第9話 国際組織の影と、大阪総力戦
大阪は完全に非常事態に陥っていた。
ニュースは連日「未知の大型生物災害」として報じられ、街中には自衛隊の車両が目立つようになった。
俺のアパートの壁には、新しく追加したBluetoothイヤホンと折り紙セット、100均のヨーヨーがぶら下がっている。
「これで音波精密操作と、折り紙召喚……実験の成果は上々だ」
朝、佐藤零から緊急電話がかかってきた。
「高橋! 中之島〜大阪城一帯で史上最大規模のシャドウ反応だ。
WAROの日本支部も動いている。お前も来てくれ!」
俺はリュックを肩にかけながら答えた。
「わかった。自分のペースで向かう」
現場に着くと、すでに地獄絵図が広がっていた。
中型が数十体、大型が五体以上。空には飛行型の特殊シャドウが舞い、地面は影の触手で埋め尽くされている。
佐藤零と霧島凛が前線で戦い、天野みうが後方支援をしていた。
そして、新たな人物がいた。
スーツ姿の落ち着いた男——神崎蒼馬。WARO日本支部長だ。
「君が噂の家電魔法使いか。面白い能力だな」
神崎は空間を干渉してバリアを張りながら、悠真に声をかけた。
戦闘は苛烈を極めていた。
俺はすぐに全触媒を展開した。
「掃除機吸引最大! ロボット掃除機、自動展開!」
ゴオオオオオオオッ!!
周囲の中型をまとめて吸い込み、電子レンジで内部爆破。
高圧洗浄機で水の槍を連射し、手鏡+アルミホイルで強化光熱波を浴びせる。
折りたたみ傘でバリアを張り、Bluetoothスピーカーとイヤホンで低周波+高周波の音波攻撃を同時発動。
ズドドドドオン!!
一気に十体以上を葬ったが、敵は尽きない。
飛行型シャドウが急降下してきた瞬間、ヨーヨーを投げた。
シュルルルルン!
ヨーヨーが魔力で伸び、回転しながら敵を切り裂き、戻ってくる遠隔武器として機能した。
「これ……意外と強い!」
そこへ黒崎剣が影から現れた。
「またお前か。玩具で随分と派手に暴れてるな」
黒崎の影剣が巨大化し、大型シャドウを一刀両断する。
しかしその勢いのまま、俺に向かって剣を振り下ろしてきた。
「遊んでやる!」
俺はリモコンで扇風機を最大出力にし、光の旋風で迎え撃つ。
黒崎の影と俺の風が激突し、爆風が周囲を吹き飛ばした。
「面白い……! もっと本気を出せ、家電野郎!」
佐藤が割って入った。
「黒崎! 今は協力する時だ!」
みうが叫ぶ。
「悠真くん、危ない! 私が光で援護するね!」
四人がかりで大型シャドウを次々と倒していく中、神崎蒼馬が空間干渉で敵の動きを封じた。
「これは……WAROのグローバルハンター級の反応だ。
お前たちの力が必要だ、高橋悠真」
戦闘の合間、俺は再び幻視を見た。
封印遺跡第3層の記録庫で、玄蔵の幻影がはっきり現れる。
「高橋悠真……汝の力は、我々の夢を超えた。
しかし、影はまだ深い。
生活魔力を正しく扱い、日常を守れ」
風ノ弟子・蒼一の声が響く。
「風は止まぬ! 君の息が続く限り、吹き続けよ!」
光ノ弟子・凛華が微笑む。
「鏡は真実を映す。己の心を信じなさい」
俺は全ての道具を限界まで起動させた。
掃除機・扇風機・手鏡・傘・スピーカー・ヨーヨー・電子レンジ・高圧洗浄機・ロボット掃除機……
ありとあらゆる家電と雑貨が同時に輝き、巨大な複合魔法陣を形成した。
「家電よ、集え! 生活魔力全開!!」
ゴオオオオオオオオオオオッ!!!
光・風・水・土・音・熱・吸引・回転——全てが融合した究極の竜巻が、大型シャドウの群れを一掃した。
空の飛行型まで巻き込み、黒い粒子が夜空に舞い散る。
戦闘終了後、現場は静まり返った。
佐藤が息を荒げながら近づいてきた。
「凄まじい……お前一人でここまで変わったのか」
みうが飛びついてきた。
「悠真くん、すごいよ! 私、悠真くんと一緒に戦いたい!」
黒崎剣は遠くから俺を睨み、影の中に消えていった。
「次は……本気で殺し合うぞ」
神崎蒼馬が名刺を差し出した。
「WARO日本支部として、正式に協力要請する。
君の能力は、国際的にも希少だ。考えてくれ」
俺は名刺を受け取りながら、空を見上げた。
「まだ……俺はフリーターでいたい。
でも、大阪を守るためなら、協力してもいい」
その夜、アパートに戻った俺は、ベッドに倒れ込んだ。
体中が魔力で熱を持ち、道具たちが微かに光っている。
リュックから取り出した魔導日誌の欠片が、新たなページを開いていた。
そこには、現代の家電に近い設計図と、玄蔵の直筆が記されていた。
「汝の日常が、世界を変える」
俺は小さく笑った。
「わかってるよ、玄蔵さん。
俺の家電は、まだまだ強くなる」
窓の外、大阪の夜景が揺れている。
シャドウはまだ終わらない。
政府も、WAROも、黒崎も、影ノ宮の遺志も、すべてが動き始めている。
でも、俺は思う。
日常を愛する限り、俺は最強だ。
明日も100均に行こう。
次はどんな道具で、どんな魔法を生み出せるか。
それが、俺の高橋悠真の戦い方だ。
第9話 終わり




