第11話 魔導家電の夜と、WAROとの初共同作戦
俺のアパートはもはや「魔導研究所」と呼ぶべき惨状になっていた。
床、テーブル、ベランダまで、家電と雑貨が所狭しと並んでいる。
今日の新入りはスマートフォン(強化型)、小型冷蔵庫、電動工具セット、そして折り紙100枚パックだ。
朝から実験開始。
まずスマートフォンのライト機能を魔力で強化すると、指向性高出力光線になった。
手鏡と組み合わせれば「レーザー砲台」状態。
さらにカメラアプリを起動して魔力を流すと、敵の動きを予測表示する「先読み補助機能」まで追加された。
「これ、便利すぎる……」
次に小型冷蔵庫。
ドアを開けて魔力を注ぐと、中が絶対零度に近づき、冷気爆散魔法が発動。
保冷スプレーと組み合わせれば、広範囲凍結フィールドが作れる。
折り紙は予想以上にヤバかった。
魔力を込めて折ると、折った形状が実体化する。
折り鶴は自動追尾攻撃、折り兜は簡易ヘルメット、折り剣は一時的な刃物に変化。
「これで無限召喚可能じゃね?」
電動工具セットは回転・切断・穿孔の三種魔法を一気に習得。
俺は満足げにリュックに詰め込みながら呟いた。
「これでWAROとの共同作戦も怖くないな」
午後、梅田の某高層ビルにあるWARO日本支部臨時拠点に呼ばれた。
会議室には神崎蒼馬支部長、佐藤零、霧島凛、天野みう、そして数名のWARO職員が揃っていた。
神崎が資料を広げながら説明を始めた。
「明日未明、大阪城公園地下を中心に大規模シャドウ侵攻が予測される。
第4層の封印がさらに緩んでいるらしい。
高橋君、君の力は鍵になる。正式協力として参加してもらいたい」
佐藤が真剣な目で俺を見た。
「無理強いはしないが……お前がいれば被害を大幅に減らせる」
みうが手を挙げて明るく言った。
「悠真くん! 私も一緒に戦うよ! 回復は任せて!」
俺は少し考えてから頷いた。
「わかりました。協力します。
ただし、俺のやり方で。
家電を自由に使わせてもらう」
神崎が微笑んだ。
「了解した。それが君の強みだ」
作戦会議の後、俺は一人で中之島の隠し入口から遺跡へ再び潜った。
第4層のヴォイド裂け目が、さらに不安定に脈打っている。
玄蔵の幻影が弱々しく現れた。
「高橋悠真……時間が少ない。
影ノ宮の主が、完全覚醒に近づいている。
汝の生活魔力が鍵だ」
俺は魔導日誌を握りしめた。
「わかってる。俺は俺の方法で戦う」
その夜、作戦開始時刻の午前2時。
大阪城公園周辺はすでに戦場と化していた。
自衛隊の車両が並び、特能課とWAROの能力者たちが展開。
しかし、大型シャドウの群れは予想を遥かに超えていた。
特に「コロニー型」と呼ばれる、数十体の小型が融合した超大型個体が三体も出現。
「始めるぞ!」
俺は全触媒を同時展開した。
「生活魔力全開! 魔導家電フル稼働!!」
スマートフォンで先読み、光線を連射。
冷蔵庫で広範囲冷気フィールドを展開し、敵の動きを鈍らせる。
掃除機とロボット掃除機で吸引&自動支援、
扇風機+ドライヤーで巨大光の旋風、
高圧洗浄機で水の槍、電子レンジ爆弾を投擲、
折り紙で鶴の群れを召喚して攪乱、
ヨーヨーで回転遠隔攻撃。
ゴオオオオオオオオオオオッ!!!
一瞬でコロニー型の一体を粉砕。
周囲から歓声が上がった。
みうが光を飛ばしながら叫ぶ。
「悠真くん、すごい! 私の光と同期するよ!」
佐藤の魔力剣と霧島の雷撃が加わり、神崎の空間干渉で敵を封じ込める。
四人(+家電)の連携が完璧に噛み合った。
しかし、最も巨大なコロニー型が本体を現した。
ビル半分サイズの影の巨獣。
触手が数十本伸び、公園の木々をなぎ倒していく。
「これは……本気でヤバい」
黒崎剣が再び影から現れた。
「ふん……お前たちだけに任せておくのも癪だな」
黒崎も加勢してきたが、明らかに様子がおかしい。
影の力が暴走しかけている。
俺は黒崎に声をかけた。
「お前も……影ノ宮の影響受けてるんじゃないのか?」
黒崎が歯を食いしばった。
「黙れ! 俺は自分の力で強くなる!」
激しい乱戦の中、俺は全ての道具を極限まで魔力注入した。
スマートフォンの画面に玄蔵の幻影が一瞬浮かび、
「日常を守れ……それが汝の魔法だ」
俺は叫んだ。
「全触媒、限界突破!
生活魔力……爆発しろ!!」
冷気+光+風+水+土+音+回転+吸引——
過去最大の複合魔法が完成し、巨大コロニー型に直撃した。
ドゴオオオオオオオオオオオオオン!!!!
夜空が白く染まり、巨大な爆光が大阪の空を照らした。
戦闘終了後、公園は静かになった。
瓦礫の中で、俺は息を荒げながら立っていた。
神崎が近づいてきた。
「君の力は……本当に特別だ。
これからも、WAROとして全力でバックアップする」
佐藤が笑った。
「これで少しは信用されたか?」
みうが俺に飛びついた。
「悠真くん、今日もカッコよかった!」
黒崎は遠くから俺を一瞥し、影の中に消えた。
「次は……本気で決着をつけようぜ」
俺はリュックを背負い直し、空を見上げた。
シャドウはまだ完全には終わっていない。
影ノ宮の主も、ヴォイドも、まだ眠っている。
でも、俺は確信した。
俺の家電は、誰にも負けない。
アパートに戻り、冷蔵庫から取り出した缶コーヒーを飲みながら、
俺は新しい実験ノートを開いた。
「次は……冷蔵庫と電子レンジの融合実験か」
大阪の夜明けが、ゆっくりと近づいていた。
日常は、今日も続いていく。
そして俺の戦いも。
第11話 終わり




