第6話 100均巡りと、新触媒の無限コンボ実験
朝の大阪は、シャドウ出現の影響で少し静かになっていた。
俺はリュックにいつもの道具一式を詰め、意気揚々と出かけた。
今日の目的はただ一つ——**「100均&ホームセンター巡り」**だ。
「政府に登録するかどうかは置いといて、まずは自分の力をもっと知らなきゃな」
最初に向かったのは梅田の大型100均。
カゴに山ほど放り込んだのは、掃除機、電動ドライバー、Bluetoothスピーカー強化版、ラップの特大ロール、アルミホイル、定規、ボールペンなどなど。
レジで店員のおばちゃんに「そんなに買うの?」と笑われたが、俺はニヤニヤしながら答えた。
「実験ですから」
アパートに戻り、早速実験開始。
まずコードレス掃除機。
スイッチを入れて魔力を流すと——
ゴオオオオオオッ!!
吸引力が異常なレベルに跳ね上がった。
部屋の空気が渦を巻き、埃だけでなく、試しに置いたペットボトルまで吸い込もうとする。
「真空圧縮魔法」として使えそうだ。シャドウを吸い込んで内部で圧縮爆破とか、ヤバい。
次に電動ドライバー。
ジジジジジッ!!
回転速度が魔力で加速し、ドリル状の土属性攻撃に変化。
壁に突き刺さると、小さな穴が一瞬で広がり、土の槍が飛び出した。
鉢植えと組み合わせれば「回転土ドリル」完成。
ラップは予想以上に面白かった。
魔力を込めて伸ばすと、透明で強靭なバリア膜になる。
シャドウの攻撃を一度は完全に防げた。
アルミホイルは手鏡の反射率を爆上げ。
定規は「直線必中」の光線や風の軌道修正に使える。
ボールペンは墨の糸を操る拘束魔法に。
「これ……マジで無限だわ」
興奮冷めやらぬまま、夕方近くに外へ出た。
天気は回復していたが、ニュースでは「大阪市内で中型シャドウ多発」の速報が流れていた。
天神橋筋商店街近くの路地で、ちょうど中型シャドウが四体出現した。
人間サイズの獣型。動きが素早い。
「よし、フル実験だ!」
俺はリュックから次々と道具を繰り出した。
1. 掃除機を構えて吸引。ゴオオオオッ!!一体の動きを止め、内部で圧縮して爆破。
2. 電動ドライバー+鉢植えで土属性回転ドリル。二体目を地面から串刺し。
3. 折りたたみ傘+ドライヤーで雨天仕様の熱風バリアを展開しつつ、手鏡+アルミホイルで強化光の熱波を浴びせる。
4. リモコンで扇風機を遠隔操作しながら、Bluetoothスピーカーで低周波音波を流す。残る二体の動きを乱し、ラップで拘束してトドメ。
戦闘時間、わずか90秒。
以前より明らかに効率が上がっていた。
「はあ……はあ……でも、楽しい」
息を切らしながら笑っていると、スマホが震えた。
佐藤零からだった。
【無事か? 今の戦闘、こちらでも確認した。すごい成長だな】
俺は苦笑いしながら返信した。
【まだまだです。100均で新調した道具のおかげ】
その夜、アパートで疲れ果てて横になっていると——
突然、視界が暗くなった。
(……ここは?)
夢か幻か。
俺は見知らぬ地下空間に立っていた。
江戸時代のような石畳と、現代の家電が混ざった不思議な場所。
封印遺跡の第1層に似ている。
目の前に、銀髪の長身の男が現れた。
夜ノ宮 玄蔵——影ノ宮の初代宮主。
「高橋悠真……ようやく会えたな」
低い、落ち着いた声。
俺は思わず後ずさった。
「あなたが……玄蔵?」
玄蔵は静かに微笑んだ。
「人の暮らしそのものが、最も強大な魔力である」
(第1の名言)
「汝の使う家電は、我々が夢見た生活魔導の完成形。
誇れ。恐れるな。ただ、日常を愛せ」
周囲に弟子たちの残留思念がぼんやりと浮かび上がる。
風ノ弟子の蒼一が笑いながら言った。
「風は止まぬ。君の息が続く限り、吹き続けよ!」
光ノ弟子の凛華が優しく微笑む。
「鏡は真実を映す。己の心に嘘をつくな」
俺は言葉を失った。
この夢(?)は、ただの夢じゃない。
シャドウの核を倒すたびに蓄積された生活魔力が、俺を古代と繋げている。
玄蔵が最後に言った。
「過ちを恐れるな。失敗こそが、次の暮らしを生む糧となる。
……我が後継者よ」
視界が白く弾け、俺は飛び起きた。
汗だくでベッドに座る。
手に握っていたのは、朝買ったばかりの小型掃除機。
なぜか、微かに光を帯びていた。
「マジか……本物だったのか」
窓の外、大阪の夜景がいつもより輝いて見えた。
シャドウはまだ増え続けている。
政府も、WAROも、黒崎剣も、動き始めている。
でも、俺は決めた。
「もっと道具を集めて、もっと強くなる。
そして……この力の意味を、ちゃんと知る」
リュックに新しい道具を詰め込みながら、俺は小さく笑った。
明日も、100均に行こう。
次は電子レンジとロボット掃除機だ。
日常が、俺の最強の武器だ。
第6話 終わり




