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目覚めたらピンク頭の屑ヒロインだった件~罰は醜怪騎士団長との婚約だそうです  作者: 灰銀猫


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異母兄の独白~1

「貴様ら、何をしている!!!」


 ルシアの世話をお願いしていた寮の女性から、彼女の姿が見当たらないと言われた俺は、一緒にいた同期三人と一緒にルシアの姿を探した。


 そして…見つけた先にあったのは…三人の男に組み敷かれていたルシアの姿、だった。

 直ぐにルシアから男達を引き離し、守る様に腕の中に抱きしめた。呆然と虚ろな瞳をしたルシアは、俺の姿を目にして目を大きく見開くと、糸が切れた人形のように意識を失った。そっと騎士のマントで彼女を包み、彼女の部屋へと連れ戻った。

 一緒にいた同期が三人を拘束した上で、騎士団の地下牢へと放り込まれた。内々に騎士団の副団長に報告してくれた。


「ごめんよ、私達がちゃんとルシアちゃんを見ていなかったから…」


 寮母さんやルシアと仲がよかった寮女さんが泣きながら謝ってくれたけれど…悪いのは彼女たちじゃない。彼女を踏みにじったあの三人だ。絶対に許さない…俺は何としても彼女を守り、あいつらを血祭りにあげてやると誓った。


 次に目を覚ましたルシアは…錯乱して手が付けられない有様だった。眠れば魘され、目が覚めれば泣き叫ぶ。医師に気持ちを落ち着ける薬を貰って落ち着かせようとしたが、ルシアの心は…壊れる寸前だった。

 幸いこの寮には寮母さんたち寮に勤める女性達専用の寮が独立してあったため、この事は殆ど表に出る事はなかった。それだけは幸いだった。女性達が彼女のためにと口を噤んでくれたのもある。

 元々血の気の多い騎士達だけに、時折寮で働く女性に無体を強いる馬鹿が出るが…最近はそんな事も起きていなかっただけに安心しきっていた。騎士団長もこの件を重く見て、再度規律粛清を命じられたが…ルシアの心の傷を癒すのは容易ではなかった。


「嫌っ!来ないで!」


 俺は彼女に徹底的に拒絶された。恋人同士になり、何れは父上に頼んで彼女を妻に…と考えていて、内々に彼女の身の振り方を考えていた。今のままでは彼女は平民扱いで、俺の妻になるのは難しい。低くても貴族籍にあれば、平民との結婚を主家に認めて貰うのは難しいからだ。

 どうしても反対されれば…廃嫡も辞さないが、それは最終手段だ。どうせなら認めて貰って祝福されて結婚したいし、その方が彼女にとってもいいだろう。

 彼女は…どこか浮世離れしていて、ひょっとしたら上位貴族ではないか…そんな風に見える時がある。そんな彼女に平民暮らしは難しく見えたからだ。


 だが、俺の存在を拒否されてはそんな未来も描けない。彼女が俺を拒否する気持ちは理解できるが…それを易々と受け容れる事も出来そうになかった。惚れた女が傷ついているのを知っていて放置する事も、手放す事も出来る筈がなかった。

 こんな事があっても、その場面を目にしても、不思議と嫌悪感はなかった。あったのは、彼女から目を離した自分への激しい怒りと、それ以上に湧き上がったあいつらへの殺意と憎しみだけ。俺は時間が許す限り彼女の元を訪れた。


「…ラス…助けて…もう、耐えられない…」


 何度も何度も足を運び、俺の気持ちを訴え続けて、ようやく彼女に届いたのだろう。彼女はようやく俺に会ってくれたが…彼女は死んでしまいそうなくらいに憔悴していた。睡眠は薬で確保できていたが、食事がろくに摂れていなかったのだ。仕方ないとはいえ、その姿は痛ましいの一言に尽きた。

 このまま死んでしまいたいと訴える彼女に、俺は言葉を失った。そこまで追い詰めてしまった自分の不甲斐なさが情けなかった。気の利いた言葉一つ言えない武骨な自分が腹立たしい。俺はただ抱きしめて愛していると繰り返すば事しか出来なかった。


 何も出来ずにいた俺にルシアは、自分を抱いて欲しいと言ってきた。嫌な記憶を上書きして欲しいと。そんな彼女を無下に出来る事は出来ず、俺はこれでいいのかと迷いながらもルシアを抱いた。出来る限り優しく、怖がらせないように。



 それがルシアの心にどう影響したのか、鈍い俺にはわからなかった。だが、それを境に、ルシアは変わった。いや、変ったのではない。彼女の記憶が…あの忌まわしい記憶が失われていた…ように見えた。これまでとは一転して、以前のルシアに戻ったのだ。

 戸惑う俺に医師は、自分を守るために嫌な記憶を封じてしまったのだろうと言った。心が壊れないように、忌まわしい記憶を自ら封じたのだろうと。耐え切れないほどの苦境に陥った人間は、稀にこうして自分を守るのだ、と医師は言った。俺は…それでルシアが救われるのなら…それでいいと思った。


 そして俺は、早急に婚姻に向けて動き出した。医師に妊娠している可能性があると指摘されたからだ。それは貴族としては致命的な問題だが、早く手を打てば何とかなりそうな気がした。医師も確実に妊娠するわけではないと言っていたからだ。だが、手を打たない選択肢はなかった。

 幸いにも、この件を知ったマイルズ殿が、ルシアを養女にしてもいいと言って下さった。彼はルシアと似たような年の娘がいるから他人事のように思えない、と言ってくれて、協力を申し出てくれたのだ。マイルズ殿はリット子爵でもあるから、彼の養女になれば婚姻は問題ない。

 程なくしてルシアはリット子爵の養女になり、主家のローウェル侯爵家に連れていかれた。子爵令嬢としての教育をするためだと言われたが、どうして主家がわざわざ…と思わずにはいられなかった。

 だが、マイルズ殿は悪いようにはならない、養女の件も侯爵の気持ち一つで反故になる事もあるのだから、今は従うのが得策だと言われた。そう言われれば…拒否する事など出来そうもなかった。それに…養女になる事を認めて貰えたのなら、悪い話にはならないだろう。


 ホッと安堵の息を吐いた俺だったが…自体は最悪の方向に向いていた。


 ルシアが、身籠っていたのだ。


 幸い、侯爵が手厚くルシアを診てくれていると聞いたが、それでも心配な俺は、出来る限り侯爵家に通った。そしてそこで…ルシアが異母妹のセラフィーナに責められている場面に遭遇した。あの女の娘、母を愚弄した女の娘がか弱いルシアに何を…とカッとなったが…その先で待っていたのは、想像もしていなかった異母妹からの容赦ない追及だった。




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