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破滅した世界にて~銃とゾンビと邪神 ~  作者: ルルエル=テン
第二章
21/21

レイと慈悲の心と模擬戦②

「では始め!」


 アスタロスの開始を合図にレイとマサムネのデュエル戦が始まった。


 それをアベルは正門の外壁に座り込みながら、虚ろな目で眺めていた。

 「慈悲の心」でも上位に入るプレイヤーであるアベルにとって、デュエル戦で完膚なきまでに負けたのは久しぶりのことであった。

 負けること自体は今までもあった。

 マリーの護衛を務めるアリシアやマチルとは戦績は五分五分であり、あまりデュエル戦を得意としないマサムネであっても勝率は6割程度。

 それでも、善戦した上で惜しくも敗れるといった形であり、レイの時のように何も出来ずに敗れるといったことは無い。


 (あんな負け方。アスタロスとやった時以来だ)


 アベルはレイとの戦いから、過去に一度もデュエル戦で勝てなかったアスタロスとの戦いを思い出す。

 「守護王」として名高いアスタロスとは、マリーとアスタロスが同盟を組んでいることもあり、何度もデュエル戦をさせてもらえた。

 しかし、アスタロスとのデュエル戦は何度挑もうが、結果は惨敗。アスタロスに本気を出させることすら出来なかった。


 レイとの戦いも同じ。

 攻めこんでいたつもりが、いつの間にか相手の術中に嵌まり。気付けばシールドを破壊されていた。

 まるで子供扱いのようにあしらわれた上での敗北。

 確かにレイを侮っていたことは認めよう。だが、仮にレイを侮っていなかったとして、あの時の自分に何か出来ただろうか。

 いや多分結果は同じだっただろう。


 アベルはレイがデュエル戦の時に言っていたことを思い出す。


『デュエル戦の醍醐味はどれだけ自分の有利な戦況を整えるかだよ』


 戦況を整える。これまでアベルはそんな事を考えたことは無かった。

 何故なら大概の相手はアベルの射撃スキルを前に、逃げの一手に追い込まれ、それを追撃するだけで勝てていたからだ。

 アスタロスだけは例外であったが、それは相手が悪いだけだと思っていたアベルは戦い方というもの深く考えていなかった。


 レギオン戦であれば、各自に役割があり、刻々と変わる戦況に合わせて動かなければならない。しかし、デュエル戦であれば、ものを言うのは個人のプレイスキルのみ。

 レイと戦う前のアベルはそう思っていたが、先の戦いでその考えを打ち砕かれた。


 デュエル戦でも、戦場となるフィールドや相手の戦法によって戦い方を柔軟に変化させていく必要がある。


 普通で考えれば、当たり前のことなのだが、なまじ実力があったアベルはこれまでそれに気付けなかった。


 (不滅王か。どうりで強いわけだ。マリーが信頼を寄せるのも頷ける)


「レイはどうでしたか?」


 憑き物が落ちたかのように、自嘲するアベルの元にマリーが意味深な笑みを浮かべながら近づいてくる。


「マリーか。俺を笑いに来たのか?」

「そんな。アベルは『慈悲の心』でも有数の実力者です。今回は相手が悪かった。ただそれだけです」

「そうか、相手が悪かったか。マリーがそれだけ言うってことは、あいつは本当に不滅王なのか」

「当たり前です。レイは私の師ですよ?」

「・・・どうりで強い訳だ」


 レイがマリーの師であることを聞き、驚くアベルであったが、すぐに納得したように目線を戦いに向ける。


 (さてマサムネ相手にどのような戦いを見せてくれるか)


 自分を圧倒したレイが、自分とはプレイスタイルの全く違うマサムネ相手にどの様に戦うのか、多少癪にさわりながらも、楽しみに感じてしまうアベル。


 そんなアベルの視線の先には、予想外の戦い方を披露するレイの姿があった。








 フィールドの中央ではマサムネが息を切らしながら、マチェットと呼ばれる先端に丸みがあり、刃渡り50cmもある剣を振り回していた。


「はぁはぁ。拙者を馬鹿にしているのか」

「あはは。馬鹿にはしてないよ」


 マサムネの鋭い眼光の先にいるレイは息一つ乱しておらず飄々とした態度を見せていた。


 マサムネのプレイスタイルはマチェットを基本とした近接戦闘である。

 その他、刀身が射出可能なスペツナズナイフや遠投が可能なトマホークも使う。




 何故銃が使えるZWにおいて、わざわざそんなスタイルを使うのか。これにはある理由がある。

 近付かなければ攻撃出来ないナイフ類を使うのは、端から見れば、非効率であり、リスクが高い。

 ゾンビに噛まれれば即死のZWでわざわざ近接武器のスキルを上げる物好きは少ないだろう。射程を考えれば、銃を使った方が安全にゾンビを倒せる。

 

 しかし、近接武器には銃より遥かに優れている点が一つだけある。


 それは、シールドに対する特攻性能だ。


 例えば破壊するのに、サブマシンガンで40発は命中させる必要があるシールドがあるとする。

 それを近接武器の中でも最も基本的な武器であるサバイバルナイフだと、たった2回切りつけるだけで破壊が可能になるのだ。

 また銃を使わないことから、限られたスキルポイントを全てフィジカルスキルに当てられる為、シールド強度や機動力といった身体機能が群を抜いて高い。

 銃と違い音がしない為、レギオン戦では相手に捕捉されにくいメリットもあり、暗殺者のようなプレイが可能になる。


 実際にマサムネもガンスキルには一切スキルポイントを振っておらず、スキルポイントのほとんどをフィジカルスキルに振っている。

 属性値も雷属性をマックスまで上げることで、更にシールドへの威力を高めたマサムネの近接武器は、並みのプレイヤーであれば一撃でシールドを破壊出来る威力を持っていた。


 マサムネがこのスタイルに目覚めたのは、あるプレイヤー達のデュエル戦を見たことがきっかけだった。

 そのプレイヤー達はFPSゲームであるZWのデュエル戦であろうことかサバイバルナイフのみで戦っていた。

 二人は格ゲーのような激しい動きで、時には相手の喉元を切り裂くように、時には相手の心臓を突き刺すように、ナイフを自由自在に使っていた。

 その姿は剣舞のように美しく、それに感化されたマサムネは当時ガンスキルを上げていたキャラを消去し、新しくキャラを作成。

 周囲に馬鹿にされながらも、必死に近接戦闘のスキルを磨き、遂にはレギオンの中でも最大規模である「慈悲の心」の幹部にまで登り詰めていた。

 

 「格闘王」とは戦ったことはないが、仮に「格闘王」とデュエル戦をすることになっても、善戦出来る程度には自信を持っていたマサムネ。


 しかし、そのマサムネの攻撃はレイのシールドに掠りもしなかった。


「先のアベルとの戦いで、機械兵だと思っていたのだが、あまりに動きが早すぎる。いったいどういうステ振りをしているんだ」

「それは考えるだけ無駄だと思うけど」


 マサムネがレイのステータスについての疑念を言葉にするが、レイは飄々とした態度を崩すことなく、それを受け流す。

 

 (いったい何者なんだ。どんな角度で切り込もうと、その全てを紙一重で躱されてしまう)


 攻略の糸口が見えず、かといってレイから何かを仕掛けてくる様子も見られない。

 両者が動かないことで、戦況は一時膠着状態となってしまう。


「おい! もう残り2分を切ったぞ! このまま引き分けにするつもりか!」


 あまりに動かない2人を見たアスタロスが、痺れを切らして声を張り上げた。


 (そうは言っても。隙も死角も見当たらないのだ。一か八か特攻を仕掛けるべきか)


 残り時間が少ないと聞いたマサムネは焦りながらマチェットを握る手に力を込める。

 するとレイがおもむろにサバイバルナイフを両手に持ち出した。

 逆手に構えられたサバイバルナイフを胸の前で交差させたレイは、前方に倒れるような姿勢から一気に加速。マサムネに肉薄する。


「近接攻撃だと!」

「そうだよっと!」


 アベルとの戦い方から、レイがある程度距離をとって戦うことを得意としているプレイヤーだと勘違いしていたマサムネは虚を付かれたように姿勢を崩す。

 片方のナイフはマチェットで辛うじて防いだものの、もう片方のナイフがシールドを捉えた。


 パキンッと割れる音を響かせるシールド。

 マサムネはナイフと鍔迫り合いになっているマチェットを力ずくで押し込み、なんとかレイを後退させる。


「いったいどういうことだ! サブマシンガンを使っているのは見た! であるならば何故そこまで近接戦闘ををこなせる!? 今の動きはフィジカルスキルを最大限まで上げた者の動きだ!」

「さぁ? それより大丈夫かい? シールドの状態を見る限り、後2発受けたら終わりだよ」


 暖簾に腕押しとは正にこの事、いくらマサムネがレイのステータスについて問おうとも、レイはそれをのらりくらりと受け流す。

 そもそもデュエル戦を行っている相手に自分のステータスを話すなど愚の骨頂でしかないのだが。


 マサムネは苦い顔をしながらマチェットを手放すとレイと同じサバイバルナイフを両手に持った。

 そして先ほどレイがやったように急加速してレイに肉薄。2本の刃をレイに突き立てる。

 

 途端に鳴り響く甲高い音。レイはマサムネの突き立てた刃をナイフで受け止めていた。

 マサムネはそのまま肉薄した状態のままナイフを振り続ける。カキン、カーンとフィールドの中央では金属と金属がぶつかり合う音が響き続ける。


 いくら攻撃を繰り出そうとも、レイに防がれるマサムネは段々と苛立ちを募らせる。

 

 (ザバイバルナイフでは届かない。ならば!)


 マサムネは連撃を加えながら、必殺の一撃を決めるべくタイミングを計る。

 両手を高く上げ、ばつを描くようにして放たれたマサムネのナイフをレイが受け止める。

 再度、鍔迫り合いとなった両者だったが、ここでマサムネが動いた。


 先ほどは焦っていたこともあり、力ずくで押し込んだマサムネだったが、今度はレイが力を込めるタイミングに合わせて半歩引いたのだ。

 それにより重心が前にずれるレイ。マサムネはそれを待ってましたとばかりに更に大きく一歩引くと、サバイバルナイフを手放し、スペツナズナイフを両手に持つと、前傾姿勢のレイに目掛けて刀身を射出させた。


 (これならば! ・・何!?)


 狙った通りの展開にしたり顔になるマサムネであったが、2つの刀身が局所的に展開されたシールドに防がれているのを見て、驚愕の顔に変わった。


「隙ありだよっと!」


 するとレイは今度はおかえしとばかりに、いつの間にか切り替えていたスペツナズナイフの刀身をマサムネに射出した。


「ぐっ!」


 2本の刀身を喰らったマサムネのシールドは細かいひび割れを作っていき、全身に纏っていたシールドがガラスのように粉々に割れた。




「勝者レイ!」


 それを確認したアスタロスが大声でレイの勝利を告げる。

 アスタロスの背後で観戦していた「慈悲の心」の幹部達は全員が信じられないと頭を抱えていた。

 アベルに続きマサムネまで、一矢報いることも出来ずに負けたのだ。


 最大規模を誇るレギオンとしてのプライド粉々にされたに等しい。


「おいマリー。あいつ・・いやレイはいったい何者なんだ? 俺とやった時とはあまりにプレイスタイルが違いすぎる。あれはプレイスキルだけでは説明がつかないぞ!?」

「だからレイは不滅王だと言ったではありませんか。不滅王とは私やアスタロスと同じ、王の名を冠するプレイヤー。そこまで言えば理解出来ますよね?」

「・・・スキル持ちか。はは・・ははは! そりゃ強い訳だ。スキル持ちに共通して言えるのはプレイスキルが群を抜いて高いプレイヤー達ってことだ。何て奴に喧嘩を売ってしまったんだ俺は」

「たがら言ったでしょう? 相手が悪かったと。それにレイはZWで唯一と言っていいソロプレイヤーですよ? そんな相手にデュエル戦で挑むなど他の王でも厳しいのじゃないでしょうか。でも大丈夫ですよ。レイはこの程度の事では怒りません。何せ元の世界でのあだ名は善人の三太郎ですから」

「三太郎って・・・」


 今更ながら、喧嘩売った相手を間違えたと頭を抱えるアベルに、マリーは自分のことのように誇らしげにレイのことを語る。


 そんなマリー達の元に、筋肉を解すように肩を伸ばすレイと、負けたことで肩を落とすマサムネが戻ってきた。

 マリーがアベル戦の時と同じようにレイの勝利を祝っていると、外壁に座り込んでいたアベルが立ちあがり、レイの前で頭を下げた。


 それを見て驚いたのは「慈悲の心」の面々。

 最もレイを敵視していたはずのアベルがそのレイに向かって頭を下げたのだ。周囲が一気にざわつき始める。

 

「昨日は大変失礼なことを言ってしまい。申し訳無かった。実際に戦い、そしてマサムネとの戦いを見させてもらいあなたが本物の『不滅王』だと確信した。あれだけの無礼を働いて何なのだが、また機会があれば稽古をつけて欲しい」


 そう言って頭を上げたアベルの顔は真剣な顔そのものであった。

 

「拙者もその節は失礼致した。レイ殿の近接戦闘術には脱帽した。そして同時にこうなりたいと思うようになった。アベルと同じく拙者もレイ殿から教えを乞う機会を頂ければ幸いである」


 背後にいたはずのマサムネもアベルの隣に立つと、同じように頭を下げた後、真剣な眼差しをレイに向ける。


「レイ。どうでしょうか?」


 隣に立つマリーがわざとらしい上目遣いでこちらを見ている。


「マリ、もしかしてこれが真の狙いだったんじゃ・・・」

「いえいえ。そんなことはありませんよ。レイのプレイスキルを見れば、教えを乞いたくなるのではなんて想像することも出来ませんし。私以外に指標となる人が出来れば、多少は依存体質が治るかもなんて微塵も考えていません。レイの教えの基本は『戦闘中常に身体も頭も働かせろ』であり、その教えによって自ら動き自ら考えるようになるかな、なんてことも思っていません」

「ははは。本当に恐ろしい子になって・・・」


 今になってマリーの真の狙いに気付いたレイは乾いた笑い声をあげる。

 目の前の2人は昨日の会議の時とは違い、真剣で何処か不安げな様子でこちらを見ている。


 (やめろやめろ。そんな顔で俺を見るな! 俺はやる気に満ち溢れたお願いをしてくる奴が一番駄目なんだ!)


 元の世界で勤めていた会社でも、お人好しを発揮していたレイ。しかし、全ての頼まれごとを100%引き受けていた訳ではない。

 自分の受け持つ仕事量のキャパを越える場合は、追加の仕事は他に回してもらうし、ZWが絡んでくると休日出勤を断ることもあった。

 それでも、その仕事量のキャパ自体がおかしく、常に人の数倍の仕事をこなしており、休日出勤を断るといっても、前々日から泊まりこみで仕事を終わらせ、なんとか休みを確保していただけなのだが。


 そんなレイには絶対に断れない相手というものが存在していた。

 

 そのレイが頼みを断れない相手とは、仕事を押し付けてくる仲の良い同僚でも無く、無理難題を持ってくる上司でも無く、色仕掛けで言い寄ってくる綺麗な女性でもない。

 断れない相手とは、やる気に満ちた目で仕事を教えて欲しいと頼みこんでくる後輩であった。


 レイはまず、後輩という存在に弱い。なんだかんだで責任感の強いレイは面倒見が非常に良かった。

 それ故、やる気のある後輩達からの頼みごとは断ることが出来ず。自分の仕事の時間を割いてまで、親身になって教えてやっていた。

 もちろんその教えていた時間分はサービス残業をしてまでだ。

 結果、主任となり部下を持つようになったレイは、それまで教えていた後輩である部下から、依存とも取れる信頼を勝ち取っていた。



 そんなレイが真剣な表情で教えを乞いたいと話すアベルとマサムネを突き放せる訳がなかった。

 2人とも見る限り20台前半であり、会社での部下達と被った。そうなれば頷くことしか出来なくなるレイ。


「ありがとう。ぜひ頼む」

「ご指導ご鞭撻の程、よろしく頼む」


 レイの頷きを見て、ホッとした様子も束の間、すぐさま深々と頭を下げるアベルとマサムネ。

 2人は頭をあげると小声で何やら話をしながら「慈悲の心」の幹部集団の元に向かっていった。


「レイ。ありがとうございます」

「仕方ない。何よりマリの頼みだからね」


 マリーはレイが2人の願いを聞き届けてくれた事に満面の笑みを浮かべる。

 

「お二人さん。良いところ邪魔して悪いけど。次はあたしの番だわ。さっさと始めるわよ」


 大きく張り出した胸の下で腕を組んだマチルが待ちきれないといった様子で声をかけてくる。


 振り向いたレイが咄嗟に視線を下に逸らす。

 隣にいたマリーが静かに目を細める。


「さぁさぁ。早く行くよ。もたもたしてると日が暮れちまうよ」


 マチルはレイの腕を取ると、フィールドへと引っ張っていく。


 程よい弾力を持つ何かがレイの腕を刺激し、その度に顔を赤らめるレイ。

 それを見たマリーが一度、自分のものを確認した後、静かに額に青筋を浮かべた。


「レイ。即効で終わらせて下さい」

「えっ急にどうしーーー」

「わかりましたかレイ?」

「あぁわかった」

「何でマリーちゃん怒ってるのかしら」

 

 レイに有無も言わせず、早く終わらせろという聖女らしからぬ発言に首を傾げるマチルであったが、あまり細かい事を気にしない性格なのか、すぐに考えることを止め、レイの腕を引っ張っていく。


「レイ。いや不滅王楽しみにしてるわよ」


 フィールドについたマチルはマントを剥ぐと、その魅惑的な身体をレイの前に晒す。

 その途端、何故か正門の方向から冷気のようなものを感じるレイ。

 その原因がわからないレイは、新手の罠か何かではないかと警戒しながら周囲を見渡す。

 冷気は嫉妬に駆られたマリーが発しているのだが、レイはそんなことはを知るわけもなく、鋭い眼差しで全方位を細かく注視していた。


「どうしたの?」

「いや何でもない。誰かに強い殺気を浴びせられているような気がしてね。」

「あらそれは物騒な話ね本当に大丈夫?」

「周囲を見る限りは大丈夫だったよ」

「じゃあ始めても大丈夫そうね」


 マチルは獰猛な笑みを浮かべると、両手からハンドガンを出現させる。


 マチルはガンマンの様に器用に手元でハンドガンを回転させる。

 しかし、レイの目はその両手のハンドガンでは無く、別の方に吸い寄せられていた。

 

 (小刻みに揺れている・・・っていかんいかん!)


 ふと我に返り、視線を再度下に反らすレイ。


「せっかくハンドガンの小技を見せてあげてたのに下を向くなんて失礼よ」


 マチルはレイにハンドガンを使ったパフォーマンスを見せていたつもりだったらしい。

 それなのに、レイが下ばかり向いてこちらを見てないことに気付いたマチルは不服そうにプイッとそっぽを向く。


 ブルンっと揺れる胸部を見ながらレイは思った。


 これは違う意味で強敵だと。


 (いやぁ目のやり場に困るな。集中出来ないし、ずっとは見てられない。もしかして今までで一番の強敵かも)


 まさか、こんな形で追い込まれると思っていなかったレイは頭を悩ませながら、ステータス画面を開いた。

 

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