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目覚めたらピンク頭の屑ヒロインだった件~罰は醜怪騎士団長との婚約だそうです  作者: 灰銀猫


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セラフィーナとしての最初の敵は…

 倉橋聖那だった自分を吹っ切って、セラフィーナとしての人生を歩み始めた私は、アイザック様の妻になるべく、侯爵夫人の勉強に勤しんでいた。何かしていないと色々考えてブルーになったから…ではない。マジで侯爵夫人としての教養不足を突きつけられたからだ。


 その発端は、先日マクニール侯爵家で行われたお茶会だった。クローディアとして生きると決意したセラフィーナの誘いで行ったんだけど…まぁ、早い話が高位貴族の令嬢達の前で散々恥をかいた…という訳だ。主にマナー不足で。それ以外でも常識や教養が足りないのを自覚するしかなかった。

 そりゃあ、この世界に来て半年余り、常識も教養も元の世界のものは全く使い物にならないと感じていたけれど…その差は思った以上に大きかった。


(そもそもお箸文化の日本人に、元の世界とは違うテーブルマナーを身に付けろと言われても、ねぇ…)


 スプーンやフォークは外側から…があっちのテーブルマナーの基本だったけど、こっちはそれが通用しない。どうしてこんな事になったの?と言いたくなるほど事細かに決まりがあるのだ。もっと簡素化しようよ…と思う。

 料理の名前だってあっちとじゃ全く別なんだよ?なのに、それに合わせてナイフやフォークを使い、場合によっては向こうの世界じゃお目にかかった事のない、千枚通しをグネグネにしたような物も使えと言われても…


(異文化が過ぎて、わけわかんないわよ―――!!!)


 何度もブチ切れそうになったけど、ここではそれが常識と言われたら足蹴にするわけにもいかなくて…私は汚名を返上すべく、今、死に物狂いで脳みそを駆使していた。それはもう、酷使し過ぎてそのうち燃え出すんじゃないか、ってくらいに。いや燃えた末に真っ白になられちゃ困るんだけど。

 全く、あっちでの常識をきれいさっぱり消して、こっちの常識に入れ替えたい。切実にそう思うほど、元の世界の常識が色んなところで邪魔をした。


「セイナ、そんなに無理しなくても…」

「いいえ!これは私だけでなく、アイザック様の名誉も掛かっているんです。女には無理してでもやらなきゃいけない時があるんです!」

「しかし…」


 アイザック様は甘々で、無理しなくてもいい、社交も今まで妻がいなかったが支障はなかったと言ってくれるけど、いないのといるのでは雲泥の差だ。いるのにマナーや常識が怪しいからと避けては、敵前逃亡と言えよう。そんな事は出来ない。私のプライドにかけても、大切なアイザック様のためにも。


(くっそぉ~あの小娘ら、絶対に見返してやるんだから…!)


 鬼気迫る勢いで満月に向かって腕を振り上げる私は、狼女…に見えたかもしれない。




「セイナ、かなりレベルアップしているよ」

「そうですわ。テーブルマナーは完璧です」

「そう?本当に?お世辞じゃなく?」


 クローディアとセラフィーナ―いや、これからはもうフレデリク殿下とクローディア様だ―を前にテーブルマナーを披露した私に二人が及第点をくれたけど、私は直ぐには信じ難かった。何故なら今日はあの千枚通しもどきがいたからだ。あれは…未だに自信が、ない…


「お世辞なんかじゃありませんわ」

「そうそう、ちゃんと出来ているよ。これなら王族との晩餐でも問題ない」

「ええ、チャシュの使い方も綺麗ですわ」


 二人からのお墨付きに、私は心の中でガッツポーズをしたのは言うまでもない。


(ふふふ、勝った…!)


 私はテーブルマナーだけでなく、あの千枚通しもどき―こっちではチャシュという―も攻略したのだ。王子生活半年余り、元より高位貴族で王子の妻となるべく育ったフレディから合格点が貰えたのなら間違いないだろう。アイザック様ももう大丈夫だと言ってくれていたけど…アイザック様は甘いし、異世界人の私なら出来なくて当然、みたいなところがあるから、こういう時はあまり当てに出来ないのよね。気遣って貰えるのは嬉しいんだけど、それじゃいつまで経ってもアイザック様の隣に並べないから。


「そう言えば…殿下…じゃなかった、ルシアは?」


 食事の後、サロンに移動してお茶を頂いていたら、フレディが訪ねてきた。そう、今の私達は、それぞれを今ある身体で呼ぶようになっていた。クローディアはフレデリク殿下に、セラフィーナはクローディアに、王子はルシアに、そして私はセラフィーナに、だ。

 ただ私の場合、本名がセラフィーナの短縮形っぽく聞こえるので、みんなセイナと呼んでくれた。


「絶賛悪阻中。におい悪阻らしくて、些細な臭いでもダメらしいよ。お陰で食事も決まったものしか食べられないし」

「そうですか…」


 そう、悪阻がまだ収まらないルシアは、相変わらずベッドの住人と化していた。ベテランの侍女さん達が甲斐甲斐しく世話を焼いているから問題はないけど、悪阻は重いし流産の心配もあるからと、こっちも気が気じゃない。


「でも、子どもは無事成長しているみたい。そこはよかったかな」

「そうか…でも、あの殿下が母親なんて…とても信じられないな…」

「そこは私も同感。あのメンタルで母親が出来るのか、正直不安しかないなぁ」


 侍女さん達がルシアに母親としての心得を説いて自覚を持たせようとしてくれているけど、肝心のルシアはと言うと…どこまで理解しているのか…という感じだった。悪阻の苦しさに負けているらしいけど、そんなんじゃ困るんだよね。

 いや、同僚たちも悪阻中はそんな風に言ってたし、でも生まれたらちゃんとお母さんしていたから、大丈夫だとは思いたいんだけど…

 結局のところ、どこまでも不安要素しかない王子だった。



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