49.お土産
書籍版がオーバーラップノベルズf様より7月20日発売予定なのでよろしくお願いいたします!
「この子がアコで、この子がイセ、二人が未成年組のお姉さんとお兄さん。今年で12歳になりました」
「よろしくお願いしますわ」
「よ、よろしく」
改めて陛下に家族の紹介をしようと、チビ共を上から順番に紹介していく。
アコはちょっとおませさんというか、見様見真似で上品な挨拶をしているところが可愛い。自分で木を削って作ったヘアピンでちょっとお洒落している金髪の女の子。
逆にイセはぎこちないな。まぁ、陛下を城勤めのお偉いさんって事しか知らないもんな。彼はちょっと真面目過ぎるところがある茶髪の男の子。
「で、この子達が順番にウメ、エイラ、オーウェンの三馬鹿です」
「馬鹿じゃないよー」
「レディに向かって失礼よ!」
「こ、これでも頑張ってるもん……」
「まだ9歳、8歳、7歳なので失礼があっても大目に見てくれると嬉しいです」
私にとっては可愛い家族だけど、他の人からしたら生意気なガキにしか思えないかも知れないから予防線は張っておこう。
赤い髪の女の子がウメで、ちょっとのんびりしていてたまに危なかっかしい。
青い髪の女の子がエイラ、立派な淑女を目指して日々奮闘中。いずれ大貴族のお妾さんになるのだとか。
金髪の男の子がオーウェン、孤児にしては珍しい輝くような綺麗な髪と白い肌を持った我らの末っ子。ちょっと臆病過ぎるところがある。
「で、私と同い歳のシリル。髪は白いけどまだまだ全然若いよ」
「一言余計なんだよ」
ぶっきらぼうで無愛想、そんでめっちゃ不器用な奴だけど基本的に良い奴でもある。
私ほどじゃないけど腕も立つし、頭も回るのでこの家の主力の一人である。
まぁ? この天才凄腕美少女工作員のレイシーちゃんには全く及ばないけどね!
「この究極美女がエマの姐さん」
「エマよ」
「そしていつの間にか帰宅していた姐さんの旦那のギー」
「……」
バイオレットの長い髪を緩く結び流しているのは妊娠九ヶ月目くらいのエマの姐さん。
売れっ子娼婦で、私以上の稼ぎ頭だったけど妊娠したので半分引退している。姐さんが稼いだお金は私の収入と一緒にきちんと貯蓄してある。夢のマイホームの為にね。
そして寡黙で陛下にお辞儀だけして済ませたスキンヘッドの男がギー、素手で熊を絞め殺すという有り得ない怪力の持ち主だけど基本的に臆病でヘタレ、この家の誰よりも花と小動物を愛する優しい心を持ったモンスター。
けれど、父親の分からない子を身篭った事を報告した姐さんにその場でプロポーズした漢気溢れる一面もある。
「そして我らがデボラおばさん! 怒らせるとマジで恐いよ!」
「怒ろうか?」
「誠に申し訳ございませんでした」
即土下座である。それ以外の選択肢などあろうはずもない。
足腰を悪くしたとはいえ、その鋼の如き拳骨は健在なのだ。私は頭蓋骨陥没で死にたくはない。
「とまぁ、私の家族はこんな感じです。基本的にここで雑魚寝するので、適当なところで寛いでて下さい」
我が家に個室という贅沢な物はない! というか全てをこの一室で完結させている!
食事も仕事も睡眠も、家族みんながここで済ませる。
「よし、必要な事は終わった事だし――お前らお土産だぞッー!!」
「「「「「うおおおぉぉお!!!!!!」」」」」
今日一番の歓声である。やはり素直に喜んで貰えると嬉しいってなもんだ。
「おらー! チビ共は年齢順に並べ並べー!」
「「「「「わー!」」」」」
群がって来たチビ共を並ばせ、順番にお土産を渡していく。
しかもこれはこの国の皇帝陛下が手ずから運んでくれた物だぞ! 有り難く受け取るがいい! ……言わないけど。
「アコには新しい髪飾りセットだ! いっぱいお洒落するんだよ!」
「わっー!」
「イセは図書カードだ! 期間限定だけど市立図書館の本が読み放題だぜ!」
「あ、ありがとう!」
「ウメは包丁とまな板だ! これで皆んなの飯を頼むぜ!」
「まかせてー」
「エイラには小さいけど手鏡だ! 立派な淑女を目指すなら欠かせない! でも家の外に持ち出しちゃダメだからね? 盗まれるから」
「わ、わ〜! だ、大事にしましゅわ!」
「オーウェンは前々からリクエストのあった木刀だ! ……本当にこんなので良いの?」
「こ、これが良いんです! ありがとうお姉ちゃん!」
ふむふむ、レイシーちゃんセレクトのお土産はとても喜んで貰えたようだ。きょうだい達の笑顔が見れて私は嬉しいよ。
「シリルには新しい彫刻刀ね」
「俺もにもあるのか? ありがとう」
「エマ姐さんとギーにはベビー用品だよ」
「あら助かるわ」
「……」
ギーにめっちゃ頭撫で回されてるけど視界がグワングワンして酔いそう。
「デボラおばさんにはオムツ――嘘ですごめんなさい無言で拳を構えないで」
へへっ、癖になってんだ……命懸けの冗談をぶちかますの。
「おばちゃんには簡単に組み立てと解体が出来る椅子だよ! 寝る時もバラせば邪魔にならないし、昼間も腰を落ち着けてゆっくり出来るぜ!」
「……あんがとね」
へへっ、デボラおばさんのツンデレを見れたんだ……お土産選びを頑張った甲斐があるってなもんだぜ。
「ふふん、食料もそれなりに持って来たから暫く大丈夫だぜ! あと木材もあるからギーとシリルは後で家の補修手伝って」
「おー、りよーかい」
「……」
さて、今使わない食材やら木材やらは隅に退けてってと。
「ではへい――シルはゆっくり寛いでください」
陛下の前に新しいお茶と、お土産の中から取り出したお菓子を並べてシリルと一緒に玄関へと向かう。
「何処に行くのだ?」
「え? あぁ、副業です。里帰りしたら私も色々手伝うんですよ」
「俺は必要ないか?」
「うーん、流石にシルを連れて行くような場所ではないので……」
連れて行ったらマジでベルナール様に殺されると思う。
「……そうか」
「大丈夫ですよ、大人の男が留守番しているってだけでめっちゃ助かりますから」
「それなら良いがな」
今日は初日だからゆっくりして貰うとして、陛下に丁度いいお手伝いとか見付けて振ってみよう。
いや、皇帝陛下相手に仕事を振るとか何様なんだと叱られるかも知れないけど、手持ち無沙汰で何も出来ない陛下がちょっと可哀想だし……なんだろうな、今の私って休日でも上司を気遣う部下の鑑でないか。
「じゃ、行こっかシリル」
「おう、彫刻刀ありがとな」
「いいってことよ」
さーて、久しぶりだからなぁ……とりあえず縄張りの巡回でもしますか。




