時間を過ごした。






ーーーーーーーーーーーーーーー






「はぁはぁ・・・何だってんだ!」


 新人プレイヤーを騙し、阿修羅を呼び出した原因を作った髭面の男は、領主館の地下にある隠し通路を走っていた。


「くそ! 阿修羅といい、あの執事といい。俺以外は全滅かよ」


 髭面の男は先程自分達を襲ってきたゾンビ達を思い浮かべながら悪態をついた。


 髭面の男とその仲間達は、港を発った後真っ直ぐに領主館に向かった。

 途中、すがるように付いてきた連中も含め、50人という大人数で領主館を目指していた最中。予想だにしていないことが起きる。

 

 それは阿修羅による襲撃。

 

 何故、阿修羅がこんなところに。


 阿修羅の登場に驚いた髭面の男は、阿修羅が出現した後、一定時間街を巡回することを知らなかった。

 一度クリアしたことによる、自分達は大丈夫だという油断。

 もし阿修羅が巡回する情報を知っていれば、あんな大人数で銃弾をゾンビにぶっ放しながら進むような真似はしなかった。

 

 阿修羅の襲撃により半分以上のプレイヤーは挽き肉にされて死んだ。

 新人達を囮にし、命からがら領主館に着いた男達は、結界を破壊し、領主館の中へと入った。

 

 もう安全だ。

 後は外に出るだけ。


 男達はついさっき、油断により命の危機にあったにもかかわらず、愚かなことに同じ過ちを繰り返す。


 完全に緩みきった雰囲気の中、仕掛けを動かし、隠し通路が隠されている壁が動き出した時、「あが!」という声が領主館のホールに響いた。


 声の方へと向くと、そこには首をテーブルナイフで切り裂かれ、噴水のように血を吹き出す仲間の姿が。


 領主館には敵は出てこない。


 ゲームでの記憶を無根拠に信じ、緩みきっていた男達は錯乱。

 髭面の男は見たことないゾンビが仲間や新人を惨殺しているのを見て、四つん這いになりながら地下へと逃げていった。

 


「くそ! 焦ってシールド全開で展開し過ぎた! もうほとんど残量が残っていないじゃねえか! けどこれでようやく脱出だ! コロン村まで辿り着けばーーー」


 怒鳴っているようにも聞こえるぐらい、大きな声で独り言を漏らしながら進む。

 長い廊下を抜け、出口前の薄暗い広間の中央辺りに差し掛かった頃。それまで漏らしていた独り言がピタッと止んだ。


「嘘だろ。なんでここに・・・」


 一瞬の静寂の後、髭面の男は、か細い声を吐き出すようにして呟く。

 すぐさま背を向けて、逃げだそうとするが、蛇に睨まれたカエルのように、全身が麻痺したかのように動かない。

 気付けば、過呼吸のようになり呼吸が上手く出来なくなっていた。

 避けることが出来ない命の危機にさらされた時、人間は動けなくなる。



「嫌だ・・・じにだぐ、ぎゃあぁぁぁ!!」



 地下室に悲鳴と肉と骨が砕ける音が響くが、それはすぐに止み、また物音しない静寂に戻った。

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