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破滅した世界にて~銃とゾンビと邪神 ~  作者: ルルエル=テン
第二章
20/21

レイと慈悲の心と模擬戦①

 翌日、マリア正門前には、「慈悲の心」の幹部勢が勢揃いしていた。


 「慈悲の心」の同盟レギオン「聖なる盾」のリーダーであり、防衛戦無敗を誇る、王の名を冠するプレイヤー「守護王」であるアスタロス。

 傘下のレギオンでありながら、「慈悲の心」の直轄メンバーを退け、レギオン戦では一番槍を務めるほどの高い実力と信用のある「獅子神楽」のリーダーアベル。

 近距離戦闘にめっぽう強く、奇襲を得意とすることから防衛戦において、ガードクリスタルの護衛という最後の砦としての役割を担うことが多い「武士道」のリーダーマサムネ。

 アスタロス同様、「慈悲の心」発足時からマリーとの付き合いがあり、女性プレイヤーのみで構成されているにも関わらず、マリーの護衛を担う程にマリーからの信頼の厚い

レギオン「戦乙女」のリーダーマチル。


 その他にも「慈悲の心」を纏める面子が、様々な思惑を胸にしながら、今日の主役が来るのを待っていた。


 昨夜、仲睦まじい様子で2人が夕食を共にしたことは全員が知っている。

 アスタロスやマチルを除いて、それを聞いた面々は、今にもレイを殺してしまいそうになる衝動を必死に抑えていた。中には何かしらのアイテムを使って、レイがマリーを催眠状態にしているのではと、根も葉もない話をし出す者も現れる始末。

 実際に相手を催眠状態にするアイテムなど存在しないのだが、それだけ、マリーがレイを特別視することを許すことが出来ないのだろう。


 アベル達は殺気を辺りに撒き散らしながら、正門の入り口にレイが姿を現すのを今か今かと待っていた。






「はぁ~。本当にこんな格好する必要あるの?」

「はい。やはり初期アバターというのは、それだけで相手から低く見られてしまいます。それが結果として必要のない争いを生んでしまう可能性もあるのです。今回の件だってレイが新人アバターでは無かったら、こうして侮られることも無かったかもしれないじゃないですか」

「いや。それとこれとは別だと思うよ。俺の格好がどうこう以前に、マリーへの信奉とかから来る嫉妬みたいなものが原因な気がするんだけど・・・」


 正門に現れたのはレイとマリー。後ろにはいつものようにアリシアが控えていた。


「ほう」

「へぇ~不滅王ってのもあながち嘘じゃないのかもね」


 レイの姿を見たアスタロスは興味深げに目を細め、マチルはこれからの戦いへの期待が高まったのか、獰猛な笑みを浮かべる。


 レイの姿はこれまで見慣れたフード付きの黒い軍服とは違った。

 ボロ切れの様な黒と白の布で出来た浮浪者の様な服を纏い、その布切れが風に揺られてヒラヒラとはためいている。

 そして全身を覆うようなフード付きの黒いコートを上から羽織っていた。フードの中は漆黒の闇と化し、中にあるレイの素顔は見えない。その姿を例えるなら正に死神。


 ZWでは新たなアバターを取得する方法が3つある。1つは敵からのドロップ、2つ目は素材の調合、そして最後はスキルの取得時。

 アベルやマチルのアバターは、主にドロップから取得したものであり、マサムネは調合によって作成したものである。

 一方、マリーが来ている修道服のアバターや、アスタロスが来ている重装備のアバターはスキルを取得した時に手に入れたものであり、レイのこのアバターも「ポイントムーヴ」を取得した時に手に入れたものだ。

 

 ZWでスキル保持者しかない着れないレアアバター。

 普通であれば即座にレアアバターに着替え、見せびらかすように無意味に都市を練り歩きそうなものだが、レイはそうはしなかった。

 理由は単純。単に恥ずかしかったから。

 レイも学生の時に手に入れていれば、喜んでレアアバターに着替えて、他のプレイヤーに見せびらかしていただろう。

 しかし、既に社会人となっていたレイにとって、死神のようなアバターなど中二病の格好にしか思えなかった。

 くどい程に歴戦の猛者感の出た、ボロボロの服装。顔が全く見えなくなる謎仕様のフード。そのどれもがレイの羞恥心を掻き立て、そのレアアバターの使用を遠退かせていた。

 そんなレイでも、やはりレアアバターというのは興味をそそるものがあり、ソロプレイをいいことに一目のつかない場所ではこっそり着替えていたりはしていたのだが。



「おいあれ。噂に聞く不滅王の姿そのまんまじゃねえか」

「いやいや。似たアバターを調合で作ったんだろ」

「でもあんなアバターなんかあったか?」



 レイの姿を見た幹部の一部に「実は不滅王は存在していたのでは」という空気が流れる。


 実はエピチュアやカジュラスに単身で挑んだ際、レイはこのレアアバターを身に付けていた。

 そして、襲ってきたカジュラスのPKプレイヤーや、エピチュアに挑む時にそれを見ていたプレイヤー達により、その姿についても噂が広がっていた。

 アベル達がマリーの言葉を持ってしても、レイが不滅王だと信じていなかったのは、レイが新人アバターであったというのも大きな理由であった。

 

 しかし、伝わっていた姿通りのアバターで現れたレイを見て、レイが不滅王ではないという幹部達の気持ちに揺らぎが現れる。

 

 アベルはその揺らぎを敏感に察知。それを一蹴するように声を張り上げた。


「お前達! たかがアバターが変わっただけだろ!」

 

 アベルの言葉に不滅王の存在を信じかけていた幹部達は取り繕ったようにレイを睨み付ける。


「ほら。やっぱり姿形は関係無いんだよ」

「いえ。一部の人達はもしかしたらと思っている顔をしてますよ」


 ざわつく幹部達をよそに、正門へと着いたレイ達は好奇の目でこちらを見つめているアスタロスの元へと向かう。


「ガハッハッハ! 本当にレイは面白いのう! それが不滅王のアバターか? 格好良いではないか!」

「やはりそうですよね!? 私も格好良いと言っているのですが、本人は嫌だと言って聞かないのです」

「いやアバターの話はいいから、早くルールについて教えてください。どうせ直接戦う以外方法無いでしょうが」


 自身の背中に突き刺さる強い敵意を感じながら、レイはアバターの話から話題を逸らし、アベル達との模擬戦のルールについてアスタロスに問う。


「そうだな。じゃあ今回のレイと『慈悲の心』の幹部達との模擬戦だが、ルールはデュエル戦のシールドブレイクを適用する。フィールドはガードクリスタルの範囲内である半径3kmとし、スタート位置は範囲内であれば自由だ」


 アスタロスの言ったシールドブレイクとは、簡単な話シールドを破壊された方が負けという、デュエル戦における基本的なルールである。

 そもそもデュエル戦とは、一対一の決闘であり、ZWではステータス画面を通して相手に申し込み、それを相手が受諾した場合行える。

 デュエル戦開始時には、プレイヤー達の周囲に結界が張られ、周囲の者に銃弾や爆破が届かないようになる。しかしデュエル開始するには半径500m以内に無関係のプレイヤーがいない場所でなくてはならない為、基本的にはガードクリスタルの結界範囲にある都市外で行われる。


 そして実はこの世界、ゲーム時と同じように、ステータス画面からデュエル戦の申し込みが出来るらしい。昨日模擬戦の形式についてアスタロスが色々と試した結果わかったことだ。

 デュエル戦では相手をキルするのが勝利条件になるデスマッチというルールもあるのだが、この世界のデュエル戦で仮にキルした場合、生き返るのかどうかはわからない。さすがに生き返るか試す訳にもいかなかった為、アスタロスは安全なシールドブレイクをルールとして適用していた。

 シールドブレイクのルールではシールド展開持によるシールド消耗が見られない。どちらかのシールドが破壊されるか、相手側が降参するか、制限時間である10分が経った段階で決着となり、周囲の結界が消える。

 また、シールドは常時展開される形になり、仮に発動していない場合は自動的に身体の表面を覆う形になる。この場合、ダメージを受けると肉体に衝撃がくるだけでなく、ダメージ換算もシールドを全方位に展開している時と同じ量をもらうことになる為、基本的には相手の攻撃は展開したシールドで防いだ方が良い。

 アイテムを使うことも可能ではあるが、デュエル戦をするものをからしたらそれは邪道とされており、アイテムを一度使おうものなら、その後デュエル戦を受けてもらえない。

 多対多のレギオン戦と違い、一対一のデュエル戦では双方のプレイスキルの差がそのまま対戦結果に反映される。

 レギオン戦が組織力と連携による戦いだとするなら、デュエル戦は正に己のプライドと実力をかけた戦いということになる。


 つまり、このデュエル戦でレイが勝てば、相手はレイの実力に対して何も異論を唱えられなくなるということだ。



 アベル達もそれがわかっているのだろう。アスタロスの説明を真剣に聞いていた。


 アスタロスはその後、シールド破壊後の攻撃の禁止をルールに付け足し、ガードクリスタルの結界内とは言え、マリーを狙う者がいる可能性を考慮して、周囲とマリー近辺の警戒の強化について述べると、早速模擬戦の開始を宣言する。


 戦闘フィールドとなる高原へレイが足を進めようとした時、後ろでマリーがレイにしか聞こえない小さな声で意味深なことを呟いた。


「ちなみにですが、今からレイが相手をするアベルは『慈悲の心』の中でもデュエルの戦績は五指に入る実力者です」

「うん? だから気を付けろってこと?」

「いえ。そういう訳ではありません。戦えば私の言いたいことがわかりますよ」


 マリーはそう言って、軽く笑みを見せた後、アスタロスとアリシアの間に入る形で正門まで下がった

 

 (話の核心部分をすぐに話さないのは、昔の俺の教え方への当て付けかな・・?)



 首を傾げながらフィールドの真ん中へとゆっくりと歩いていくレイ。

 既に目の前にはアベルが定位置に立って、こちらを強く睨んでいた。

 

 本来の実力順でいえば、アベルがレイと戦うのは最後の方である。しかし、アベルは「慈悲の心」の一番槍は自分だとアスタロスに直訴していた。

 結果、レイの最初の相手はアベルとなった。



「いくら姿形をそれなりにしても、デュエル戦をすれば直ぐに化けの皮が剥がれるぞ」

「はぁ。不滅王を名乗ったつもりなどないのに、どうして嘘付き呼ばわりされなきゃいけないんだ。もういいからさっさと始めよう」

「くっ・・貴様。まぁいいだろう」


 相手にされてないとでも思ったのか、額に青筋を浮かべるアベルであったが、マリーの前ということもあり、顔を顰めながらも冷静を装う。

 即座にレイのステータス画面にアベルからのデュエル申し込みが届く。

 レイがそれを許可すると、レイとアベルの周囲を包むように透明な結界が張られた。


「これはゲームのまんまだな。一体どういう力が働いているのか。ちょっと気になるな」

「今からデュエル戦だというのに・・・大した自信だな」


 アベルの口調は冷静そのものだが、額に太く浮かんでいる青筋を見れば、相当にキレているのがわかる。


 (ZWではプレイスキルと同じくらい心理戦ってのも重要なんだけどな。これが「慈悲の心」の中では実力者に入るのか。マリーが言いたいことが何かわかってきた気がする・・・)


 両者が銃を構える。レイはサブマシンガンでアベルは突撃兵のみが使えるライトマシンガン。


「それではレイとアベルのシールドブレイクによる模擬戦を開始する!」


 アスタロスが叫び終わると同時に開始の合図であるC4の爆発音が響く。


 まず動き出したのアベル。アベルはライトマシンガンをレイに向けて放ちながら走り寄ってくる。

 レイは銃弾をアベルを中心に円を描くようにして走りながら回避していく。


 (なんで射程も威力もサブマシンガンより高いライトマシンガンを使ってるのにわざわざ接近してるんだ?)


 レイは回避を続けながら、アベルの取った戦法の意味がわからず、首を傾げる。


 アベルが取った戦法は至極簡単なものであった。

 威力、連射、マガジン数とバランスの取れたマジックガンであるライトマシンガンを放ちながら、レイとの距離を詰めていくだけの戦法。

 確かに射撃スキルは高く、所々でシールドを掠めてくる。シールドの減りようからライトマシンガンの威力も相当なものだとわかる。 森で襲撃してきたザグや、ソーラで戦ったガリレウ達と比べても、アベルのプレイヤーとしてのレベルは高い。

 

 しかし、プレイスタイルはライトマシンガン頼りのゴリ押し戦法であり、猪突猛進のようにひたすらにレイとの距離を詰めようとしている。

 あれだけの射撃スキルがあるならば、わざわざ近付いてくる必要はない。むしろサブマシンガンより長い射程距離を活かして、距離をとって戦う方が有利な戦況で戦えるはず。

 それにアベルの速度を見る限り、あまり俊敏性は高くない。どちらかというと火力とシールド強度を重点的に上げているのだろう。


 高い射撃スキルを持ち、火力とシールドに特化しているにも関わらず、足を使ってレイに接近しようとしてくる。

 まるで、自分の長所を潰しているような戦い方をするアベルの考えがわからず、レイはこの戦法に何か裏があるのではと警戒を強めながら、観察を続けるが、それ以外に特に変わった攻撃を仕掛ける様子は見られなかった。


 (あまりに無謀な戦い方だよな。近付きすぎるとあっちだってダメージを受けるリスクが高まる。接近戦となれば身軽なサブマシンガンの方が有利なはず。狙いはいったいなんだろう)


 考えても埒が明かないと、回避ばかりしていたレイも攻勢に出る。

 まずレイは自身の手前にスモークボムを投下した。スモークボムは瞬く間に煙幕を撒き散らし、アベルの視界からレイの姿が消える。

 レイの姿が見えなくなったことで、足を一時的に止めたアベルは煙幕に弾幕を張るようにしてライトマシンガンを放った。


「いくら姿を消しても、そこにいることはわかってる! これでは避けれまい!」


 マガジンが無くなるまでひたすら弾幕を張り続けるアベル。その顔には既に自分の勝利を確信したような笑みが浮かんでいた。


「はぁあまりに軽率。リロードはZWにおいて最も隙が出る動作。相手の目の前で弾切れなんて一番やってはいけないことだ」


 そんなアベルを嘲笑うかのように、レイの声が煙の中から響いた途端、煙幕の中から更に3つのスモークボムがアベルを囲うように投下された。

 周囲全域を囲うように発生した煙幕に、アベルは警戒したようにシールドを全面に展開する。


「ちっ卑怯な。少しは正々堂々戦ったらどうだ」

「いやいや。デュエル戦の醍醐味はどれだけ自分の有利な戦況を整えるかだよ。単なるドンパチで満足するようでは二流もいいとこだね」

「貴様!」


 ようやくリロードを完了させたアベルは声が聞こえる右方向へ向き銃弾を放つ。

 しかし、アベルが銃弾を放つのと同時に、アベルの左側から銃声が響いた。


「なっ!?」

 

 背後を襲われる形となったアベルは焦ったように半身になって銃弾を避けようとするが、全てを回避することは出来ず、シールドが削られる。

 

 (いつの間に左側に回ったのだ!?)


 すぐさま左方向に向けてライトマシンガンを放つアベルであったが、今度は右側から銃声が鳴り響く。


「何故だ! 足音も鳴らさずどうやって移動している!」


 アベルは慌てた様子で周囲を見渡す。足音は一つも聞こえず、レイの居場所が何処にあるかわからない。


「さぁて。それは自分で考えないと」


 アベルが周囲を窺っていると、その姿を嘲笑うようなレイの声が今度は全方位から響く。

 アベルは前からも、後ろからも、右からも、左からも響くレイの声に、何処に標準を合わせたらよいかわからなくなる。


 すると、今度はアベルの背後から銃声が聞こえた。

 それを左にステップを踏むことで避けるアベルであったが、背後からの銃弾を避けた直後、左側から煙幕を突き破って銃弾が襲いかかってきた。

 着地のタイミングを襲われたアベルは、それを避けることが出来ず、全弾が命中。

 シールドが軋む音を立てながら、細かいひび割れを形成していく。


 (このままでは負ける! どうにか煙幕の中から出なくては!)


 何処にいるかわからないレイ、何処からくるかわからない銃弾。

 アベルはとにかくこの煙幕の中から出なくてはならないと、唯一銃弾が放たれていなかった正面見据えると、一気に抜けようと走り出す。


 煙の中を駆け抜け、煙幕を抜け出すアベル。


「よしこれならあいつの姿をーーー」


 アベルが煙幕へと振り返ろうとした時、アベルの足元が大きな爆発を起こした。


「ぐわっ!」


 シールドによってアベル自身にダメージはないものの、爆破の衝撃により、アベルの身体を吹き飛ばされ、宙に浮く。

 爆破を間近で受けたシールドは、大きなひび割れを形成していた。


 アベルは空中に身を投げながら、地面へと視線を移す。そこには銃口を自分に向けるレイの姿。


「くそおぉぉぉ!」


 悔しそうに顔を歪め、咆哮を放つアベルであったが、空中にいる状態ではどうしようも無かった。

 


 もはや単なる的と化したアベルはレイのサブマシンガンの銃弾を全て受けとめる。


「こんなもんかな」


 レイはシールドのひび割れを見て、ダメージ量を計算しながら、銃弾を命中させていく。

 後少しで破壊というところで、サブマシンガンを下ろろし、落下していくアベルを眺める。


 シールドに多量のひび割れを作ったアベルは顔歪めながらそのまま落下し、地面へと叩きつけられた衝撃でシールドが破壊された。

 

 アベルのシールドが破壊されたことで、レイとアベルを囲っていた結界が消えていく。


「勝者レイ!」


 結界が消えたところで、アスタロスの耳を劈くような声が正門前に響く。

 レイは一度大きく息を吐き出すと、満面の笑みを浮かべながらこちらを見ているマリーの元へ向かった。


 一方、アベルは負けたショックから地面に倒れたまま起き上がってこようとしない。それを見かねたマチルとマサムネが、レイとすれ違うようにしてアベルの元へと向かっていった。


「『慈悲の心』の幹部相手に機械兵や工作兵の真似事なんて。余裕ですねレイ?」


 マリーはレイに対して嫌みともとれる内容を口にしながらも、その顔は嬉しくて堪らないと破顔させている。


「はっはっは! あんな面白い戦いをする奴は久々に見たぞ! レイよ次はワシとどうだ?」

「いやそれは・・・」


 アスタロスは笑い声を上げながらレイの戦いを素直に称えると、愛用のガトリングをちらつかせる。


「アスタロス殿! 今回の模擬戦は『慈悲の心』とそやつの戦いですぞ! いくら同盟レギオンであろうと、横取りは許されぬことかと」


 レイが反応に困っていると、レイの後ろからアスタロスに異論を唱える者が現れる。

 それはアベルに肩を貸した状態のマサムネであった。肩を貸されたアベルはショックからか、力無く俯いている。


「次は拙者が相手をさせてもらう。シールドポーションは『慈悲の心』で用意している。それを使って回復が終わり次第すぐにでも始めようぞ」


 マサムネは全身から闘気を発しながら、レイを見据える。

 模擬戦前まではレイを侮っていたマサムネ。

 しかし「慈悲の心」の実力者であるアベルを目の前で倒されては、容易な相手ではないと認識を改めざる負えなかった。


 マサムネはいまだに俯いたままのアベルをマチルに任せると、颯爽と戦場となるフィールドに向かう。


「いやいや。やる気があるのはわかるんだけど、戦闘終わった直後なのに休ませてくれないの?」

「またそんな事言って。全然疲れてないじゃないですか。私は騙されませんよ」

「別の意味で色々疲れてはいるんだけどね」


 背後にレイが目を向けると「慈悲の心」の面々が敵意と畏怖が混ざったような視線を向けてきていた。


 (はぁ。後何回戦えばあの人達は俺を認めてくれるのか)


 やれやれと首を横に振ったレイは、マサムネの待つフィールドへと、重くなった足を引きずるようにして向かった。


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