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破滅した世界にて~銃とゾンビと邪神 ~  作者: ルルエル=テン
第二章
15/21

決着と正体と脱出

 マリー達はクロウの囲いを抜け、大きく迂回するように、屋上から屋上を飛び移っていた。

 レイが空中で爆破起こしたことで、クロウのヘイトがレイに集まったこともあり、ひとまず多量のクロウに追われるという危機を脱したマリー達は、大通りを挟んだ先の屋上にいるレイの元へと急いで向かう。


 光属性のマリーと氷属性のアリシアでは空中ステップを使うことが出来ない。現在バフにより一回だけなら空中ステップは可能だが、たった一回の空中ステップでは大通りを越えることは不可能。


 その為、マリー達は一旦門まで向かい、都市を囲う外壁を伝って隣の建物へと移ろうと考えていた。

 

「マリー様! ゾンビの数が」

「ええ。少なくなってきましたね」


 臭気瓶の効果により、ゾンビの大部分が港に流れているのだろう、門の近くになればなるほど、ゾンビの数が減ってきていることがわかった。

 これなら阿修羅さえどうにか出来れば脱出も難しい話ではない。

 

「後はレイが無事であれば良いのですが」


 門に向かいながらもレイと阿修羅が戦っているであろう場所に視線を移すマリー。

 既に門に程近い場所まで来ていたマリー達の場所からではレイの姿は確認出来ず、小さい土煙が立っていることしかわからない。

 

 最後に姿を確認したのは、レイが手榴弾の爆破を利用して隣の建物へと移ったところまで。クロウの群れに囲まれ、阿修羅がすぐそこまで迫っている中、レイは手でマリー達に先に行けと指示を出していた。


「ようやく会えたのです。レイを死なせる訳にはいきません」


 マリーはありとあらゆるバフをアリシアと自身にかけると、スタミナ消費を無視して、門へと全力で駆けていった。






ーーーーーーーーーー



 周囲のクロウを全て撃ち落としたレイは、肩で呼吸をしながら目の前に立ち塞がる阿修羅を見上げていた。

 領主館で戦った阿修羅と違い、目の前にいる阿修羅は魔法は使えないのだろう。ショットガンで撃たれた2本の腕の拳は砕けたままであり、崩落によるダメージからか、全身からドス黒い血を流している。

 満身創痍にも見える姿をしながらも、何としてもレイをこの場で排除してやろうという強い意思を感じさせる6つの眼がレイを見据えていた。


 片やレイも万全とは言い難い状態で阿修羅と対峙していた。

 何十羽ものクロウを撃ち落としたことでMPはほとんど底をついており、手榴弾を間近で受け止めたシールド残量は3割を切っている。

 スタミナも肩で呼吸をしなければならないほど消耗しており、マリーのバフも切れていた。

 

 そんな状況であるにも関わらず、レイの表情からは悲観でも諦観でもない別の感情が読み取れた。


 それは高揚であり、愉快であり、とにかく心が踊るといった感情。


 愉快そうに口元を歪めて小さな笑みを浮かべるレイであったが、自身でも何故こんな状況を楽しいと思えているのかはわかっていない。

 

 MPがほとんど切れている状況では手榴弾等の爆破武器は使えない。銃も今ある弾倉を打ち切ってしまえば、MPは空になるだろう。

 阿修羅はレイを拳で捉えればそれで終わりだが、レイは一発銃弾を阿修羅に当てれば倒せる訳ではない。

 圧倒的火力の差が阿修羅の優位性を示していた。

 確かに互いに満身創痍であることに変わりない。しかし追い詰められているのは間違いなくレイである。

 

「あはは! こりゃいよいよ俺もおかしくなってきたかな?」


 レイは自分でもわからない感情の変化に戸惑う一方、今回に関してはこのままで良いと、全長20センチ程度のナイフを両手に構えた。

 

「ふぅ~。阿修羅と肉弾戦か。こんな精神状態でもないと絶対に出来なかっただろうな。けどMPがない以上これしか方法がないしね」


 ナイフを構えたレイは、気構える様子も無く、自然体のままに阿修羅に近付いていく。


「グガアアアア!」


 阿修羅は舐めているのかと言わんばかりの雄叫びを挙げるとレイに向かって拳を振り落とす。

 レイは半身になってそれを避けると、振り落とされた腕に乗って加速。左の肩まで上がっていくと、両手のナイフを阿修羅の左の顔の両の目に突き刺す。

 両目を潰された阿修羅が暴れだし、肩に乗るレイを握り潰そうとしてくるが、レイはそのままナイフを手放し阿修羅の背後に着地し、阿修羅の拳を回避。再度ナイフを両手に出現させる。

 そして未だに背中を見せている阿修羅の右膝目掛けて、ナイフを射出する。

 

 レイが使っているナイフはスペツナズナイフと言われ、刀身を射出することが出来る。

 突き刺すことに特化した両刃の直剣形、タガーのような形をしており、通称弾道ナイフ又は発射ナイフと呼ばれる5m程度の遠距離攻撃が可能なナイフである。


 スペツナズナイフの刀身は阿修羅の膝裏に突き刺さり、右膝を地につける阿修羅。

 背後にレイがいると気付いた阿修羅が振り向いた直後、更に2つの刀身が阿修羅を襲う。


「グオオオオオオ!」


 右の顔の両目に深く突き刺さったナイフの刀身。左右の顔の目を潰された阿修羅は怒りの砲口をレイに向けて放つが、レイはそんな阿修羅を嘲笑うかのように両手にナイフを出現させると、刀身が深々と刺さっている右膝にダメ押しとばかりにナイフを再度射出する。

 射出されたナイフは元々刺さっている刀身の背を押すようして右膝に刺さる。内部深くまで入った刀身は阿修羅の膝関節に亀裂を作った。


 立ち上がろうとした阿修羅だったが、亀裂の入った右膝では阿修羅の体重を支えることは出来ず、自らの体重に押し潰されるようにして右膝が破壊される。


 そのまま右を下にして倒れ込む阿修羅。


 もちろんレイがそれを黙って見てる訳も無く、阿修羅に駆け寄りながら、まずはナイフを2本射出し残った左膝に撃ち込む。そして両手にナイフを握りしめながら加速したレイは、速度を落とさず跳躍すると空中ステップを使い、阿修羅の上を取るとそのままナイフを下向きに構えながら。


「これで足は終わりっと!」


 全体重をかけるようにしてナイフを振り落とした。

 振り落とされナイフは、右膝を破壊した時と同じように、先に刺さっていた刀身の背を押すようにして深く内部に押し込む。

 そのまま手が傷口に埋まるぐらいナイフを押し込んでいると、何か硬い物が砕けた感触がレイに伝わった。


「これで立てなくなったかな」


 そう言ってもがく阿修羅の前に立ったレイは、今度は刃渡りが20センチはある大柄のサバイバルナイフを両手に持つ。

 仰向けになった阿修羅は、苦し紛れにレイを押し潰そうと2つの拳の手の平を広げて振り降ろすが、バックステップでそれを躱したレイは地面に叩きつけられた阿修羅の手首を両手のナイフで切り裂く。

 手首の中辺りまで裂かれた阿修羅の2つの手首はダランと垂れ下がった状態になる。


 膝は破壊され、左右の顔の目を潰され、4つの拳を失った阿修羅。


 全身が血みどろになろうとも、闘志に衰えがなかった阿修羅だったが、今では、恐怖の感情が読み取れるほどに顔を強張らせていた。


 (ゾンビにも感情があるのかな? だとしたらゾンビとは一体)


 命乞いのような唸り声を上げながら、残った2つの腕を振り回す阿修羅見ながら、ふとゾンビに関する疑問が浮かぶレイ。

 もしかしたら、ゾンビにも人間と同じように感情があり、彼らなりに守りたいものがあるのかもしれない。

 しかし、ゾンビは人を喰らう者。決して人とは相成れない存在。

 

「これも命のやり取りだ。悪く思わないでくれ」


 レイは一言、阿修羅に向かって呟くと、この戦いに終止符を打つため、ゆっくりとした歩みで阿修羅に近付いていった。






ーーーーーーーーーー



 レイと阿修羅の戦いに終止符が打たれる少し前。

 

 マリー達はようやく、外壁を伝って隣の建物の屋上へと辿り着いていた。

 ここまでくればレイのいる場所までは後少し。逸る気持ちを押さえながら、屋上から屋上へと跳び移っていく。


「アリシア後少しです!」

「マリー様! 少し速度を落とした方が良いであります! このままでは着いたとしても体力が尽きてしまいます!」


 マリーは肩で激しく息をしながらも、決して速度を緩めることなく進んでいた。

 お世話にも身体能力の高いとはいえない援護兵であるマリー。いくらバフを使おうとも、元々スタミナがあるわけではないマリーは顔から汗を滴らせ、苦しい顔をしながら駆けていた。

 機動力の低いアリシアもマリーに遅れる訳には行かないと全力で付いていくが、このままではスタミナが先に限界を迎えると、マリーに忠告する。


「わかりました。少し速度を緩めます。体力を温存しながら進みます」


 レイのこととなると、どうしても暴走しがちなマリーであるが、信頼出来るアリシアの言葉には耳を傾ける。アリシアはその事にいたく感激しているのだが、それをおくびにも出さずに「承知したであります」と言葉を返した。


 自分の主であるマリーの想い人が窮地に立たされているのだ、無遠慮に感激している様を見せてどうする。


 さすがのアリシアもマリーの発する空気を読み、自制することぐらいは出来るようであった。


 速度を緩め、体力を温存しながら進み、ようやくレイと阿修羅が対峙していた場所まで辿り着いたマリー達。

 3mはある阿修羅を見つけることは容易く、すぐにレイ達の姿を発見したマリー達は、レイの戦い方を見て驚愕する。


「ナイフで阿修羅と・・・」

「おそらくMPが切れかけているのでしょうが、それにしても」


 マリー達が目撃したのは、丁度右膝を破壊された阿修羅が横向きに倒れるところ。

 左右の顔の目にはナイフの刀身が刺さっており、新たな銃創が見当たらないことから、レイがナイフのみでこれまで戦っていたのがよくわかる。

 援護に入ろうとしたマリー達であったが、その後も危なげなくナイフのみで阿修羅を圧倒しているレイの姿は、まるでこの戦いを楽しんでいるようにも見えてしまい。結果見つめることしか出来ていなかった。


「もしやレイ殿は格闘王だったのですか・・・」


 ナイフを持つレイを見てアリシアが想い至ったのは王の名を冠する10人のプレイヤーの1人である格闘王。


 格闘王とはFPSゲームであるZWにおいて、あえて近接武器のみを使用する特殊な戦い方をし、互いの承認を得て行う一対一の対人戦、デュエル戦で最高勝率を誇るプレイヤーである。

 ゾンビと戦うことより対人戦が好きなことでも有名なプレイヤーであるが、決してPKプレイヤーという訳ではなく、デスペナの起きないデュエル戦でしかプレイヤーと戦わない。

 奇襲等を仕掛けること無く、きちんと相手の承認を得てから戦うその姿や、一定のレギオンには入らず、強者を求めてレギオン内を転々とする有り様から「ジェントルマンバトルジャンキー」とも言われている。


 確かに格闘王と呼ばれるプレイヤーであれば、ソロプレイをしていたことも頷けるし、拠点を持ってないことでソーラに転移した理由もわかる。

 阿修羅を近接戦闘で倒していても、格闘王なら可能なのだと思えないこともない。


 レイも実は王の名を冠するプレイヤーだったのかと、納得するアリシアであったが、マリーはアリシアとは違う考えを示した。


「レイが格闘王であることはありえません。レイはライフルや手榴弾等の兵器を使っていたのですよ? レイが格闘王であるならば近接武器以外は使わないはずです」

「しかし、ここはゲームではなく別の世界なのですよ? 自分の命が懸かっていれば、変なポリシーに拘らず銃を使っても不思議ではないであります」

「確かに銃を使おうとも不思議ではありません。しかし格闘王はそのプレイスタイルからステータスはフィジカル面に偏っているはずです。それに近接戦闘を得意としている格闘王が、何故ライフルという遠距離射撃を得意とする武器を使うのです」


 プレイヤーの魔力から具現化する銃であるマジックガンは、兵種、ステータスによってその形を変える武器である。

 つまり、連射能力を高めればマシンガンに、射程距離を伸ばせばライフルに、火力、ノックバック性能を伸ばせばショットガンに変化する。


 近接戦闘を得意とする格闘王が射程距離にステータスを割り振ることは考え辛いとマリーは考えていた。


「しかし、レイ殿はどんな方法を使ったのか知りませんが、ショットガンも使っていたであります。ならば格闘王であってもおかしくないでありましょう」

「それだけではありません。格闘王は顔まで隠した黒尽くめのアバターです。レイが格闘王であるならば、わざわざ新人アバターである黒い軍服に変えた理由がわかりません。それに私達に出会った時に格闘王だと名乗れば、アロスやジークもあんな失礼な態度は取らなかったでしょう。格闘王は良識のあるプレイヤーとして有名なのですから」

「ではレイ殿は何者なのでありますか? 阿修羅をナイフで圧倒するなど並のプレイヤーではありません」

「私はレイがあの不滅王ではないかと思っています」

「不滅王!? いやいやそれこそありえません! あれはプレイヤーの噂が生んだ実在しないプレイヤーであります」

 

 マリーの予想を、ありえないとばかりに首を横に振って否定するアリシア。


 マリーの言う不滅王とは、慈悲王や格闘王と同じ、王の名を冠するプレイヤーのことではあるのだが、この不滅王は他の王とは少し毛色が違う。

 マリーを含めた王達はそれぞれがレギオンの長を務めておりその存在を多くのプレイヤーが知っている。レギオンを転々とする格闘王もデュエルを挑まれたプレイヤー達がその存在を認識している。


 しかし不滅王だけは、その所在から名前、プレイスタイルに至るまで不明であり。あまりの情報の無さからプレイヤーの噂が生んだ亡霊ではないかとも言われていた。





 噂の始まりはZWがリリースされて3年が経った頃、とあるプレイヤー達がある場面を目撃したことから始まる。


 都市マリアの北にある森林地帯では、ハーフシールドポーションと呼ばれる、シールドを50%回復出来るアイテムの素材が採取出来る場所がある。

 しかしその当時、何処かのレギオンがそこに多量の罠をはったことで、素材を取りに森林に入ったプレイヤーがその罠により爆死してしまうことが多発した。

 いつしかその森林地帯は死の森と恐れられ、誰も近付こうとはしなくなったのだが、回復アイテムの素材がとれる場所は限られており、シールドを半分も回復出来るアイテムの素材ともなれば、マリア周辺ではあの森林地帯しかない。

 そうなると、回復アイテムを諦めきれないプレイヤーも出てくることになり、結果として罠の犠牲になっていった。


 そのとあるプレイヤー達も、回復アイテムを諦めきれずに、決死の覚悟で死の森に挑もうとしていたのだが、それはその時に起きた。

 急に目の前の森から爆発音が響き、森の奥が真っ赤に染まっていく。

 

 それを見て、また誰かが罠に掛かったのだと思ったプレイヤー達は、同時に今なら罠の数も少なくなり危険が少ないのではと推測し、森の中へと入っていった。


 そして森の中に入ったプレイヤー達が見たのは、爆発と爆炎が降りしきる中を勇猛果敢に進んでいくたった1人のプレイヤーの姿。

 炎と煙のせいでどんな姿をしているのかまではわからなかったが、罠の場所がわかっているかのように、牙を向いてくる数多の罠を避けていくその姿は、周囲が炎で囲まれていることもあり、まるで不死鳥のように見えた。


 それを見たプレイヤー達がすぐに他のプレイヤー達に凄いプレイヤーがいたと話したことがきっかけで、そのプレイヤーは通称不死鳥と呼ばれるようになった。



 あるプレイヤーいわく、PKプレイヤー達が集まって出来たレギオン「邪道」の拠点である都市カジュラスの領地に単身で挑み生還したと。


 あるプレイヤーいわく、未だに未攻略であり、入ることすら出来ていない幻想都市エピチュアに単身で挑み、同じく生還したと。


 噂話は新たな噂話を呼んで瞬く間に広がり、いつしか不滅王と称されるようになった。

 数々の逸話を残す不滅王。そうなればもちろん不滅王の正体を探すプレイヤー達も出始める。

 しかし結局不滅王の姿を見ることは叶わず。そんなプレイヤーは存在せず、そもそもソロプレイ自体がやはり無理なのだという結論に至った。


 そんな幻想のような存在である不滅王がレイではないかとマリーはにらんでいた。

 もちろん、自分の師であるレイが王と呼ばれない訳がないという贔屓目も多分に含まれているのだが、マリーがレイを不滅王だと思う理由は他にもあった。


「不滅王には数々の逸話がありますが、それには1つだけ共通点があります。それは必ず不滅王が1人でいること」

「確かに不滅王の偉業話はどれもが不滅王1人で成し遂げた話ばかりであります。だからありえないと言われているのでありますが」

「そもそもソロプレイをしているプレイヤー自体が珍しくありませんか?」

「言われてみれば・・・私は見たことないでありますな」

「プレイヤー達がソロプレイをしない理由はいくつかありますが大きなものを挙げれば3つ。1つは単純にZWの難易度が高いこと、次にインベントリの容量に限りがあり、食糧等の補給の為に定期的に拠点に戻るのに、機械兵のポータルが必要になること。そして最後に兵種によって得手不得手があり、フィールド特性やゾンビによっては1つの兵種では対応が難しくなること」

「そうでありますな。守備兵である私は高原みたいな開けた場所での集団戦は得意ですが、森林等の射線が通りにくい場所での戦闘や、遠距離からの攻撃には対応しにくいでありますし、逆に姿を隠せる場所での戦闘や、遠距離狙撃が得意な狙撃兵は近中距離に近付かれると、対応出来ないであります。ゾンビの中にも遠距離から攻撃をしてくる奴もいれば、奇襲のような形で急接近してくる奴もいるでありますからな」


 ソロプレイをやらない理由は細かく挙げれば、マリーが挙げた3つ以外にもある。

 例えば、MP管理やシールド管理が難しくなること。回復薬であるポーションは使用時に5秒間その場居なければならない誓約がある。

 仲間が居れば守ってもらえるが、ソロだと途端に厳しくなる。それ故に常にMPとシールド残留を意識したプレイを強いられることになる。


 こうした理由から好んでソロプレイをするようなプレイヤーはおらず、ソロプレイヤーがいれば、それは余程素行の悪いプレイヤーなのだろうと邪推されるようにもなっていた。

 

「でもレイならその3つの理由が当てはまらないのです」

「あっ・・・!」


 マリーの言葉にアリシアは気付いた。

 1つ目の理由である難易度の高さは、レイほどのプレイスキルがあれば何とでもなる。

 2つ目の補給に関しても、本来なら持つことすらない臭気瓶をあれだけ持っていたのだ、たまたまあの時だけ臭気瓶だけを多量に持っていたとは考えられない。多量にアイテムを保持できる何かがあると考えるべき。そうであれば補給の必要が無い。

 そして3つ目の理由である得手不得手だが、ライフル、ショットガン、マシンガンと状況に応じて銃の形態を変え、なおかつ爆破兵器である手榴弾やC4までレイは使えるのだ。大概の状況には対応できる。


 確かにレイであればソロプレイも可能だった。


「本当にレイ殿が・・・?」


 アリシアは唖然としながら、レイを見つめる。

 噂話としか信じていなかった不滅王という存在が実在し、しかも実は自分のすぐ近くいたという事実に固まるアリシア。


「あくまでも推測ですし、レイが不滅王という物的証拠はありません。仮に不滅王と呼ばれているのがレイだとしてもレイ本人は知らないことですから」

「そっそうでありますな」


 現時点では、噂話から生まれた王である不滅王がレイであるという明確な証拠は存在しない。

 しかしアリシアの中では様々な状況証拠により、レイと不滅王はイコールで結ばれていた。


 そうこう話をしている間に、目の前のレイが阿修羅の最後の両の目をナイフで潰し、喉元を両手のサバイバルナイフで搔っ捌いた。

 鈍い音を立てながら額を地面にぶつける阿修羅。

 阿修羅はそのまま再び動くことなく赤い血だまりに沈んだ。


「あれ? マリ達何でここに?」


 阿修羅を倒したことで、周囲を観察出来るようになったレイが、昇降階段の影にいたマリー達に気付き手を振ってきた。


「あは・・あはは。阿修羅とナイフで対峙した挙げ句、圧勝してなお手を振る余裕まであるとは」

「これは少々聞かねばならないことが増えましたね」

「そうでありますな。コロン村に行く道中に聞くであります!」


 アリシアはマリーの肩を軽く叩くと門の方へと目配せする。

 マリーが門へと視線を向けると、そこには開いた門から農村部へと真っ直ぐに続く街道が見えていた。

 大通りにはまだゾンビが多数見えるものの、門の前にはゾンビの姿は無く、今なら安全にソーラを脱出出来るだろう。


「何度危機を感じたか、もう覚えてないでありますが。ようやく帰れそうであります」

「そうですね。アリシアありがとうございます。あなたが居なければ私は既にこの場にはいなかったでしょう」


 マリーはこれまでのように深々と頭を下げるのでは無く、笑顔を向けてアリシアに感謝を告げる。


 マリーを無事守ることが出来たと感じたアリシアは心底安堵したよう一息着いた。


 林での襲撃から始まり、ゾンビによってソーラに閉じ込められるところまで、良く生きていたものだと、運の良い自分を褒め称えたくなるアリシアであったが、やはり一番の幸運はレイに出会えたことだろう。


 そんなレイは軽い足取りでこちらに向かって来ていた。


 (必ず不滅王の強さの秘密暴いてやるであります。それを知れたなら私は更に強くなれるはず)


 アリシアはマリーを守る為にまだ強くなる必要があると、レイに師事することを密かに胸に決めていた。

 


 

 

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