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破滅した世界にて~銃とゾンビと邪神 ~  作者: ルルエル=テン
第二章
12/21

神輿と人格と解決

 マリーが異変に気付いたのは、変異型阿修羅を倒した後だった。


 ゲームとは違う、命がけの戦い。周囲に散らばる人の破片や、撒き散らされた血液を目の当たりにしたマリーは、精神的に酷く疲れ領主館に用意された一室にて休んでいた。


 阿修羅を倒せたものの、甚大な被害者が出た。

 被害のなかった者達も、死ねば終わりという事実を叩きつけられ恐怖し、収拾のつかない状態になってしまった。

 そんな時、側近であるジークがプレイヤー達を落ち着かせようとして使ったのが「慈悲王」の名だった。

 マリーの意思を確認することなく、マリーが皆を導くと高らかに宣言したジーク。

 縋るものを求めていたプレイヤー達は一斉に「慈悲王」であるマリーを神輿に担ぎ上げる。

 「慈悲王」が俺達を助けてくれる、「慈悲王」が邪神を倒してくれる、「慈悲王」が俺達を元の世界に返してくれる。

 自身では何をするでもなくただ単に縋るだけ。大の男達がたった1人の女の子に全ての責任を押し付けたともとれる行為。

 確かにゲームでのマリーは頼もしかっただろう。状況に応じた的確なバフ、味方のシールド残留が常に一定以上に維持されるように考えられた回復。レイ仕込みのプレイスキルにシミュレーションゲームで培われた状況判断能力が合わさったマリーのプレイスタイルは、単なる一プレイヤーを不死の兵士へと変化させる。

 死を恐れるプレイヤー達にとってこれほど心強い者はいない。

 

 しかしそれはあくまでもゲームでの話。


 そんな周囲に期待と呼ぶには重すぎるものを背負わされたマリーは、1人となった部屋で枕に顔を埋めて涙を流していた。


 いくら王の名を冠するプレイヤーであるマリーでも、中身は何処にでもいるような少女。

 むしろマリーはどちらかといえば内向的な性格をしていた。

 学校でも特に目立たない立ち位置であり、仲の良い友達はいるが、積極的に外でまで遊ぶことはない。

 趣味はもっぱらゲームであり、特にコツコツと時間をかけて遊べるRPGやシミュレーションが好きで、休日は外に出ることなく部屋に籠る生活をしていた。

 ゲームでの勇ましいマリーではなく、自分というものを強く持たない大人しい性格のマリーでは、そんな重圧に耐えきれる訳がなかった。


 (私に邪神なんて討伐出来るわけが・・・でも皆さんは私に・・・)


 マリーの頭に過ったのはジークが演説した時に見られた周囲の人々からの期待に満ちた眼差し。


 変異型とはいえ阿修羅一体程度と戦っただけでこれだけ精神的に疲弊してしまうのだ。これがもし邪神であったならどうなったか。


 精神的に酷く消耗したマリーが考えることを止めた時。頭の中にもう1人の自分の声が響いた。


『みんなが安心して過ごせる場所を守ることこそ『慈悲王』である私の使命』

「私には無理です」

『みんなを守れない私に価値は無い』

「そんなこと・・・」

『自覚はあるでしょ? みんなを守る力があるからみんなは付いてきた。じゃあみんなを守る力が無ければ? 誰が付いてきてくれるの? あなたに友人と呼べるような人間はいたかしら?』

「・・・・っ!」


 もう1人の自分の言葉に口ごもるしか出来なくなるマリー。それと同時に強い頭痛に襲われた。

 頭痛に耐えながら、もう1人の自分が言っていたことを思い浮かべる。


 力の無い自分にどれだけの人が付いてきてくれるのだろうか。確かに今は客観的に見ても慕われているだろう。ゲームの時には率先して新人や困っているプレイヤーを手助けしてきた。

 それは他のパーティーから爪弾きにされていた経験を持つマリーが、レイに親切にしてもらったことに感激したことから始めた活動であった。

 いつしか聖女と呼ばれるほどのカリスマプレイヤーとなったマリーの拠点には人が集まり、最大規模を持つレギオンにまでなった「慈悲の心」。

 しかし、それは必ずしもマリー本人を慕って集まった者達ばかりではない。おべっかを使い聖女の威光にあやかろうとする者、マリーのサポート能力を利用しようとしている者、むしろそういった者達の方が多いかもしれない。

 

 そう考えた時。マリーの背筋が冷たくなった。


『ほらね。みんなはあなたでは無く、あなたの力を慕っているのよ』

『だからあなたはあなた自身を守る為にもみんなを守らないといけない』

『そうじゃないと、今度はあなたが責められることになる』


 人の感情とは簡単なものではない、強い好意、愛着、尊敬の念を持っていても、幻滅や相手からの拒絶を機に、感情が反転してより強い憎悪と変化してしまうことがある。

 その程度で変わる好意や尊敬であれば、それは目先の感情なのだろう。しかし、自分の命が懸かっているような状況にさらされていれば、また話は変わってくる。

 それにマリーの本意ではないが、公然の前で皆を導くと宣言している。そんな中、もしマリーが領主館に引きこもり動きを見せなければどうなるか。

 希望はそのまま絶望に、絶望はそのままマリーへの憎悪に変化する。

 そうなれば今後起きる全ての不幸がマリーのせいになるだろう。

 人間は得てして共通の敵を作る。そうすることで仲間を作り、自分を守る。そうなれば道徳性などあったものではない。

 集団心理というのは怖いもので、モラルが低下し無責任で衝動的になる、正常な判断力が無くなり、思考が単純になる。そうなった群衆は何をきっかけにどんな行動をするかわからない。

 もちろん集団心理が良い方向に向かうこともあるが、この場合においては間違いなく最悪の方向へと転ぶだろう。


「そんな・・・」


 もし期待に応えられなかったら?

 もしプレイヤー達を守れなかったら?

 

 あの期待に満ちた眼差しの全てが180度変わってしまうことを想像したマリーは、身震いしながら身体を強く抱き締める。


『だから守らないと』

『みんなを守らないと』

『私自身を守らないと』


 (もう何も考えたくない)


 もう1人の自分によって、精神を擦りきれてしまうほどに摩耗してしまったマリーは遂には思考を放棄した。

 

 その翌日。マリーはアロスから妹の救助をお願いされた。思考を放棄したマリーはもう1人の自分に誘われるようにアロスの申し出を受けると、3日後にはコロン村に向けて出発した。

 まるで自分の死地を求めるように。




ーーーーーーーーーー



「そんな・・・何故。何故何も言ってくれなかったのでありますか!」


 マリーの話を聞いたアリシアは、涙を流しながらマリーの両手を優しく握る。その顔には言ってくれなかったマリーへの怒り、最も近くにいながら力になれなかった自分の情けなさ、そしてマリーへの友愛が感じられた。


「ごめんなさい。でも頭の中にもう1人の自分がいるなんて、どう説明すれば良いのかわからなくて・・・」


 アリシアに両手を掴まれたマリーは心なしか嬉しそうにしている。


「少なくともマリには持っている力に関係無く、仲間が2人いることは覚えていて欲しいな」


 マリーの頭を優しくポンポンとしながら、慈愛に満ちた笑みを向けるレイ。途端に青かったはずのマリーの顔が真っ赤に染め上がる。


「あ・・あり・ありがとうございます」


 俯くようにして顔を隠したマリーは蚊のような声でお礼を伝えるが、既に思考モードに入ったレイの耳には入らない。

 ちなみアリシアは瞬時に乙女センサーが反応。俯くマリーをじっと見つめた後、レイに向けてジト目を向けるが、これも思考モードに入ったレイの目には映っていない。


「ふむふむ。これまでは俺以外は新人プレイヤーだったからわからない部分も多かったけど、マリのもう1人の自分の声か。ちなみにアリシアは転移してから、何か自分の中の考え方とか意識とかに変化は無いかな?」

「いやぁ特には・・・強いていうならば元々輝いて見えたマリー様が更に神々しくなりました!」

「いやアリシア・・・? レイはそういう事を聞いているのではないのですよ?」


 アリシアの質問の趣旨とは外れた答えに、呆れ半分照れ半分の状態でそれを指摘するマリーであったが、レイはアリシアにツッコミを入れることもなく、むしろ大事な情報を聞いたとでも言いたげな顔で深く頷いていた。


「じゃあ今度は2人に質問するね。マリはゲームの時、新人プレイヤーや困ったプレイヤーを助けることをZWでよくしていた。そしてアリシアはそんなマリーを尊敬し、その活動に付き従っていた。これは間違いじゃない?」

「はい。『慈悲の心』は元々はそれが目的で作られたレギオンですので。最近では実質的なレギオンの運営はジークがしていましたので、他のプレイヤーについてはわかりませんが、私とアリシアを含めた数人は毎回のように新人や困ったプレイヤーが入れば手助けする活動をしていました」

「私のマリー様への思いは尊敬などという簡単な言葉で表せるものではないであります! まずマリー様はーー」

「はいオッケー! もう大丈夫だから」

「うぬぬ・・・」


 アリシアの話が長くなりそうな予感がしたレイは、その話を強制的にシャットダウンさせる。


「次はちょっと聞きづらい内容なんだけど、マリとアリシアは悲惨な人間の遺体を見たんだよね? その時どんな感情が芽生えたか教えてもらえないかな?」

「私はかなり精神的にきました。見た目の悲惨さというよりかは、人の死そのものが私にとってきついものがあったような感じです」

「私は確かに嫌な気持ちにはなりましたが、マリー様みたいに精神的なダメージとかいうのは無かったであります。むしろ不謹慎にはなりますが、マリー様が無事で良かったと思えたぐらいでありますから」


 都市マリアの門の前で起きた惨劇について思い出した2人は、苦い顔をしながらもレイの質問に細かく答える。

 2つの質問を終えたレイが独り言を呟き出して5分後。自分のなりの考えがまとまったレイは「あくまで仮説なんだけど」と前置きした上で、マリーに起きていることの説明を始めた。


「まずマリを苦しめているのは、転移前に頭の中に流入してきた物であるのは間違いない。これはマリもわかってるよね?」

「はい。まるでゲームの世界に存在しているもう1人の自分の記憶が入ってきたような感覚でしたから。これが原因としか考えられません」

「そうだよね。そしてその流入してきた物が何かって話なんだけど。俺はそれが、ゲームの時にプレイヤーがとった行動を元に作られた人工的な人格のような物ではないのかなって思ってる。自我がないから二重人格とはまた違うけど、マリの場合は頭の中で会話が出来てるから、似てる部分もあるかな」

「それはどういう意味でありますか?」


 すぐさまアリシアが首を傾げながら、詳しい説明を求めてくる。


「例えばマリの場合で説明すると、元の世界で暮らしていたおとなしい性格を持つマリの中に、新人や困ったプレイヤー達を助けることを生業としていたマリが入ってきた。元の世界のマリに、ゲームでのマリが流入してきた訳だから、おのずと主人格は元の世界のマリってことになる。けれどおとなしい女の子であるマリと、率先して人助けに動くマリでは性質に違いがありすぎる。それにゲームでのマリは、主人格であるマリに比べて、意思だったり、信念だったりが強い。つまり、主人格であるマリとゲームでのマリの性格が違いすぎて、上手く統合出来てない状態であり、更に主人格であるマリが、ゲームでのマリに意思の強さで負けている。それが結果としてマリの頭の中にもう1人の自分を出現させることになってるんじゃないかな?」

「頭がこんがらがってきたであります・・・」


 アリシアが苦しそうに頭を抱える中、マリーは合点がいったような顔で「なるほど」と頷いていた。


「確かに頭に響いていたもう1人の私はゲームで演じていた私そのものでした。どんな状況であろうと仲間を助け、困っている人には手助けをする。その一方でレギオンのみんなをいまいち信用していなかった当時の私」

「アリシアの場合はゲームでもマリを尊敬して付き従っていて、尚且つ元の世界でも、ゲームのマリを通して元の世界のマリへも敬意を持っていたから、人格同士の齟齬が無くそのまま統合されて、同じ意思を持つ人格同士が合わさったことで、更にマリが神々しく見えるようになったんだと思うよ」

「確かに元の世界でも、マリー様の素顔を想像したり、いつかオフ会でもして会ってみたいなと思ったり、マリー様とのお泊まり会とかショッピングとかを妄想してたであります! ・・・あっ!」


 自分の説明を聞いたところでようやく話を理解出来たアリシアは、元の世界で行っていたマリーとの妄想話を嬉々として話すが、途中で本人がいることに気付いて、慌てて口元を両手で塞いだ。

 毎回面と向かってマリーを褒め称えるアリシアであっても、元の世界で繰り広げていた妄想話を聞かれるのは恥ずかしかったようだ。

 耳まで真っ赤にしながら「マリー様違うであります!」と必死に弁明している。


「ではレイ殿はどのような変化があったのでありますか?」


 何とか話題を切り替えようと、レイの変化について話を振るアリシア。マリーもそれは気になったようで、目を細めていた。


「俺の場合はあまり変化はないよ。強いて言うならばソロプレイを続けた弊害なのか、他人への興味が著しく低下したことかな。他人の死に何も感じなくて、襲撃者を殺す時も躊躇も何も無かった。殺した後ですら何の感情も浮かばないほどだから・・・冷たい人間になったもんだよ」


 お人好しと呼ばれてた自分がね、なんてことを思いながら自嘲するレイであったが、マリーがそれを即座に否定する。


「そんな訳ありません! 新人プレイヤー達をソーラから脱出させただけでなく、襲撃者に襲われ、ゾンビの群れを抜けてまで私達を助けに来てくれたじゃないですか! 本当に冷たい人間ならそんなことはしません。それにレイの仮説が正しいなら、お人好しであるレイと他人への興味が無いレイもまた相反する人格です。それなのに私のような症状が出ていないということは、主人格であるお人好しのレイの方が存在が強いということ。それはつまりレイはお人好しの優しい人であり、冷たい人間など断じてありえないということです!」


 珍しく怒ったように声を荒げるマリーの姿に目が点になるレイであったが、レイを慮っての発言だと気付くと、「ありがとうね」とマリーの頭を撫でる。


「わっ私はもう22なんですから、子供扱いはやめて下さい・・・」


 プシュ~と音が鳴りそうな程、顔を沸騰させたマリーは、顔を両手で隠しながら消え入りそうな声を出す。


「あっごめんごめん。昔は上手くいった度に頭を撫でてたから癖になってて。今度からは気を付けるよ」

「いやっ!・・・癖になってるなら仕方ないですから。それに言うほど嫌ではありませんし。今後とも頭を撫でるのを許可しましょう」

 

 頭を撫でるのをやめようとした矢先、マリーが焦ったように声を出すと、急に上から目線で語り出す。

 レイはそれほどマリーの様子を気にしていなかったが、アリシアにはばっちりマリーから漏れ出る桃色オーラが見えていた。


「グルル・・・」


 威嚇する野犬のような唸り声を上げるアリシアであったが、タイミングが悪く、レイの続く言葉でその唸り声はかき消されてしまう。


「マリはもう症状を抑える方法に辿り着いてるみたいだね」

「はい。レイに症状が出てないのが何よりのヒントでしたから」

「だから! 私も話に混ぜてほしいであります!」

 

 2人してわかったように頷き合う様子を見たアリシアが輪に入れてくれと泣き顔を晒す。


「どうしたのですかアリシア? さっきからあなた少し変ですよ」

「うぬぬ・・・先程から御二人の間にある、互いをわかり合ってる感を見てると居たたまれないであります! なんか私が邪魔者みたいじゃないですか!」

「わかり合ってるなんて。そんな・・・」


 アリシアはアリシアでレイを軽く睨み付け、マリーはマリーで何故か熱い視線を送ってくる。

 状況をいまいち理解していないレイは話を戻すべく、マリーの症状の改善方法を口にした。


「まずマリの症状は意思や信念みたいなものが、ゲームのマリに負けてるから出る訳で、今のマリがそれに負けないぐらいの強い意思を持つか、互いの人格が持ってる共通の意思を示せば、治ると思うよ。仮説が正しければだけどね」

「おぉ! ってそれ本当に大丈夫でありますか? 強い意思は持とうと思って持てるものではないのでは?」

「それについては考えがありますから」


 マリーは勝算があることを匂わせると、心配するアリシアに笑みを見せた後、精神統一をするかのように目を瞑る。




『早く助けないと。じゃないとあなたは』


 頭の中に響くもう1人の自分の声。これまではその声を否定することしか出来なかったマリー。

 けど今はレイが傍にいる、心強い仲間であるアリシアがいる。心に余裕を持てるようになったマリーは初めてもう1人の自分との対話を試みた。


「大丈夫だよ。だってレイがいるんだから」

『レイ1人でなんとかなるかしら』

「それはあなただって良く知ってるはず」

『そうね。レイはいつだって私を助けてくれた』

「私はレイみたいになりたかった。ううんそうじゃない。レイの隣に立てるプレイヤーになりたかった」

『私がみんなの手助けをしていたのも、そうすることでレイに近付けるような気がしたから』

「私はレイと一緒に戦いたい。そうすることが結果としてみんなを助けることになるから」

『私はレイの役に立ちたい。だって私の初恋の人だから』

「『一緒にレイと邪神を倒そう』」


 声が被ったと同時にそれまでしていた頭痛が消える。ゆっくりと目を開けると、そこには照れくさそうに頬を掻くレイの姿と、ジト目をレイに向けるアリシアがいた。


「まぁその邪神は倒そうとは思ってたし、マリが一緒なら心強い。これからよろしくね」


 まだ照れくさいのか目線を逸らしながら、そう言ったレイを見て、マリーは自分の声が漏れていたことに気付く。


「はわわ! もしかして聞こえてたんですか!?」

「結構大きめの声で話してたであります」


 顔色も戻り、健康的な白い肌へと戻ったマリーはほんのり顔を赤く染める。


 (自分の口から初恋のことを言わなくて良かった)


 マリー自身が語ったのは尊敬していて一緒に戦いという部分のみ。予期せぬタイミングで告白するところだったと、冷や汗を拭うマリー。

 しかし乙女センサーが過敏に反応しているアリシアには誤魔化すことは出来なかった。


「マリー様。さてはレイ殿に恋しているとは言いませんよね?」

「はわ! ななな何を言ってるんですか!? レイは私の師です。尊敬するプレイヤーであり、追うべき背中です」

「ふーん。そうでありますか」


 ジト目のまま生返事をするアリシア。言っていることはともかく、泳ぎまくっている目を見れば、マリーがレイに尊敬とは別の感情を持っているのは一目瞭然である。

 片やマリーのことを慈愛に満ちた目で見るレイ。これはこれでマリーの気持ちに気付いておらず、マリーを可愛い妹のように思っているのが丸わかりであった。


 アリシアは両者を交互に見極めた後、大きくため息を吐いた。


 (マリー様の恋を応援してあげたい気持ちはあるのですが、なにぶんレイ殿はそういう機微に疎い様子。これは難儀な相手を好きになったでありますな)


 自分の主が振り向かせるのが困難な相手を好きになってしまったと、頭を抱えるアリシアであった。

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